- 市場の失敗とは
- 市場の失敗(Market Failure)とは、「市場が効率的な結果を残せていない状況」のことを指し、このような状況下で”利己的な判断”を続けていくと、一般市民にとって好ましくない状況が悪化していくことになります。
- 指摘されている4つの問題点
- 経済学者たちは、”市場の失敗”に関する共通点として、「独占、外部性、情報の非対称性、公共財」が含まれていることを指摘しています。
- ブロックチェーンの解決力
- 「非中央集権的、かつ改ざん不可能」なブロックチェーンを活用することで、”市場の失敗”をあらゆる側面から解決出来る可能性を秘めています。
もしあなたが「ミクロ経済」の授業の間、寝ることなくちゃんと起きていたのであれば、”市場の失敗(Market Failure)”という概念を耳にしたことがあるかもしれません。
市場の失敗とは、ざっくり説明すると「市場が効率的な結果を残せていない状況」のことを指しており、意思決定を行う一部の人々が利己的な判断を続けていくことで、一般市民の環境はますます悪化していくことになりかねません。
「市場の失敗と政府の対応」に関する取り組みは、常に「経済的・政治的な議論」の中核を担ってきました。
俗に言う『大きな政府』の支持者たちは、これらの失敗を是正するために、政府による介入を増やすことを支持、問題点を分類した上で議論しています。
なかでも、「教育、医療、所得格差、庶民の暮らし」の分野は、特に白熱しやすい議題と言えるでしょう。
一方で、自由主義者を中心とした『小さな政府』の支持者達は、「市場原理に基づく自由な競争によって経済成長を促進させようとする考え方」を持っており、政府による介入は状況を悪化させるとしています。
政府による失敗は、市場利益の誤配分や中央集権的な計画者を生み出し、ロビイスト(根回しなどを行うロビー活動をする人)に対する、非生産的な巨大市場を作り出してしまいます。
過去の歴史を振り返ってみても、中央集権的な計画者たちが経済的な意思決定を行なった場合、総じて良くない結果が出ています。
市場の失敗
自由主義者(リバタリアン)及び、『小さな政府』の支持者でさえ、”市場の失敗”は起こり得るものだとしており、本質的な失敗を是正するためには、一定の政府介入は必要であると考えています。
これまでの経緯から、経済学者は、共通点の多い「市場の失敗」を特定し始めています。
大きく分けて4つの問題点があり、政府による介入を正当化しているという現状もあります。
1:独占について
市場原理における「独占」とは、競争市場において類似モデルが存在せず、一社しか存在しない不健全なマーケットのことを指します。
独占状態になる最大のデメリットは、不完全な価格支配力が挙げられ、競争が起こった際に、市場平均価格よりも高額な市場価格を設定できるという点です。
その気になれば、供給を制限することで希少性を高めるということも可能になります。
したがって、企業による独占に対しては、”然るべき参入障壁”によって保護されていなければなりません。
(*注)日本では、公正かつ自由な競争を促進するため、公正取引委員会による「独占禁止法」が定められています。
2:情報の非対称性について
情報の非対称性とは、「取引の際、商品等に関して当事者がもっている情報に格差があること」を指す経済用語です。
一般的に、売り手が買い手よりも多くの情報を持っている場合によく起こる現象で、情報格差は消費者の不利益につながります。
以下のような例が挙げられます。
- その薬の中に、どのような成分が入っているのか
- そのビジネスが、実際どれほどの利益をあげているのか。
- その食べ物の中には、何が入っているのか。
このような状況を打開するため、政府は「食品表示法、食品検査、食品医薬品局の承認、証券取引委員会」などを設置することで対策しています。
3:負の外部性について
負の外部性とは、「ある経済主体の意思決定(行為・経済活動)が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼす」ことを指します。
この”負の外部性”の典型例が、環境汚染です。
消費者や生産者が、自身の利益のみを追求することで、有害で破壊的な汚染の影響を与えてしまう可能性があります。
4:非排除性を持つ公共財について
自由市場では、排除不可能で非競合的な公共財を提供するには不適切です。
排除不可能とは、商品やサービスを使用せざるを得ない状況のことを指しています。
特定の人物が商品の利益を享受できる状態にすると、対価を支払わない者も同様に利用できてしまうため、利益だけを得ようとします。
支払いをせず利益だけを得ようとする人々が増加すると、フリーライダー(タダ乗り)の問題が起きて供給が過少となり、結果的に「有益な公共財が作成されにくくなる」という現象が起こり得るのです。
「国防、警察、ダム」などは、純粋公共財の例ですが、自由市場のメカニズムに任せていた場合、プロジェクトの資金調達が困難になりかねません。
よって、建設に関する資金調達の役割を政府が担うことで、生活に役立つ公共財が建築され、一般市民が恩恵を受けることが出来るようになるのです。
独占と情報の非対称性に関するブロックチェーン
ここからは、どのようにしてブロックチェーンが「典型的な市場の失敗」を正していけるかについて、簡単なブレインストーミングです。
