レンディング・プログラムとICOを利用
米カリフォルニア州サンディエゴの連邦大陪審は25日、世界的なねずみ講を画策したとして、暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「BitConnect」の創設者でインド国籍のSatish Kumbhani容疑者を起訴する判断を下した。
米司法省(DOJ)の発表によると、BitConnectは、その詐欺的なレンディング・プログラムやICO(トークン販売)通して投資家を欺き、ピーク時には時価総額が34億ドル(3,930億円)に達した。Kumbhani容疑者らは、トレーディング・ボットやボラティリティ・ソフトなどのプラットフォーム独自の技術を用いて、仮想通貨市場の変動を利用した取引を行うことで、「多額の利益と保証されたリターンが得られる」と宣伝していた。
しかしその実情は、後にプログラムに加入した投資家の資金を、先に加入した投資家へ支払うねずみ講の運営そのものであり、詐欺行為によって投資家から合計24億ドル相当(2,774億円)を詐取していたものとみられる。
Kumbhani容疑者は、このレンディング・プログラムを1年ほど運営したのち突然、プログラムを停止。その後、BitConnectのネイティブトークンBitConnect Coin(BCC)の販売を開始し、世界中のプロモーター・ネットワークを通して、あたかも市場にBCCの需要があるが如く見せかけたと司法省は批判。
BCCは最盛期の2017年には、時価総額で10位以内にランクインするなど注目されたが、2018年1月に米規制当局から相次いで詐欺的要素が指摘されると、BitConnectは自身の取引所運営を停止し、他の取引所でも上場廃止措置などが取られた。結果的に、BCC価格は暴落し、同年9月にはBCCを取り扱う取引所はなくなった。翌2019年2月、米連邦捜査局(FBI)がBitConnectの捜査を開始していた。
関連:1日で90%の大暴落を見せた「Bitconnectコイン」、詐欺仮想通貨の疑いで米FBIが捜査に乗り出す
資金の隠蔽と規制回避
Kumbhani容疑者らは、BitConnectのウォレットや複数の仮想通貨取引所を介して、投資家から託された資金を混合、循環また交換することで、不正な収益を隠蔽していたことが指摘されている。
BitConnectは仮想通貨取引所を運営していたが、送金業務を運営するために必要とされる、財務省の金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) への登録は行っていなかった。
Kumbhani容疑者は大陪審により、電信詐欺とその共謀、商品価格操作の共謀、送金事業の無許可運営、国際的なマネーロンダリング共謀の容疑で起訴されたが、全訴因で有罪になった場合、最高70年の禁固刑に処す事になる。
なお、Kumbhani容疑者は現在逃走中とのことだ。
SECによる起訴
BitConnectとKumbhani容疑者は昨年9月、米証券取引委員会(SEC)からも、投資家の資金を不正に詐取した容疑で起訴されている。
また、BitConnectのプロモーションを行っていた「Future Money」社とその経営者Glenn Arcaro容疑者は、2,400万ドル(約28億円)以上の「紹介手数料」と「開発資金」を受け取っていたとして、SECから詐欺罪で起訴され、有罪が確定。Arcaro容疑者は不正に取得した資金全額を、投資家に返済する結果となった。
関連:米SECがBitConnect創業者らを起訴 仮想通貨関連詐欺で2,000億円超の被害
そのほか、2021年5月には、BitConnectの元プロモーター5人がSECから起訴されているが、うち二人は同年8月に有罪が確定。190BTCを含むおよそ13億円の支払いが申し渡された。
関連:BitConnect詐欺、元プロモーターらにビットコインなど13億円相当の支払い判決