EUの仮想通貨規制は「時代遅れ」
欧州議会に所属するシンクタンクが、仮想通貨(暗号資産)の定義と、規制対象についてその範囲を拡大する必要があるとEU規制当局に勧告した。また、投資家は仮想通貨のリスクについてより明確な説明を受けるべきであるとも報告書で主張している。
EUはすでに第5次マネーロンダリング防止指令(AMLD5)を実施。仮想通貨取引所とカストディサービス事業を、顧客身元確認(KYC)とマネーロンダリング防止(AML)ルールへ準拠させるため、厳しい規制枠組みを提示している。
だが、今回シンクタンクの欧州議会調査局が発表した調査報告書によると、金融活動作業部会(FATF)などのより高い国際基準と比較した場合、AMLD5の内容はすでに時代遅れのものになっているという。
現在、仮想通貨が置かれている状況に対応するため、EUはいくつか新たな規制措置を検討する必要があると、報告書は提言する。
規制範囲の拡大について
最初の勧告は、AML/CFT(マネーロンダリング防止とテロ資金供与対策)について規制範囲を拡大することだ。
まず、取引所プラットフォームを介したトークンの発行事例(IEO)が大幅に増加していることから、仮想通貨のサブカテゴリとして、『私募トークン(IEOトークン等)』を含めることを提案した。
また、一部の仮想通貨関連の企業(仮想通貨取引所、仮想通貨オファリングに参加する金融機関、中央集権型プラットフォームなど)は、現在の枠組みではカバーされていないため、AMLの対象に追加する必要があるという。
さらには、マイナーや、カストディアンでない仮想通貨ウォレット企業についても、この数年でその形態が多様化していることから、盲点になりうるとして注意を促している。
新たな小口マイニングを警戒
仮想通貨のマイニング事業も、さらに注視する必要があるとしている。
背景は、近年、大規模なマイニングファームを用意せずとも、自宅で個人が所有するレベルのハードウェアを使用して採掘することができる銘柄が登場したことだ。
新しく採掘されたトークンは定義上「クリーン」で犯罪に使用された履歴がない。それを法定通貨や他の仮想通貨と交換して得ることができる資金もクリーンなものになる。このため犯罪者の資金洗浄に使われる可能性がある 。こうしたマイニング手法を調査し、規制上の重要な盲点が発見された場合、適切な対策を検討すべきだと説明した。
投資家へリスク開示が必要
仮想通貨の高いボラティリティに関してもシンクタンクは注意を促した。
現時点では、EU金融法は、金融機関が仮想資産を保有したり、それに関連するサービスを提供することを禁止していない。
しかし、金融機関が仮想通貨を取得し、バランスシートに記録したり、仮想通貨に関連する活動に従事する場合、ボラティリティにより莫大な損失に直面する可能性がある。そのため、現時点では仮想通貨資産を金融機関の自己資産から差し引いておくことを推奨するという。
さらに、仮想通貨はリスクの高い資産として、投資家や消費者に、仮想通貨に投資する前に潜在的なリスクを把握させる必要があるとも論じた。