1,400ドルの給付金、米国市場における影響は
3月上旬に米国で配布が始まった給付金が暗号資産(仮想通貨)市場における資金流入に繋がり始めていることがわかった。複数の取引所がCoinPost提携メディアのThe Blockに対して語った。
トランプ政権時の2度の給付金{1,200ドル(約13万円)と600ドル(約6.6万円)}を含めると、コロナ禍では通算3度目となる給付金では、バイデン大統領が3月11日に総額200兆円の経済対策法案に署名。3月第2週の週末から一人あたり1,400ドル(約15万円)の現金配布が開始され、総額4,000億ドル(約43兆円)にのぼっている。
カナダのトロント証券取引所(TSX)に上場している仮想通貨ブローカー企業VoyagerのSteve Ehrlich CEOは1,400ドルのデポジット(入金)が増えていることを明かし、給付金を増やすために仮想通貨とのエンゲージメントが高まっていると言及した。
20年4月に米国でトランプ(前)大統領が1,200ドルの給付金の配当を含む経済対策案に署名した直後には、コインベースCEOのBrian Armstrong氏がツイッターで1,200ドルの入金額が急増したと指摘していた。なお投稿は執筆時点では削除されており、 株式上場を控えるコインベースはコメントを返さなかった。
個人投資家の資金流入
また大手マーケットメイカーのシタデル・セキュリティーズの創設者であるKen Griffin氏はフィナンシャル・タイムズに対して、米政府による景気刺激策は米国市場における個人投資家の重要性を増すと指摘しており、このような見方が強まっている。
しかし、最近で機関投資家からの動きが強まっている傾向も見られてきた。
3月にはゴールドマン・サックスが21年Q2(4月から6月)中に、ビットコイン(BTC)を含む仮想通貨の投資商品を富裕層向けの資産運用企業(自社クライアント)に提供することを検討していることが報道されたほか、モルガン・スタンレーも資産管理会社(機関投資家クライアント)に対し、ビットコイン関連ファンドへのアクセスを新たに提供することが判明。
しかしその反面、同時に個人投資家からの巻き返しも起きていると仮想通貨取引所BitstampのHunter Merghart氏は指摘。欧州圏のクライアントが多いBitstampだが、給付金の影響かは定かではないものの3月においては米国からの顧客活動が活発になっていると説明した。
さらに米国の仮想通貨取引仲介業者FalconXのAya Kantorovich氏は3月に同プラットフォーム上で個人投資家からの流入が増加し、給付金配布の影響があったと考察する。
FalconXはOTCデスクや仮想通貨取引所などに流動性を提供する機関だ。Kantorovich氏によれば給付金が配布された翌週からリテール層からの買い(buy ratio)が増加したと指摘。
またKantorovich氏は給付金だけではなく、株式市場など金融市場の全般的なボラティリティが仮想通貨への参入障壁の低下につながっていると考察し、前回の給付金でビットコインなどを購入した投資家から口コミ(WOM)で仮想通貨に魅了されるきっかけになったと予想した。
給付金を全額ビットコインに投資した場合
実際米メディアからも昨春のビットコインなど仮想通貨市場への資金流入は取り上げられており、ビットコインの価格変動をトラッキングするBitcoin Stimulusなどでは、20年4月の給付金で受け取った1,200ドルを全額ビットコインに投資した際のリターンを表示している。
給付金が米国で配布された2020年4月15日にビットコインを1,200ドル(約13万円) 分購入していた場合、現在は10,552ドル(約116万円)相当になる計算。およそ1年間で約780%の収益率を記録している。
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