Cryptocurrency Open Patent Alliance(COPA、仮想通貨オープン特許同盟)は、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のホワイトペーパーの著作権を巡って、その権利を主張するクレイグ・ライト氏に対し、訴訟を提起したと発表した。
Today, COPA initiated a lawsuit asking the UK High Court to declare that Mr. Craig Wright does not have copyright ownership over the Bitcoin White Paper. We stand in support of the Bitcoin developer community and the many others who've been threatened for hosting the White Paper. pic.twitter.com/QNDEq3H6Oq
— COPA (@opencryptoorg) April 12, 2021
我々は、ホワイトペーパーの著作権問題を巡り、脅かされているビットコイン開発者コミュニティをはじめ、関係する人々を支持する
ーCOPA
この訴訟でCOPAは、「ビットコイン・ホワイトペーパーの著者であり、その著作権を所有している」というライト氏の主張に関して、英国高等法院の判断を仰いでいる。
訴訟に至った経緯
ビットコインの生み親『サトシ・ナカモト』を自称するライト氏は、今年1月21日付で、ホワイトペーパーのウェブサイトへの掲載は、同氏が所有する著作権の侵害にあたるとして、掲載を取りやめるよう複数の業界団体や企業に停止命令を送付した。
その中には、サトシ・ナカモト自身が設立に携ったとされるBitcoin.orgや、ビットコインのクライアントソフトBitcoin Coreの維持とリリースを行うBitcoinCore.orgも含まれていた。
Bitcoin.orgは、クレイグ氏の主張に法的根拠がなく、脅しには屈しないとして掲載を継続しているが、訴訟にかかる時間・労力・費用を回避して開発に集中することを選んだBitcoinCore.orgは、公式サイトからホワイトペーパーを削除せざるを得なくなった経緯がある。
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このような状況を受け、「オープンな金融システムを支持し、イノベーションを阻害する障壁を取り除くために結成された」COPAは2月、ライト氏の停止命令に対して、著作権主張の詳細な根拠を示すように要請する書簡を送った。ライト氏がサトシ・ナカモトであることを証明せよとする内容だ。
同書簡は、2月19日までにライト氏側の回答を求めており、その回答に基づく両者の協議によって訴訟回避を望んでいると結んだものだ。今回の訴訟から察するに、COPAは期日までにライト氏から回答を得られなかったものと思われる。
ライト氏は、自分こそが「サトシ・ナカモト」であるとの主張を繰り返し、ビットコイン関連で数多くの訴訟を巻き起こしてきた。2019年5月には、ビットコインコードとホワイトペーパーに関し米国著作権局に著作権の申立を行ったこともある。
なお、同氏の主張に基づく訴訟で、これまでに成功したものはないようだ。
COPAとは
COPAは、Twitter社のジャック・ドーシーCEOが率いる米モバイル決済大手のスクエア社が主体となって、2020年9月に設立した非営利団体。基礎的な仮想通貨技術に対する特許を主張しないよう企業や関連団体に求めている。(訴訟等に対する防御目的以外)
また、必要に応じて、メンバーが互いの特許を使用できる共有の特許ライブラリを作成し、所有する特許をプールすることを誓約することが、規約に盛り込まれている。
基礎的な仮想通貨技術を特許により閉じ込めてしまうことは、技術革新を阻害し、これらの技術が新たに、そして改良されて応用されることを妨げる。また悪質な行為者による誤った攻撃的な特許の使用は、仮想通貨技術の成長と自由な利用を脅かすことになる。
仮想通貨の根源ともいえる、ビットコインのホワイトペーパーの著作権を主張し、サイトへの掲載を禁ずるライト氏の行為は、まさにCOPAが憂慮していた「メリットのない訴訟」であり、コミュニティが「共同で対応する必要がある」事例に相当すると見られる。
広報担当者は、「COPAは仮想通貨コミュニティに革新的な力を与え、イノベーションの妨げとなるものを取り除くことを目的としている」と述べ、今回の訴訟がコミュニティのために取り組む一例であるとした。
COPAは「特許に対する認識や利用を破壊的な武器になりかねないものから、仮想通貨技術の革新や進歩の障壁を取り除くツールに変える」ことを目指しているという。そして、初期段階にある仮想通貨が成功するためには、コミュニティが一丸となって、特許に縛られない既存の技術をベースに、革新的な開発を行うことが必須だと主張している。