初承認に向けた期待の背景
現物型ビットコインETF(上場投資信託)の初の上場承認に対する期待感が、市場で急速に高まっている。10月28日現在、米証券取引委員会(SEC)は関連する複数の上場申請を審査中だが、専門家の間では承認時期を巡る様々な見解が飛び交っている。
特に目が向けられているのは、資産運用大手・米ブラックロックによるビットコイン現物ETF「iシェアーズ・ビットコイントラスト」の上場申請だ。同社の申請の最終的に承認判断期限は2024年1〜3月との見込みだが、 JPモルガンのアナリストは数カ月以内の承認もあり得るとの立場を示しており、ブルームバーグのアナリストは今年中の承認確率を75%と見ている。
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25日の日経新聞のウェビナーでは、bitFlyerの執行役員・金光碧氏やビットバンクのマーケットアナリスト・長谷川友哉氏が出演し、現物ETFの上場承認に関する期待感や背景を語った。長谷川氏によれば、ブラックロックはこれまで500件以上のETF申請をしており、却下されたのはわずか1件だけ。この高い承認率は、同社の入念な準備と交渉によるものとされる。さらに、ブラックロックの初期投資活動「シード」を示唆する動きも重要だ。
動き出すか、ビットコインETF
2023年10月25日
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一方、金光氏は、ブラックロックがSECとの交渉で得た成果と見られる内容、例えば、監視協定やハードフォーク対応、マイニングに関する電気コストへの指針などを申請内容に取り入れている点に着目。他社もこの方向性に追随していると述べた。
これまでビットコイン現物ETFが承認されなかった一因として、先物ETFとは異なり、米国で規制下のビットコイン取引市場が存在しないことが挙げられる。しかし、19日に公表されたブラックロックの改訂版では公正価格の監視を強化する施策が示されており、金光氏はこれが承認確率をさらに向上させる要因と見ている。
上場承認が業界に及ぼす影響
一方、ビットコインの現物ETFの上場承認が実現した場合、仮想通貨市場にもたらす影響について、海外メディアThe Blockは専門家たちの意見を集めている。
米ジェネシストレーディングのゴードン・グラント氏は、金のスポットETFが市場に及ぼした影響と、ビットコイン現物ETFの影響は似たものになろうと指摘している。金のETF導入後、現物、先物、オプション市場全体に渡る取引量は数年間で桁外れに増加したと述べ、ビットコインにも同様の影響が期待されるとした。
ワールドゴールドカウンシルのデータによれば、現物を裏付けとする金ETFの金保有量は3,282トン(23年9月末時点)に達している。金ETFの導入は市場効率や流動性、市場アクセスの向上、さらには金への関心や需要の高まりを促進してきたとされる。
ギャラクシー・デジタルのアレックス・ソーン氏は、ビットコイン現物ETFが上場されれば、1年目に最低144億ドル、3年目には386億ドルの新規資金流入が見込まれると予測。承認翌年までのビットコインの価格上昇率は74%に達すると分析した。
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機関投資家への影響
コインシェアーズのリサーチアソシエイト、ルーク・ノーラン氏は、現物ETFの導入により、機関投資家のビットコインへのアクセスが簡素化されると指摘。特に、鍵の保有やシードフレーズの保護に関する手間やコストが削減されると述べた。
ノーラン氏はさらに、ビットコインETFが機関投資家の資金流入の流通経路に影響を与えることで、401(k)退職プラン(確定拠出年金制度)を管理したり、企業向けに仲介する年金基金などのポートフォリオにビットコインを組み込むことが容易になる。
個人投資家にとっても、ETFは証券口座で購入できるため投資しやすくなると期待される。
先物市場の市場効率改善
さらにノーラン氏は、現在のビットコイン先物市場はコンタンゴの状態にあり、先物ETFはビットコインのパフォーマンスを下回る傾向があると指摘。しかし、現物ETFの上場により、先物価格が現物価格より高くなり、この問題が緩和される可能性があるとの見解を示した。
コンタンゴは、先物市場において、近月の先物価格が遠月の先物価格よりも低くなる現象のこと。この状態が続くと、先物契約の期限が切れるたびに新しい契約にロールオーバーする際のコストが発生する。
現物ETFの導入により、スポット市場と先物市場の間に裁定取引の機会が生まれ、極端なコンタンゴを是正する可能性がある。コンタンゴが解消され、将来の価格に関する不確実性が低減することで、市場参加者がより適切な投資決定を下すのに役立つとされる。
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