パウエル議長のFOMC発言
米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長は日本時間29日未明、連邦公開市場委員会(FOMC)で声明を発表。金融政策においては現状維持の姿勢を見せたものの、一部市場が過熱していることを示唆した発言が注目を集めた。またCBDC(中銀デジタル通貨)についても引き続き慎重な姿勢を示した。
金融の安定においては、市場価格の急騰した銘柄として株式から「ゲームストップ株」や暗号資産(仮想通貨)から「ドージコイン(DOGE)」を具体例とした質疑も挙がった。影響について問われたパウエル議長は以下のようにコメントしている。
多くの人々は単純に資産価格を見たり、株式市場の動向を見ているだけだ。これは株式市場におけるフロス(小さな泡)を反映している。
フロス(Froth)は小さな泡を指す言葉で、バブルほど弾けるリスクは大きくないものの、過熱感を示す。回答でドージコインやゲームストップ株の名称は特定しなかったが、これらの上昇は相場の過熱を示すと示唆した格好だ。
パウエル議長は相場の過熱感が量的緩和(QE)から来た可能性を否定し、米国で新型コロナウイルスのワクチン接種が普及したことで経済が回復基調にあることから取引が活発になったと言及した。
米国のCBDC
また、パウエル議長は米国政府によるデジタル通貨(CBDC)の発行についてもコメントした。
各国に比べ、一足先に開発と実証実験が進んでいる「中国に遅れを取るリスク」について問われたパウエル議長は、「最初に発行するよりも正しくすることが重要」と改めて慎重な姿勢を強調。「難しい課題だが、技術と政策リスクを理解する為の真摯なプログラムに取り組んでいる」と、ボストン連銀とマサチューセッツ工科大学(MIT)が進める共同研究の例を差した。
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さらに「CBDCは可能になっており、世界各国で見られることになる」と述べつつ、引き続き技術面と政策面の課題を深く理解する必要性があると発言。現在、米ドルが世界の準備通貨であることから、世界中のどの法定通貨よりも米ドルが活用されているとコメントし、仮に中国がCBDCを発行しても覇権をとることは難しいだろうと語った。
また、中国で実証実験を重ねているデジタル人民元(DCEP)については、「(中国)政府がリアルタイムでの全ての取引を監視できる」とコメント。国際競争の目的ではなく、中国国内での金融システムでの活用に特化している説明した。
パウエル議長はこれまでにも米国におけるCBDCの発行について慎重な姿勢を示しており、今回もデジタルドルの可能性については継続した見解が示された格好だ。
過去にもCBDCの発行を焦る必要はないと述べていたが、中国の台頭を懸念して一部米議員からは「仮想通貨やCBDCの重要性を避けるべきではない」との意見が挙げられていた。
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