ETHにデフレ圧力
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の供給量が、The Mergeアップグレード後の208日間で82,924 ETH(約210億円相当)減少したことが明らかになった。
ネットワーク利用量に応じたETHのバーン(焼却)数が増えており、ステーキング報酬による新規発行量を上回る状況となっている。
データサイトultrasound.moneyによると、ETHの年間供給量の推定増減率は-0.121%と算出されている。現時点のETH供給量120,457,776 ETHの0.121%は145,753 ETHであり、実勢価格でおおよそ370億円に相当する。
The Mergeでは、イーサリアムのコンセンサス(合意形成)アルゴリズムが従来のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行した。この変更により、マイニング報酬(13,000ETH/日)が0(ゼロ)になり、1日のETH新規発行量はステーキング報酬(1,600ETH*当時)のみとなった。
バーンとは
仮想通貨の発行枚数を減らす行為。仮想通貨のバーンは、株式の「自社株買い」に近い供給量を減らす仕組みで。自社株買いをする企業は、発行している株式を自分たちのお金で買い戻す。買い戻されると市場に流通する株数が減少することで一株あたりの価値が向上し、株主に対してプラスの影響を与える。バーンをすることで、流通する通貨の一枚あたりの価値が高まることになる。
▶️仮想通貨用語集
また、2021年8月の「ロンドン」アップグレードで導入されたEIP-1559により、ベースフィーがバーン(焼却)されることで、ETHの供給量の増加ペースが約90%減少した。
イーサリアムの供給量が着実に減少することで、デフレ圧力(価格の下降要因)が高まることになるとして、多くの投資家が注目してきた。
仮に年間インフレ率4.13%(493万ETH)のPoWのままであった場合、過去208日間でETHの供給量は233万ETH(5,800億円)ほど増えていたと考えられる。
関連:ETH「上海」アップグレードとは? ステーキング解除とETH売り圧に関する各社見解まとめ
上海アップグレード
イーサリアムのバリデーターがロックアップした資産を引き出し可能になる「上海」(Shapella)アップグレードまで、約18時間を切っている。blocknativeによると、日本時間明日7時半(22:27 UTC)頃にメインネットにデプロイされる見込みだ。
イーサリアムのステーキングコントラクトにロックアップされている1814万 ETH(約4兆2,000億円相当)と、ステーキング報酬(100万 ETH~)が初めて出金可能になる。
出金機能の実装は、短期的に投資家の大量売却を引き起こすと多くの人が予想している。ただし、イーサリアムでは一度に大量のバリデーターが離脱して不安定になることを防ぐため、出金制限がある。
現在のステーキング状況では、1日あたり全額出金に向けた「撤退キュー」が処理されるバリデータ数は最大1,800件まで。バリデーター当たり32ETHをロックしているため、1日の全額出金の撤退キューの上限は57,600ETH(約145億円)に制限される。なお報酬分の出金は「部分出金」であり、「出金キュー」として1日115,200バリデーターまで処理される。
関連:ETH「上海」アップグレードとは? ステーキング解除とETH売り圧に関する各社見解まとめ
As ppl ask for data here's the data (from my own node):
— Marc Zeller 👻 💜 🦇🔊 (@lemiscate) April 9, 2023
a grand total of 1622 validators have exited so far.
the withdraw queue is packed with 0 exits.
prepare yourself for the grand 1622*32 = 51k ETH dump 😴😴😴 pic.twitter.com/BgYM18LF2A
Aave Chanの創設者であるMarc Zellerによると、4月9日時点で1,622のバリデーターがネットワークで出金キューを申請しており、上海アップグレードが実施されると、最初に51,000ETHが引き出されることになる。
米国の大手仮想通貨取引所コインベースはETHステーキングシェア2位(11.4%)。同社はアップグレード完了の24時間後にアンステーキングの受付を開始する方針だ。大量の出金リクエストが予想されることから、完全に処理するのに数週間から数ヶ月かかる可能性があるとコインベースは述べていた。
ETHステーキングシェアトップ(31.2%)のリキッドステーキング大手Lidoは、stETHの出金対応の開始予定を5月中旬頃としている。
オンチェーン分析会社Glassnodeによると、ステーキングされたETHの未実現損益は-47億ドル相当。そのため、シャペラアップグレード後のアンステークは9%に留まり、68%が新たなステーキングの開始、および複利運用を検討しているとの見方が出ている。
関連:イーサリアムの重要アップグレード「上海」迫る、BTCは3万ドル水準で推移
また、イーサリアム(ETH)の供給量に占めるステーキング割合は14%と、他のレイヤー1ブロックチェーンの中で最も低い。平均値は65%でBNBでは90%に達していることから、これまでETHステーキングを控えていた投資家が、出金機能の実装により安心して参加できるようになるとの期待もある。