これにより、自由度と効率性の上昇、希少性の低下、より生産的な資源配分に繋がる可能性が生まれてきます。
各トピックに関しては、全学術論文を書くことが出来ます。
繰り返しになりますが、「ブロックチェーンは、非中央集権的で改ざん不可能な台帳」なのです。
独占
一般的に、独占的状態は「規制によって作られる」ものです。
自然独占(natural monopoly)は極めて稀なケースであり、一部のエコノミストは存在を否定しています。
独占企業を保護する場合、競合を防ぐための参入障壁は必要不可欠です。
国に作られた「独占」の典型例としては、ケーブル会社、電気通信企業、鉄道、タクシーカルテル(企業連合)などが挙げられます。
ブロックチェーンは、この規制を出し抜くことが可能であるため、政府によって権益を享受してる独占企業は、懸念を抱いています。
自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリの「Uber」のような革新的かつ破壊的なアイデアが、これら全ての独占状態で起きることを想像してみてください。
情報の非対称性
もし販売者が購入者よりも多くの情報を持ち合わせていた場合、購入者に対して大きな優位性を持つことができます。
しかし、ブロックチェーンであれば、これらの問題を解決することができます。- この肉の原産地は、どの地域なのか
- この医療手続きにかかる費用は、なぜ高額なのか
- この会社の、本当の利益はどの程度あるのか
- この中古車は、どのような経緯で売られているのか
- この薬の成分は、どのようなものが含まれ、服用時の効果や副作用はどうなのか
などを、検証・証明することが出来るのです。
ブロックチェーンは、販売者、及び購入者のスコアも算出することができるため、必然的に効率性をより増した市場が生まれやすくなり、必要ライセンスの減少と共に参入障壁を低くすることを実現できるのです。
これにより、人々は社会的階級に捉われることなく、より簡単にビジネスを始められ、市場価格の透明性も保ちやすくなるでしょう。
もちろん人命に関わる「医薬品の承認」もより早くなり、保険プールの透明性が高まり、プロバイダーもより責任を持つようになると考えられます。
外部性及び、公共財としてのブロックチェーン
負の外部性
多くのエコノミストは、「負の外部性」は、そもそも市場が存在しない状況から生まれると語っています。
一般的に、”財産権が弱いケース”で引き起こされやすく、「空や海」が良い例でしょう。
財産権が弱い大気中に汚染物質を破棄することは、難しくありません。
しかし、ブロックチェーンは財産権が弱い場所に市場を作り出すのにも役立ちます。
温室効果ガスの削減を補完する京都メカニズム(柔軟性措置)の1つである「排出取引(Carbon emission trading)」を想像してみてください。
排出取引にあたり、空気中の汚染レベルはどのくらいが適切と言えるのでしょうか。
環境保護者は、クリーンエアクレジット(Clean air credit)を購入することができ、環境汚染者が共有資源に対して「負の外部性」を生じさせた場合、その対価を支払わせることができます。
「コモンズの悲劇(Tragedy of the Commons)」をご存知でしょうか。
牛や牧草地がブロックチェーンのコントラクトによって完全に記録され、価格設定が行われる場面を想像してみて下さい。
非排除性公共財
公共財に関する、いわゆる官僚的な分配は、将来的に減少していくことになるでしょう。
ブロックチェーンのコントラクトは、より消費者の意向に沿った公共プロジェクトを推進することができます。
大勢の人々が「公共財」に参加すればするほど、一人あたりの負担は軽減されることになるでしょう。
そうなれば、不必要に肥大化した「腐敗したプロジェクト」も起こりにくくなります。
ブロックチェーンによる革命的なブレイクスルーが発生することで、生産者、消費者の利便性を高められると共に、より効率的になるという突破口が見つかるかもしれません。
まとめ
市場は、「商品やサービス」を最も効率的な方法で提供しています。
しかし、ブロックチェーンの発展に伴い、”市場の失敗”に繋がる、政府の非効率性が露呈しつあります。
多くの経済学者や、公共政策アナリストたちは、”市場の失敗”に対して、ブロックチェーンがどのような解決策を提供できるかについて、未だ表面上の理解にしか至っていません。
ブロックチェーンは、「選択肢を広げることができる」のです。
選択肢が広がることで、消費者は各々の好みに応じて意思決定できるようになるはずです。
また、「生産可能性曲線」を押し上げることで、より少ない投資でより多くのことを実行し、希少性の負担を軽減することで、ロビイストにも対抗出来るようになるのです。
さらに付け加えると、「中央集権的」な考え、及びそれに伴う「資源の誤分配」の軽減にも繋がります。
よって、これらの”市場の失敗”における政府の汚職や非効率性、不必要に割高な解決策に対して、健全な競合性が生まれることになるのです。
自由社会では、「より倫理的で、より効率的で、より生産的」なものが勝者となります。
私は、ブロックチェーンの可能性に賭けています。
Blockchain Vs. Inefficient Governments
Feb 25, 2018 by Mark Kirker
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