制裁回避を防ぐ新ツールを発表
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは10日、経済制裁の対象となる暗号資産(仮想通貨)ウォレットを特定するための、新しいツールの提供を発表した。ロシアの制裁回避に仮想通貨が使われる可能性が注目されていることが背景にある。
チェイナリシスが無償で提供するこのツールを使うと、DeFi(分散型金融)プラットフォーム、dApps(分散型アプリ)など分散型Web3.0の構築者は、やり取りする仮想通貨アドレスが制裁対象に該当していないかを簡単に検証できるようになる。
Web3.0とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
▶️仮想通貨用語集
チェイナリシスは、ロシアの行為者が仮想通貨を制裁回避に使う可能性について、次のように述べている。
ブロックチェーンの透明性を考えると、ロシア政府や、同国の金融エリートが仮想通貨により組織的・大規模に制裁回避することは難しいだろう。しかし、従来の金融システムと同様、制裁対象となるロシアの行為者の中には、仮想通貨を制裁回避の手段として利用しようとする者がいるかもしれない。
米財務省金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)も7日、同様の見解を示していたところだ。FinCENは、ロシアが国家的な規模での制裁回避に仮想通貨を使うのは難しいかもしれないが、制裁対象となる各個人などが回避に用いる可能性があるとしていた。
DeFiも導入できるAPIとオラクル
チェイナリシスは、従来型金融機関や中央集権型の仮想通貨取引所は、規制遵守のために、取引監視ソリューションをすでに導入しているが、多くの分散型プロトコルは、制裁対応にも役立つような、そうしたツールを持っていないと指摘。
その問題を解決するために、どのような組織でも仮想通貨取引について制裁対象となる行為者を特定できるようなツールを構築したという。具体的には、以下の2つを用意した。
- モバイル含めウェブ向けに設計されたAPI
- スマートコントラクトのために設計されたオンチェーンオラクル
APIを使うと、ユーザーは、ある仮想通貨アドレスが制裁リストに掲載されているかどうかをチェックすることができる。現時点で、提供開始は4月になると見込んでいるという。
また、オラクルを用いて、スマートコントラクトから同様の確認を行える。チェイナリシスのオラクルは、イーサリアム(ETH)、アバランチ(AVAX)、ポリゴン(MATIC)を始め、ほとんどのEVM(イーサリアム仮想マシン)互換ネットワーク上で使うことができる。