仮想通貨市況
ハイテク銘柄中心に構成される米ナスダック株式市場が前日比-2.6%と大幅安となり、投資家心理を再び悪化させた。
上院銀行委員会の公聴会にて、FRB(米連邦準備制度)のラエル・ブレイナード理事が、「テーパリング(量的緩和縮小)完了直後の早期利上げの可能性は排除しない」などと言及したことなどが嫌気された。CPI(米消費者物価指数)が39年ぶりの高水準で高止まりするなど、米金融当局はインフレ抑制の必要性に迫られている。
関係者発言で市場が過度に一喜一憂する内は”織り込んでる”とは言い難い。特にアルトバブル翌年の確定申告を控える仮想通貨市場では、現金やステーブルコイン比率を高めて機を伺う投資家も少なくないとみられる。
暗号資産(仮想通貨)市場は、米国時間(日本時間0時頃)よりビットコイン価格が段階的に急落。前日比で-3.2%の487万円(42,731ドル)まで下落した。
トレンド転換の要衝45,000ドル前後のレジスタンスライン(上値抵抗線)を試す前に反落しており、再び様子見基調が強まった。クジラ(大口投資家)の動きを可視化するオンチェーンデータ「Whales map」によれば、46,500ドル付近も相応の戻り売り圧力が想定される。
Reclaim of $46,500 will look like a trend reversal. Whales will be providing a bit of resistance there though.
— whalemap (@whale_map) January 13, 2022
All eyes on $46,500 pic.twitter.com/CrSde4Q13x
相関係数が過去最高水準に
Delphi Digitalのデータによれば、ビットコインと米主要株価指数「S&P 500」の相関係数は、過去最高水準の0.6に達した。特に直近1ヶ月で上昇傾向が目立つ。
相関係数は、類似性の度合いを示す統計学的指標。1.0は完全相関、マイナスの値は逆相関を示す。先日取り上げたCoinMetricsの相関係数データの30日平均でも0.58を記録している。(過去最高はコロナ・ショック時の0.78)
国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストであるGita Gopinath(@GitaGopinath)氏は、「株価指数とビットコインの相関関係は、金や債券、主要通貨との相関関係よりも高まっており、当初の認識よりも”リスク分散”効果が下がっていることを示している」と指摘した。
"Bitcoin's correlation with stocks has turned higher than that between stocks and assets such as gold, investment grade bonds, and major currencies, pointing to limited risk diversification benefits in contrast to what was initially perceived." #IMFblog https://t.co/0EhROZfX88 https://t.co/Bgn2QZVJxD
— Gita Gopinath (@GitaGopinath) January 11, 2022
IMFのレポートでは、新型コロナウイルスのパンデミックによるコロナショック(2020年3月)前は、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産と株価指数との相関性はほぼ見受けられなかったが、その後金融緩和フェーズで投資家のリスク選考が強まるにつれて相関するようになった。
それまで「0.01」だった相関係数は、2020〜21年の測定値では「0.36」まで跳ね上がっている。
特に新興市場経済で顕著に現れているという。MSCI新興市場指数のリターンとビットコインの相関関係は、2020〜2021年に0.34に達し、前年度の17倍と急増した。相関性が高まるほど、類似したポートフォリオを組んだ投資家のセンチメント(市場心理)が、異なる資産クラスを跨いで波及するおそれがある。
この点についてIMFは、「ボラティリティ(価格変動性)の高さゆえ、暗号資産が広く採用されている国においては、財政安定化にリスクをもたらす可能性がある」と懸念を示した上、「包括的でグローバルな規制の枠組みを整える必要がある」と言及している。
アルトコイン市場の動向
ビットコイン下落に伴いアルトコインが軒並み反落する中、逆行高のNEAR Protocol(NEAR)が再び異彩を放っている。NEARは、11日時点でCoinmarketcap(CMC)時価総額ランキングTOP20内まで上昇した。
大手VC「Three Arrows Capital」が主導する1億5000万ドル(170億円)の資金調達を完了したことなどが材料視された。Andreessen Horowitz(a16z)やFTXのサム・バンクマン・フリードCEO率いるAlameda Researchなどの機関投資家も出資している。
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レイヤー1(L1)ネットワークのNEARは、分散型アプリ開発の基盤を提供するスマートコントラクトプラットフォームだ。
すでに独自シャーディングモデル「Nightshade」を実装するなど、ETH2.0に先駆け拡張性の高さで先行するほか、イーサリアム互換のAuroraネットワークを介して相互運用性向上に取り組むなど、開発やエコシステム(生態系)の拡大スピードに定評がある。
2021年は、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)需要で肥大化するイーサリアム経済圏のスケーラビリティ問題を背景に、対抗馬となるL1プラットフォームとして、バイナンスコイン(BNB)、ソラナ(SOL)、 テラ(LUNA)、アバランチ(AVAX)などが大きな成長を遂げている。
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