文言修正は行わず、インフラ法案採決へ
米国下院議会は24日、修正案を検討せずにインフラ法案を進めることを決定した。220対212と票の数は僅差だった。これにより9月27日までにインフラ関連法案の採決が行われることになる。
この法案では、「ブローカーに対し、仮想通貨取引を行うユーザーの税務情報開示を求める」とした条項があるが、「ブローカー」の定義が広範すぎるとして仮想通貨業界から問題視されていた。
証券会社と同様に、仮想通貨取引所などの企業が取引情報を内国歳入庁(IRS)に報告することを義務付けるものだが、ユーザー情報を持たないマイナーや開発者、ノードバリデーターなどにも税務報告義務が発生してしまうのではないかと懸念されていた形だ。
インフラ法案とは
米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。
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こうした懸念のために、議員達からも超党派で、この規定の修正を求める声が上がっていた。しかし今回の投票で、修正しないという採決結果になった。
報告要件に関わる文言の変更を求めていた議員の一人、Anna Eshoo氏(民主党)は「インフラ法案に含まれる、欠陥のある文言を改善するために、予算調整プロセスなどを含めて、あらゆる機会を模索し続ける」と述べている。
財務省は懸念を緩和するガイダンス準備か
一方で、米財務省はインフラ法案に含まれる、仮想通貨企業の税務報告要件についてガイダンスを準備していると伝えられる。
米メディアCNBCによると、ある財務省職員は「要件がマイニング事業者やハードウェア開発者を対象とすることはないだろう」と語った。報告義務は、企業の活動が税法上のブローカーに該当する場合にのみ適用される見込みだと述べている。
例えば、ある分散型取引所が、ユーザー情報を提供するなど法的遵守を行うことができれば、要件の対象となる可能性がある。
この職員によると、税法を適用する前に、財務省は時間をかけて調査を行い、遵守を求められる可能性のある事業者を考慮し、その事業者が法的遵守できるかどうかを検証する予定だという。このプロセスには数年を要するかもしれない。
金融アドバイザリー企業Fit Advisorsの創業者、Anjali Jariwala氏は「今回の法案の規定は、具体的なルールを定めるというよりも、大枠の意図を確立するためのもの」であるため、現時点で投資家が心配する必要はないと意見した。
Jariwala氏は「この法案はおそらく、仮想通貨のさらなる規制の第一歩になるだろう」とも続けている。
先に引いたように、財務省職員が「分散型取引所」の中には要件の対象になるものが出てくる可能性もあることをCNBCの取材で指摘していた。このことを考えると、今後DeFi(分散型金融)の一部に、税務報告など規制の範囲が広がる可能性もありそうだ。
プライバシー保護の問題も
ユーザーデータを収集することについては、プライバシーを懸念する声も上がっている。また、インフラ法案はセンサーや自律走行車、ドローンなどの「スマートインフラ」を助成する項目を含んでいるが、こうしたセクターも人々の日常生活に関するデータを収集する可能性があり、プライバシー保護との両立が課題となりそうだ。
関連:米インフラ法案が及ぼすプライバシーへの影響とは|Orchid(オーキッド)寄稿