通貨は「公益のみに専念する事業体が発行すべき」
マイクロソフトのBrad Smith社長が、フィンテック企業など民間が通貨を発行することに対して疑問を投げかけたことが分かった。Bloombergの報道による。
国際決済銀行が主催した24日のオンライン会議で、Smith社長はマイクロソフトも含め、テクノロジー企業がデジタル通貨を発行する可能性について異論を唱えた。
通貨の発行を民間企業が行うという考えには、あまり賛同できないとして「私たちは銀行になりたくない」と言及。マイクロソフトの顧客には銀行も存在しており、そうした顧客と競争することも望まないとした。
Smith社長は次のように語った。
マネーサプライは、国民に対して責任を持ち、公益のみを考慮する事業体によってほぼ独占的に管理される必要がある。
何世紀にもわたって、マネーサプライは政府に委ねられており、これがより公共のためになってきた。
通貨発行は政府が行うことが望ましいとする格好だ。この発言は、Facebookが主導するステーブルコインプロジェクト「ディエム(Diem)」を念頭に置いていると思われる。
ディエム(旧称リブラ)は、各国政府により「通貨主権を脅かすもの」などとして批判を集め、大幅にプロジェクトの設計変更を余儀なくされた。当初は複数通貨によるバスケット型として構想されていたが、当面は一つの法定通貨につき、一種類のディエムを発行する方針に転換。
現在は、発行開始に向けた最終調整の段階に入ったとされる。UberやSpotify、Shopifyなどもディエム協会のメンバーに加入しており、これらのプラットフォームでもディエムが使えるようになる見込みだ。
規制対応を大幅に強化して発行されるディエム
3月にシティバンクが開催した「デジタル通貨シンポジウム」には、ディエムの共同創設者Christian Catalini氏が登壇して、規制との兼ね合いで計画を変更した部分について話している。
Catalini氏によると、単一通貨とペッグされた方式を取ることで、法定通貨の代替となるリスクが軽減されるという。例えばディエムドルの場合は、米国債などによって1対1で裏付けられる。
また、国際的な規制枠組み「バーゼルⅢ」の資本要件に従い、市場、流動性、オペレーショナルリスクなどによる潜在的な損失について対策を行う。
さらに顧客身元確認(KYC)や反マネロン対策が施せない、個人ホスト型などのデジタルウォレットはディエムのシステムから除外するとした。
Catalini氏は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)とディエムの関係性についても次のように言及。
ディエムが運用されている法域のいずれかでCBDCが利用可能になった場合、ディエムのネットワークは公共部門と直接統合され、公共部門のレール上で決済に関して追加の機能を提供することも構想できる。
ディエムのネットワークがCBDCへの移行をサポートする可能性についても示した格好だ。