はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

分散型価格オラクルネットワーク、NESTとは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ブロックチェーン内外を繋ぐオラクル

ブロックチェーン技術を開発および利用する際に、様々な場面において、ブロックチェーン外(実世界)の情報をブロックチェーン上に取り込む必要がある。たとえば、実世界の価格情報をもとに清算プロセスを実行する分散型レンディングプロトコル、および実世界の選挙結果やスポーツの試合結果などに賭ける予測市場などでは、ブロックチェーン外の正確な情報なしに、プロトコルは本来の機能を発揮しない。

このような、ブロックチェーンエコシステム上で必要なブロックチェーン外の情報を収集・活用するためのサービスおよび技術は「オラクル」と呼ばれる。オラクルは、ブロックチェーン内外を繋ぐ橋渡し的役割を果たし、価格やレートから天気や地理情報に至るまで、様々な情報をブロックチェーンに反映させている。

このオラクルサービスを、中央集権的な管理組織なしに、分散的な方法で提供するための技術を開発しているプロジェクトのひとつが「NEST」だ。

NESTとは

NESTとは、イーサリアムブロックチェーン上で、分散型価格オラクルネットワーク(Distributed Price Oracle Network)開発を行うプロジェクトだ。「分散型価格オラクルネットワーク」とは、文字通り、単一障害点および単一の管理組織が存在しない分散的な方法で、ブロックチェーン外の価格情報を提供するネットワークのことだ。

NESTネットワークは、誰でも参加できる「クオテーションマイニング(Quotation Mining)」と呼ばれる独自の価格参照システム、およびネットワーク内で経済的インセンティブとして機能するNESTトークンを基盤に構築されている。

誰でも参加できるというオープンかつ分散的な性質から、DeFi(分散型金融)での幅広い利用が期待されている。

価格取得の仕組み

NESTネットワークは、「Price Caller」と呼ばれる価格を取得したいコントラクトまたはアカウント、ならびに価格を提供するマイナー(Miner)および検証者(Verifier)で構成されている。マイナーおよび検証者は、以下のフローに沿って価格を外部から取得し、その正確性を保証している。

NESTより提供

1. クオテーションマイニング

NESTの価格取得プロセスは、まずマイナーと呼ばれるネットワーク参加者が、クオテーション(取引相手に提示する取引レート)をコントラクトに提出することから始まる。NESTプロトコルでは、このプロセスを「クオテーションマイニング」と呼んでおり、誰にでも参加できる仕組みとしている。NESTが他のオラクルプロジェクトと異なっている点の一つが、このクオテーションマイニングにおいて、対象としている資産をコントラクトにロックする必要がマイナーにはあるという点だ。

出典:NEST

たとえばあるマイナーが、現在のETHの価格を「1ETH=1,000USDT」であると考えていると仮定する。ETH対USDTのクオテーションを提示したいマイナーは、実際にNESTプロトコル上のコントラクトに、ETHおよびUSDTペアを、自身が見積もっているクオテーションで預け入れる必要がある。つまり、1ETH=1,000USDTや、2ETH=2,000USDTをペアでコントラクト上にロックする。

この時にマイナーは、手数料として1%のETHを支払う必要がある一方、報酬としてNESTトークンを受け取ることができる。手数料として支払われたETHは、毎週NESTトークン保有者へ還元されるため、ETHを支払ったとしても、マイナーとしてプロトコルに貢献し、NESTを獲得するインセンティブが生じている。

2. 価格検証

マイナーが提示したクオテーションは、検証者と呼ばれるネットワーク参加者により検証される。検証者は、この検証段階において、マイナーが提出したクオテーションにアービトラージ取引の機会がないかを探ります。マイナー同様、誰でも検証者として、この価格検証プロセスに参加できます。

前述の例で提示された1ETH=1,000USDTが、実際のマーケット価格と異なっていた場合、その差額を活用し、検証者はアービトラージ取引を行うことができる。アービトラージ取引が行われた場合、最初にETHおよびUSDTをロックしたマイナーには、変動損失(Impermanent Loss)が生じる可能背がある。そのため、このリスクを避けるため、マイナーは可能な限り正確な価格を提示するインセンティブが働くことになる。

