「事業内容を正確に反映していない」と主張
Dimplxの取締役は、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスに属する英国企業の1つについて、2020年の財務諸表が不正確であると申し立てている。フィナンシャルタイムズが報じた。Dimplxは、バイナンスとの合弁事業として2019年に設立された英国企業で、バイナンス英国子会社の共同所有者である。
主にバイナンスの英国法人の1つBinance Digital(バイナンスデジタル)の財務諸表について、資産や負債、売上高を正確に反映していないと述べている形だ。
バイナンスデジタルは、2019年に「決済仲介事業者」として英国で法人化されており、バイナンスに関して、仮想通貨と様々な法定通貨(トルコリラ除く)間の取引を担当していた。
申し立て内容
Dimplxの取締役であるSimon Dingle氏とJoshin Raghubar氏は、同社の年次報告書で、バイナンスデジタルの2020年の会計報告には、不正確な点がいくつも存在していると主張している。
バイナンスの提出書類は、バイナンスデジタルが2020年末時点で約163億円(約1億ポンド)の「現金および銀行残高」を有しており、この額は債権者からの融資であると示すものだった。
しかしDimplxの取締役は、この1億ポンドはバイナンスデジタルが「取引手数料を支払う義務のある」ユーザーに代わって保有する残高だと考えられると説明している。
一方で、財務諸表には、会計年度中にユーザーが行ったどの取引についても、「売上高ゼロ」または「手数料ゼロ」と記録されていたと続けた。バイナンスデジタルは2020年度決算で、年度内に売上高も収益も記しておらず、このため同社は英国に税金を納めていない。
Dimplxの取締役は、Dimplxに割り当てられた株式資本が誤って計上されているとも主張している。Dimplxのバイナンスデジタルに対する所有権について、公正に決定するには、バイナンスデジタルのすべての取引、収入、負債、税金を正確に評価する必要があるという。
Dimplxは、同社が「裁判所の命令により保有株式を評価される権利、損害賠償を求める権利」などの法的権利を持っていることにも言及。ビジネス関係で生じた紛争について、バイナンスに対して訴訟を起こす予定であると述べている。
バイナンスは、訴訟の可能性を考慮して、今回のDimplxによる申し立てには「完全に応答することはできない」とコメントしている。また、「少数株主が、当社との合弁事業が実を結ばなかったことに失望していることは理解している」とも付け加えた。
バイナンスデジタルがbinance.comで取引するユーザーから取引手数料を徴収していたかどうかや、1億ポンドの出所については説明を避けた。
英国での状況
英国の金融行動監視機構(FCA)は2021年6月に、バイナンスグループの別の英国子会社Binance Markets Ltdに対して警告しており、英国で規制対象となる活動に従事することを禁じていた。
その際には、バイナンスが「全世界のグループ事業体の商号や機能」など、事業運営に関する基本的な情報を提供していなかったことを理由の一つとしている。FCAは、バイナンスのグローバル事業が「消費者に大きなリスクをもたらす、複雑で高リスクな金融商品を提供している」とも述べていた。
FCAとは
FCAとは、Financial Conduct Authority(金融行動監視機構)の略で、イギリスの金融を規制する機関。金融サービス業に携わる企業の行動を規制している。
▶️仮想通貨用語集
その後、バイナンスのChangpeng Zhao最高経営責任者(通称CZ)は今年3月、英国政府や財務省関係者らと会談した。これまでの問題点も認めつつ、今後は規制当局と積極的に関わっていく姿勢を強調したとされる。