民族・性別における多様性のデータ求める
ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が、暗号資産(仮想通貨)企業を含む金融業界に対して、取締役会や経営陣の民族・性別における多様性についてのデータを提出することを求めている。
まず資産1億ドル(約109億円)以上の銀行や、総収入1億ドル以上のその他金融関連企業(仮想通貨企業を含む)から2019年・2020年の取締役会と上級管理職の性別、民族背景の構成に関するデータを収集するとした。データは2021年秋に収集され、2022年の第1四半期に公表される予定だ。
NYDFSのLinda Lacewell長官は、公式声明で次のように呼びかけた。
これまでの度重なる調査で、コーポレート・ガバナンスは多様性のあるチームが率いることから恩恵を受けることが明らかになっている。取締役や上級管理職の多様性は、より革新的で収益性の高い企業を生み出し、より幅広い顧客層を獲得することにつながる。
NYDFSによると、金融・保険業界では一般的にマイノリティの従業員の割合が低く、白人の従業員に比べて地位も低いことが多い。幹部社員に占める女性の割合は3分の1以下で、取締役会に属する民族的マイノリティの割合も、人口に占める割合よりも常に低いという。
NYDFSは、米下院金融サービス委員会が2019年に報告した結果を引用した。それによると米国の人口の13%がアフリカ系アメリカ人、18.5%がラテン系、6%がアジア系であったが、銀行の取締役会に占める割合は、アフリカ系アメリカ人が11%、ラテン系が5%、アジア系が3%だった。
仮想通貨業界の事例
仮想通貨業界では、コインベースがマイノリティに差別的待遇を行っているとの報道がなされた事例がある。昨年12月にニューヨークタイムズは、コインベースの女性社員は、同等の仕事をしている男性よりも平均で給料が8%低く、アフリカ系アメリカ人社員は他よりも7%低いと伝えた。
また、米国全土で「Black Lives Matter」の抗議活動が行われた際に、コインベースのBrian Armstrong CEOは、社内で政治的・社会的な議論を行うことに反対する姿勢を表明。これを受けて1ヵ月以内に、同社従業員の5%が退職したと報じられる。
一方で、ブロックチェーン業界の多様性を促進するBlack Women Blockchain Council(アフリカ系アメリカ人の女性ブロックチェーン評議会、略称BWBC)は、イーサリアム(ETH)開発企業ConsenSysと提携し、2030年までに50万人のアフリカ系アメリカ人の女性ブロックチェーン開発者を育成するための取り組みを開始した。
BWBCによると、2018年時点で、ブロックチェーンのコーディングを専門とするアフリカ系アメリカ人の女性ソフトウェア開発者は、世界で1,000人にも満たないという。そこでConsenSysと協力して、2022年初頭よりオンライン学習コースを提供し、状況を改善するとしている。
このプログラムの参加費はわずか25ドル(約2,700円)で、アフリカ系アメリカ人の女性が最優先であるものの、アフリカ系アメリカ人の男性も参加可能だ。