検証者がアービトラージ取引を行える期間は、「価格検証期間」と呼ばれている。価格検証期間中にアービトラージ取引が行われなかったクオテーションは、「有効クオテーション(Effective Quotation)」とみなされ、ブロックチェーンに記録される。

検証期間が終了次第、マイナーはいつでもロックした資産を取り出すことができる。

3. 価格チェーン

マイナーが提出したクオテーションが有効クオテーションとして承認されない場合、つまりアービトラージ取引が行われる場合、アービトラージ取引を行う検証者(検証者Aとする)は、最初にマイナーが提出したクオテーションに代わる新しいクオテーションを提出しなければならない。この際検証者Aは、マイナーが最初にロックした額よりも大きい額を、コントラクトにロックしなければならないルールとなっている。この仕組みにより、検証者の不正が防止される。

検証者Aが提示したクオテーションは、最初のマイナーによるクオテーションと同様に、一定の価格検証期間に、他の検証者(検証者B)から検証されます。検証者Bがアービトラージ取引を実行したい場合、検証者Aの時と同様に、検証者Bは、自身の資産をロックする必要がある。検証者Bがロックする額は、検証者Aよりも多くなければならない。

このようにして、有効クオテーションとみなされるまで、検証者によるクオテーション提示がチェーンのように連続して続くことになる。提出されたクオテーションが不適切な場合、何度でもそこからアービトラージ取引で利益を産むことができるため、裏を返せば、有効クオテーションと判断されたクオテーションは、アービトラージの機会がないほどに正確な価格であるといえる。

4. ブロック価格

上記のような流れで決定された価格は、ブロックチェーンに記録されていく。各ブロックに記録された価格を使用し、アルゴリズムに基づいてそのブロックでの「有効価格(Effective Price)」が決定される。最新ブロックに有効クオテーションがなかった場合、有効クオテーションが記録されている最も新しいブロックから価格が取得される。

NESTトークンとは

NESTトークンとは、NESTプロトコルで経済的インセンティブとして利用されているトークン。ERC-20規格(イーサリアムのトークン発行規格)に準拠し、イーサリアム上で発行される。最大発行数は100億NESTに設定されているが、事前発行はされておらず、マイナーによるクオテーションマイニングによってのみ発行可能なトークンである点が特徴だ。

マイナーはクオテーションを提出し、プロトコルに貢献する報酬として、NESTを受け取ることができる。クオテーション提示の際にETHで徴収される手数料は、NEST保有者へ還元される。そのため、ユーザーにはNEST保有のインセンティブが働く。

またNESTで算出された価格情報を利用したいユーザー(主にDeFiプロトコル)は、ETHで使用料を支払う必要がある。この使用料の一部は、マイナーから徴収されたETHと同様、NEST保有者へ還元される。そのため、プロトコルの利用ユーザーが増えれば増えるほど、NEST保有者に還元される手数料が増えることになる。

