- コインチェックなど国内取引所が先行導入するマネロン規則
- 台湾の仮想通貨ウォレット企業「CoolBitX」は、FATF準拠の技術導入で、SBIやコインチェックなど日本国内の大手仮想通貨取引所とMoUを交わしたことを明かした。
コインチェックなど国内取引所が先行導入するマネロン規則
仮想通貨ウォレット企業「CoolBitX」は15日、FATF(金融活動作業部会)が定める「トラベル・ルール」の遵守における技術導入で、日本国内にある複数の大手仮想通貨取引所と覚書(MoU)を交わしたと明かした。プレスリリースで判明した。
CoolBitX社は、SBI グループの出資を受けている台湾系のブロックチェーンセキュリティー企業であり、世界で初めてデジタルアセット向けのBluetooth接続コールドウォレット技術を開発した企業だ。
FATFコンプライアンスに向けた技術とは
参加した日本取引所は、SBI VCトレード、コインチェック、ビットポイントジャパンも含まれる。これら業者はFATFに対するコンプライアンスに向けて、利用者データを共有するための暗号化されたポータルとして機能する「Sygna Bridge」の「導入開始もしくは導入を検討を開始している」という。
「Sygna Bridge」を導入する取引所コンソーシアムは、「Sygna Alliance」と名付けている。現在、BitSonic(韓国)、MaiCoin(台湾)、Bitopro(台湾)をはじめとしてアジア太平洋地域から複数の取引所が参加しており、参加会社の一部は自社のインフラシステム上でSygna Bridgeの運用テストを開始している。
上記4つの国内取引所のほか、金融庁登録済みのいくつかの取引所と交渉している最中だ。
仮想通貨事業に対しての新たな基準「トラベル・ルール」とは、仮想通貨関連事業者による仮想通貨の送・受金の際に、送り主と受取人の個人情報を記録するという厳格なグローバルスタンダードである。
しかしこの規則に準拠するためには、「安全な方法で機密性を確保しつつ顧客情報を取引先のVASPs(取引所等交換業者)と交換する方法についての課題を解決する必要がある。」とCoolBitXは指摘した。業界初となるソリューション「Sygna Bridge」を導入することで、問題解決に至るという。
具体的には、このような仕組みになる。
- 送金側VASPと受取側VASPは、独自のアカウントでKYCを実行して個人識別情報(PII)を検証可能
- 取引時に、送金側VASPと受取側VASPは暗号化されたSygna Bridgeを介してPIIの検証情報を交換
- また、VASP間で送金者および受取者の情報を履歴として保持するよう要求する
- Sygna BridgeはPIIの交換、保持または記録を一切行わず ※VASPとは、仮想資産サービス・プロバイダー(Virtual Asset Service Provider)の略称
CoolBitXのプレスリリースによると、SBIホールディングス代表取締役社長・北尾 吉孝氏は「今年の初め、CoolBitXの技術を採用したCoolXWalletを活用することで、SBI VCは簡便な方法で顧客を保護すると同時に日本および国際的なKYCの基準遵守が実現できた。」と明かし、「Sygna Bridgeの導入はSBI VCのコンプライアンスにおける重要な取り組みのひとつであり、SBI VCはSygna Allianceに加入した最初のVASPsのうちの一つとして、Sygna Allianceのメンバー間でKYC情報を緊密にかつ効率的に共有することを目指す」などと語った。
日本の取引所がいち早くFATFの規制勧告に取り組んでいる姿勢は、じきに迫るFATF対日審査が背景にあるとも考えられる。
夏に大阪で開催された「V20仮想通貨(暗号資産)サミット」にて、FATFのTom Neylan書記官は、「日本の規制は非常に先進的であり、他国と比較すると『2年進んでいる』と言っても過言ではない。」と語り、日本政府の方策や業界の取り組みを評価した。今回の覚書も、先行導入に繋がる進捗と見られる。
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