アプリで使用するトークンを
米SNS大手メタ(旧フェイスブック)社が、フェイスブックやインスタグラムのユーザー向けに、デジタル通貨の開発を検討していることがわかった。Financial Timesの報道によると、これらのトークンは、同社のマーク・ザッカーバーグCEOの名前から、社内で「Zuck bucks」と呼ばれており、メタバース空間での使用を視野に入れた開発が計画されているという。
しかし関係者によると、Zuck bucksはブロックチェーン基盤の暗号資産(仮想通貨)ではなく、同社が管理するアプリ内のトークンという形をとることになりそうだ。
若年層から大きな支持を得ているオンラインゲーム「ロブロックス」(Roblox)のゲーム内通貨「Robux」の収益システムに倣う可能性が示唆されている。
また、フェイスブック経済圏での貢献度に応じた報酬とした「ソーシャルトークン」や「評判トークン」の発行、さらにインスタグラムのインフルエンサー向けの「クリエータコイン」などの作成も検討されているという。
メタ社は先月、米国特許商標庁(USPTO)へメタバースに関する商標登録を8つ提出。その中には、仮想通貨やブロックチェーンソフト、取引サービスに関するものが含まれており、同社のメタバース参入に向けた企業戦略を反映していると指摘されていた。
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NFTの導入
メタ社は、アプリへのNFT(非代替性トークン)対応を計画している。
インスタグラムのアダム・モセリCEOは昨年12月、クリエーター支援の可能性としてNFT(非代替性トークン)対応を検討しているとコメント。さらに今年3月には、メタ社のマーク・ザッカーバーグCEOがインスタグラムへのNFT機能を導入すると発表した。
Financial Timesが入手した社内メモによると、同社は5月中旬に、フェイスブックでNFTを投稿・共有するための試験運用を開始する予定で、その後フィスブックグループのメンバー登録機能やNFT作成機能についても、検証されるという。
金融商品の開発
メタ社の前身であるフェイスブック社が主導していた仮想通貨プロジェクト「Diem」(旧Libra)は、世界の各国政府や規制当局からの厳しい批判にさらされた。その後、名称変更やプロジェクトの共同開発者であったリーダー交代など紆余曲折を経て、最終的には、その決済ネットワークに関する知的財産権を、米シルバーゲート銀行へ売却することとなった。
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メタ社の仮想通貨ウォレット「Novi」プロジェクトは、Diemを率いてきたデービッド・マーカス氏により同社の金融部門にまで成長していたが、昨年末のマーカス氏の退任後を引き継いだステファン・カスリエル氏により、3月にMeta Financial Technologiesと名称が変更されている。
Financial Timesによると、マーカス氏の退任と同時に、エンジニアや法務チームなど、多くの主要メンバーがメタ社を退職したという。そのため、同社に残ったフィンテックチームは、Diemのような汎用型の仮想通貨の開発から、メタバースで利用するデジタル通貨の作成やサポートに軸足を移しているようだ。
カスリエル氏は、名称変更はメタ社の「未来へのビジョン」の表現の一環であり、メタバース向けのフィンテック事業としてふさわしい名前だと述べている。