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
13:20
米ナスダック、SECの仮想通貨規制緩和を歓迎も有価証券分類の明確化求める
米ナスダックがSECに対し、仮想通貨が「実質的に株式」である場合は同等の規制を適用すべきとのコメントレターを提出した。
11:40
世界初のXRP現物ETF、ブラジルで先行取引開始 米国承認前に実現
ブラジル証券取引所B3で世界初のXRP現物ETF「XRPH11」の取引が4月25日に開始。Hashdexが運用する本ファンドはナスダックのXRP指数に連動する。
11:25
スイス中銀総裁がビットコイン準備金提案に反対表明、国民投票イニシアチブの行方は
スイス国立銀行総裁が、ビットコインは準備金として不適合だとの見解を示した。一方で国民投票を目指す「ビットコイン・イニシアチブ」は署名活動を継続中だ。
11:15
オソフ上院議員が批判 トランプ大統領のミームコイン晩餐会は「弾劾されるべき違反」
ジョージア州代表のオソフ上院議員がトランプ大統領のTRUMPコイン保有者向け晩餐会を「弾劾に値する犯罪」と批判。上位220名の保有者を招待する計画に対し、民主党議員からは利益相反の懸念が高まり、SECへの調査要請も行われている。
10:45
「ストラテジー社によるビットコイン寡占は深刻なリスクにならず」──『ビットコイン・スタンダード』著者見解
サイフェディアン・アモウズ氏が、企業によるビットコイン寡占リスクについて見解を示した。トランプ関税政策を批判し、ビットコインによる米国債務問題の解決策についても言及している。
10:15
世界経済の不確実性はビットコインにとって追い風=ブラックロック幹部
ブラックロックの幹部が世界経済の不確実性がビットコインの価値上昇につながると指摘。フィンクCEOは先月、米国の債務管理失敗によりドルの準備通貨地位がビットコインに奪われる可能性を警告。市場の地政学的分断が進む中、低相関資産としてのビットコインの役割が注目される。
08:40
ブラックロックのビットコインETF、BTC総供給量の2.8%を保有
世界最大の資産運用会社ブラックロックのビットコインETF(IBIT)がBTCの総供給量の2.8%を保有。58万2000BTCに到達し、今週単日で6.4億ドルの資金流入を記録した。
08:02
リップル社のトップ「現時点でIPOの必要はない」
リップル社のプレジデントは、同社がIPOを行う計画は現在はないと語った。財務は健全な状態にあるとし、買収などを行なって事業を成長させることに集中すると話している。
07:55
2026年までに世界の企業が300万BTC保有を予測 ビットコイン・マガジンCEO
ビットコイン・マガジンのベイリーCEOが上場企業によるビットコイン保有が急増すると予測。現在の70万BTCから2026年末には200万〜300万BTCに拡大の可能性。
07:25
ドラゴンチェーン(DRGN )価格が2倍以上急騰、米SECの訴訟取り下げを受け
米SECとドラゴンチェーンが4月24日、新政権下の「政策的観点」を理由に2022年から続く未登録証券訴訟の取り下げを共同申請した。
06:40
米SEC新委員長初参加の円卓会議、仮想通貨業界に「大きな恩恵」期待──前任ゲンスラー氏の厳格路線を批判
米SEC新委員長アトキンス氏が就任4日目の円卓会議で仮想通貨からの「大きな恩恵」を期待すると発言。バイデン政権下の厳格路線を批判し、「目的に合った合理的な規制枠組み」確立を目指す。
06:10
前週比65%以上高騰、仮想通貨SUI(スイ)がビットコインやイーサリアムを大幅アウトパフォーム その背景は?
仮想通貨Suiが週間66%高騰し主要銘柄を上回る急成長。グレースケールSUIトラスト設立やxPortalマスターカード提携がけん引。TVLは40%増、DEX取引量は177%増と実需も拡大中。「次のソラナ」との期待も。
04/25 金曜日
21:03
コインチェック、PEPEなど4銘柄を新規取扱いへ
仮想通貨取引所コインチェックは5月13日、PEPE・MASK・MANA・GRTの取り扱いを開始する。取引所の板取引銘柄は25へ拡大し、販売所・つみたて・貸暗号資産など全サービスで対応。
13:44
取引所のビットコイン残高が過去6年の最低水準に、企業購入加速も懐疑的な見方浮上
フィデリティの報告によると、取引所のビットコイン供給量が2018年以来最低の約260万BTCに減少した。上場企業による大量購入が背景にあり、この傾向は今後加速するとフィデリティは予測している。
11:30
ステーブルコイン市場、2030年まで最大500兆円規模へ シティが成長シナリオを予測
シティグループが、ステーブルコイン市場は2030年までに最大3.7兆ドル規模に成長すると予測した。また、そのうち米ドル建てコインが90%のシェアを維持すると見ている。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