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分散型金融(DeFi)運用をサポートするソリューション、KyberDMM解説 Kyber network寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

DeFiにおける流動性の重要性

Ethereumエコシステム内でDeFi(Decentralized Finance、分散型金融)の小さな芽が顔を出し始めたのは、2017年の初め頃だと思われます。その頃やっと、中央集権的な取引所に預けることなくトレードできるDEX(Decentralized Exchange、分散型取引所)が注目を浴び始めました。

最初に克服すべき課題は「流動性」でした。いくらEthereumで金融システムを構築しようとしても、資金が集まらなければ話になりません。

満足できる価値交換ができるほどの流動性が欠落していれば、いくら魅力的なシステムが存在していても、それは無意味です。

流動性の問題に対するソリューションとしてのAMM

初心者でもわかるUniswap完全ガイド』でも触れたように、流動性の課題を解決したのはAMM(Automated Market Maker)と呼ばれるDEXです。予め資金をプールしておき、その潤沢なプールから数式に従ってトークン交換に応じるため、レートが好ましくない可能性はあれど、ひとまず求められた量の交換を完遂できるようになりました。

DAIやUSDCのようなステーブルコインも浸透しDeFi運用の利便性が向上したこともあり、AMMが抱えるプールは時間とともに多様に、そして深くなっていきました。

成長を見せるUniswap(旧バージョン)の流動性(TVL、Total Value Locked)

AMMの重要な弱点、資本非効率性

AMMは他のDeFiアプリケーションが流動性を活用する意味でも非常に便利であったため、AMMはDeFi流動性の確固たる主役に成長しました。今ではあらゆる種類のユーザーが、AMMを通してトークン交換し、流動性を提供して収益を得ています。

AMMが主役になるにつれ、AMMへの批判も強まります。最も大きな批判は「資本非効率性(capital inefficiency)」でした。

従来のUniswapのようなAMMの数式に従うと、「大金であっても、よいレートで価格を動かすことなく取引できる」ような理想的状況を実現するため、想像以上の大金をプールに貯蔵する必要があります。上記のスライド例では、実現している交換量が0.1であるにも関わらず、プール在庫量がそれぞれ10ずつ、合計20も存在しています。

つまり、価格が大きく動かない限り、プールの底には大量の価値を眠らせることになってしまいます(詳しい従来のUniswapの価格決定メカニズムはこちらをご覧ください)。

かといって、仮にプールから利用されない資金を引き上げると数式のスケールが小さくなり、少ない取引額で価格が大きく動いてしまう状況に陥ってしまいます。

伝統的なオーダーブック取引であれば、0.1の売買量は、0.1の価値だけをベストレートで差し出し、相手が満足すればすぐに実現します。AMMの資本効率性はオーダーブックに遥かに劣るため、これが最大の弱点であると言われてきました。

21年4月にローンチしたKyberDMMの特徴

2017年から一貫してDEX開発を継続してきた経験から、早くからAMMの資本非効率性に目をつけていたのがKyber Networkです。2021年4月、資本効率性にフォーカスしたAMMであるKyberDMM(Dynamic Market Maker)をローンチしました。

KyberDMMも基本的にはUniswapのような数式に従ってレートを決定します。ただ、プール内で利用される在庫量に応じて、トークンごとに数式を柔軟に変更する方式をとっています。

KyberDMM white paper より。青線がKyberDMMの数式一例。

数式は多少難しいので説明は割愛しますが、

  • ドル建ステーブルコイン同士など、常に同じ価格が期待される通貨ペア
  • ドル建てステーブルコインとユーロ建てステーブルコインなど、価格変動が激しくない通貨ペア
  • ETHその他の、価格変動の大きい通貨ペア

などのそれぞれの性質に応じた数式を決定することで、資本非効率性を克服することを目的としています。「少ない在庫量であっても、良いレートを提供できるような数式に変更する」ことで、従来では眠らせる他なかった在庫量を引き出したとしても、同程度のレートとスリッページを自動で提供することが可能になりました。

Uniswap v3の「集中流動性」とは

最大のAMMであるUniswapは、2021年5月のアップデートで集中流動性(Concentrated Liquidity)を発表しています。基本的にKyberDMMと同様の仕組みです。

Uniswap v3の仕組み、ホワイトペーパーより

KyberDMMでは、トークンペアごとに数式を変更して対応していましたが、Uniswap v3は流動性を提供する個人が、サポートする価格レンジを指定することにより、自由に数式を指定できます。

Uniswap v3はローンチ初日からDeFiユーザーからの流動性を集め、早くも高い資本効率性を達成しています。この記事を書いている5月17日時点では、他のAMMに比べ、6%の資本で同じ取引高を達成したことがツイートされています。

KyberDMMにおけるユーザー体験

KyberとUniswapが「資本効率性」にフォーカスしたAMMを発表し、特にUniswapが一定の成果を収めたこともあり、今後のAMMの開発動向では、徐々に資本効率性を指値取引のレベルまで高めようという取り組みが大きくなる可能性があります。このムーブメントは、単純に売買がしたいユーザーには良いレートを、流動性提供者にはより大きな資本効率性を与えてくれるはずです。

KyberDMMはUniswap v3の後塵を拝しており、逆転は大変難しい状況です。それでも細かい仕様には明確な違いがあるため、資本効率性の高さを当然のものとして、独自の強みをアピールしつつ競争することになります。

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