USTの宣伝内容を巡り集団訴訟
暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースは16日、ステーブルコインUST(TerraUSD)について、投資家を誤解させるような内容で宣伝していたとして米カリフォルニア州で提訴された。
原告2人は、同様の立場にある投資家らを代表して集団訴訟を起こしたとしている。
訴状によると、コインベースはUSTが米ドルやその他の有形資産に裏付けされていなかったにも関わらず、マーケティング資料などにおいて、USTを「分散型ステーブルコイン」と呼んできた。
このことは、原告および同様の立場の投資家に、USTが安全性の高いステーブルコインであり、他の仮想通貨と比較してリスクが少ないと誤解させるものであったという。
さらに、コインベースは、USTの開発企業Terraform Labsが、他の法定通貨やコモディティなど有形資産を保有していないことなど、USTに関する重要な事実を明かしていなかったとも申し立てている。適切な情報開示がなされていなかったとする格好だ。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、DAIやUSTといったアルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
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背景
背景として、訴状はUSTが米ドルとのペッグを保つ仕組みについても解説している。
USTはアルゴリズム型ステーブルコインだった。投資家の裁定取引へのインセンティブから価格を維持しようとするもので、USTが1ドルを下回ると、トレーダーはUSTを、USTの裏付けトークンであったテラ(LUNA)に交換し流通から排除、それによりUSTの供給量を減らし、価格を回復させる。
反対に、USTの価格が1ドルを超えると、トレーダーはLUNAをUSTに換えることでLUNAを流通から排除し、結果的にUSTの供給量を増やして価格を下げるように導く仕組みである。
しかし、5月には少数の大口投資家がTerraネットワークのレンディングプロトコル「Anchor Protocol」から大量のUST(約650億円)を引き出し売却し、USTが大きくディペッグする一因になった。
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韓国の検察当局はTerraform Labsの従業員を調査した際、こうしたディペッグが起こるリスクについては、開発当初から社内でも指摘されていたという証言を聞いたとしている。
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訴状は、5月にUSTの下落により、投資家らは数日で約2.4兆円(約180億ドル)を失ったと主張している。
コインベースがUSTを支援するために数百万ドルを費やし既得権を有しており、そのために、USTに内在する真のリスクを隠し、投資家に裏付けのあるステーブルコインを購入していると誤った認識を抱かせ、損害を被らせたとも続けた。
ステーブルコインの規制は現在各国で進められているところだ。
日本でも、3日に可決・成立した改正資金決済法に、仮想通貨やステーブルコインの規制を実施し、通貨の発行を銀行や資金移動業者、信託会社に限定するという内容が盛り込まれた。
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