中国の内モンゴル自治区、仮想通貨採掘の閉鎖を検討
中国政府が、北部の内モンゴル自治区にある暗号資産(仮想通貨)の採掘場を閉鎖することを検討していることがわかった。25日に内モンゴル自治区の開発改革委員会がパブリックコメントを募集した提案の中に、一案として含まれていた。
内モンゴル自治区の開発改革委員会が公開した規制の修正案には、中国の「五ヵ年計画」の一つである省エネ政策の実現達成の為に電力消費量の削減が組み込まれており、削減方法として政府側は「2021年4月までに自治区内の仮想通貨マイニングファームをすべて閉鎖する」案を提案している。
内モンゴル自治区の開発改革委員会は2月25日から3月3日まで一般市民からパブリックコメントを募集している。
同自治区は万里の長城などで有名な中国北部の自治区。近年は少数民族のモンゴル族の人権弾圧が国際問題に発展しているが、化石燃料に頼る安価な電力システムの関係で四川や新疆ウイグル自治区に次ぐビットコインなどのマイニング拠点でもある点はあまり知られていないだろう。
内モンゴル自治区の開発改革委員会は中国の国家発展改革委員会(NDRC)の傘下。NDRCは中国の経済政策などの計画を行う重要な行政部門。過去には2019年の産業の再編で消去されるべき業界の一つとして仮想通貨のマイニングが提案されていたが、その後業界再編の最終案では仮想通貨の採掘事業を取りやめる文面は含まれていなかった経緯がある。
IPアドレスなどの位置情報を基に英ケンブリッジ大学がまとめた「 Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index 」のデータによれば、2020年4月時点でビットコインの月間ハッシュレートの約65%が中国から来ており、BTC全体のハッシュレートの8.07%が、内モンゴル自治区からとなる。
内モンゴル自治区では20年8月にも21のビットコイン採掘業者を対象に、電力の割引の停止が発令されていた。また中国南西部の雲南省では昨年12月、採掘業者への電力提供停止を通達していた事例などもある。
仮想通貨採掘の環境への影響
対照的に中国1位のマイニング規模を誇る四川省では、地形を活かした豊富な水力発電を用いた国営の電力拠点が仮想通貨採掘業者にも開放されていた。
環境への影響が懸念視されるマイニング事情だが、中国国内でも地域により電力ソースは異なる。
中国のハッシュレートの半数近くを占める四川省では環境への影響が小さい水力発電が主なソースだが、北部の内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区では環境破壊を促進するとされる化石燃料による火力発電が大きな比率を占めている。
ビットコインをはじめとする仮想通貨相場の上昇に伴い、仮想通貨マイニングの電力消費は再び問題視されている。英BBCなどではビットコインの年間電力消費量が世界各国と比べると上位30にランクインすることなどが報道されていた。
また国際自然保護団体(NGO)のグリーンピースの関係者は世界のデータセンターの電力量の2割未満が再生可能エネルギーから来ているなど、「21世紀の技術が未だに19世紀のエネルギー源で動いている点」を懸念視している。
今回、開発改革委員会が達成を目指す五ヵ年計画は中国政府が5年ごとに策定している長期目標だ。20年11月に中国共産党の会議で示された第14次五ヵ年計画の草案では主要目標の一つとして、グリーン環境保護などの「戦略的な新興産業の開発」が挙げられていた。
20年9月には中国の習近平国家主席も国連総会にて、中国国内の二酸化炭素排出量を2030年までに減少させ、2060年までにCO2の排出量の実質ゼロを目指す方針を示しており、世界最大のCO2排出国である中国も環境政策に動き始めていた。
ビットコインのハッシュレートの観点のみならず、環境への影響を鑑みても、中国当局の動向が注視される。