EU、ロシアに追加制裁
欧州連合(EU)は8日、ロシアに対する新たな制裁措置を発表。暗号資産(仮想通貨)ウォレットへの送金や、高価格の仮想通貨サービスを禁じることを通知した。
今回の制裁措置は、これまで4回に渡って、段階的に発動されてきた措置に加わる、5回目の制裁措置となる。「ロシアに対する経済的圧力をさらに強め、ウクライナ侵略のための資金調達能力を麻痺させること」が狙いだ。
仮想通貨ウォレットへの送金の禁止は、「既存の措置を強化し、制裁の抜け穴をふさぐことを目的とした一連の経済的措置」の一つとして挙げられた。
これらの中には、他にロシアの公共団体へのすべての財政支援の停止、ロシアおよびベラルーシへの、EU圏法定通貨建ての銀行券・証券の販売禁止の拡大なども含まれる。
以前より仮想通貨は、EU関係者から、制裁回避手段の一つになり得ると指摘されてきたところだ。
欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は3月22日に、仮想通貨がロシアに経済制裁を迂回する手段として使用されることを懸念する発言を行っていた。仮想通貨取引所などが「共犯者」になりかねないとも述べ、関係事業者に明確なメッセージを伝えるよう動いていることも示唆していた。
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なお、「高価格の仮想通貨サービス禁止」は、金融的措置の一環として実施されるが、具体的にどのようなサービスが対象になるのかは今回の声明では説明されていない。仮想通貨ウォレットへの送金禁止の詳細についても同様だ。
G7も制裁回避を警戒
仮想通貨を対象とする制裁は、G7も3月に発表している。ロシア国家や、オリガルヒ(新興財閥)が、国際制裁の影響を回避する手段として仮想通貨を活用できないようにすることが目的だった。
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米財務長官「制裁回避に使うのは難しい」
一方で、取引がブロックチェーン上で追跡できる特徴を持つことから、仮想通貨により制裁回避を行うのは難しいという意見も上がっている。
米国のジャネット・イエレン財務長官は6日、米下院金融サービス委員会の公聴会で、現時点でロシアは制裁回避手段として仮想通貨を利用していないと説明。
引き続き、仮想通貨による制裁回避が行われないよう注視していくが、「仮想通貨を利用して、大々的に制裁回避するのは難しい。大規模なトランザクションはブロックチェーン上で明らかになってしまう」と話していた。
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EUが発した今回の一連の追加制裁には、ロシア産石炭の輸入禁止、ロシアの銀行4行の取引禁止と資産凍結、精密機械などへ対象を絞ったロシアへの輸出禁止、ロシアからの輸入禁止品目追加なども盛り込まれた。