NFTの実験的導入
フランスの大手ゲーム企業ユービーアイソフト(Ubisoft)は6日、ミリタリーアクションゲーム「ゴーストリコン ブレイクポイント」(以下GRBと表記)に関して、新規コンテンツの配信及びアップデートを終了すると発表した。
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— Ghost Recon (@GhostRecon) April 5, 2022
GRBは「ゴーストリコン」シリーズの最新作として、2019年の発売以来11回のアップデートを実施。昨年11月に最新コンテンツが配信されていた。なお、サーバーは維持されるため、GRBは継続してプレイすることが可能だという。
ユービーアイソフト社は昨年12月、NFT(非代替性トークン)プラットフォーム「Ubisoft Quartz」をローンチ。Quartzに対応するNFT「Digit」が初めて導入されたのが、GRBだった。12月には3回にわたり、最初の三つのDigitが条件を満たしたGRBプレイヤーに無償で提供された。
同社は3月17日にGRB最後のDigitをリリース。今後は「新しいプロジェクトや機能」で、Quartzプラットフォームによる価値提案の向上を目指していくとしており、他のゲームでNFT導入を継続する姿勢を見せている。
NFT
NFTとは、「Non-Fungible Token」の略称で、代替不可能で固有の価値を持つデジタルトークンのこと。ゲームのキャラクターやアイテムの他、アート作品や各種証明書など、幅広く技術が活用されている。
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GRBのNFT売買の実態
Digitは「Rarible」と「Objkt.com」の二つの市場で取引可能だったが、テクノロジーメディア「Ars Technica」の調査によると、取引はあまり活発ではなかったようだ。
ユービーアイソフト社が発行した数千のDigitのうち、初の配布から約120日間で、売買されたのは96個にすぎず、Objktでは2月5日の販売を最後に取引が停止されているという。
また、GRBのNFTには、特徴的な独自性が欠けていることも指摘されている。例えば10TZ(Quartzはテゾスブロックチェーンを使用)で販売されたアイテム「Wolf Enhanced Pants」と他のアイテムとの違いは、アイテムに刻印された小さなシリアルナンバーのみだった。
さらに、GRBのアップデート終了が、今後NFTコレクターの心理にどのように影響するか、またゲーム内にのみ存在するNFTの価値をどう捉えるのかなど、未知数な部分も多いという。
プレイヤーは懐疑的
一般的にプレイヤーの間にはNFTの価値を懐疑的に見る傾向が強く、多くのプレイヤーがブロックチェーンゲームに拒否反応を示していることも、繰り返し報道されている。
一方、ユービーアイソフト社は、NFTの導入に積極的なことで知られる。「常に新しいことに挑戦することで学び続ける」ことを重要視しており、「新しいトレンドや技術をいち早く取り入れること」は同社の戦略の中核であり、DNAの一部だと主張。NFTの導入は時間がかかる「実験的な試み」であると同社は認めた上で、取り組みを進めていくようだ。
昨年12月には、クラウドサービス開発会社「Aleph.im」と提携し、NFT関連のメタデータ保管に、Aleph.imの分散型ストレージを使用する。
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2月にはメタバース系NFTゲーム「ザ・サンドボックス(SAND)」とパートナーシップを締結。ユービーアイソフトのゲームの知的財産(IP)が、ザ・サンドボックスのメタバースで利用できるようになる。
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また先月末、香港のWeb3.0大手企業アニモカブランズ(Animoca Brands)と共に、NFTカードゲーム「Cross the Ages」に約15億円を出資したことが明らかになった。
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