シンガポール当局、2つの協議書発行
シンガポール金融管理局/中央銀行(MAS)は26日、暗号資産(仮想通貨)規制に関する2つの協議書を発行。リテール投資家による仮想通貨レバレッジ取引の制限や、ステーブルコイン規制導入などを提案する内容だ。
利害関係者に対して、2022年12月21日までに意見を提出するよう求めている。
小口レバレッジ取引などの制限を提案
1つ目の協議書でMASは、「クレジット(信用)やレバレッジを使った取引は、投資額以上の損失につながる可能性がある」と注意を促している。そこで、クレジットカード経由の取引も含めて、負債による資金調達やレバレッジをかけた仮想通貨取引を提供することを制限しようとする形だ。
その他に、仮想通貨企業が消費者にインセンティブを提供することを制限する提案も行っている。「無料の取引ポイントなどのインセンティブを個人顧客に提供することで、その個人がリスクを十分に考慮せずに仮想通貨投資を行うよう仕向ける可能性がある」と説明した。
インセンティブの中には、エアドロップなども含まれる可能性がある。
エアドロップとは
仮想通貨(トークン)を無料配布すること。仮想通貨の認知度向上など、マーケティングを目的としているケースが多い。ブロックチェーンがハードフォークして、新しい仮想通貨が生まれた場合にもエアドロップを行う場合がある。
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さらにMASは、レンディングなどの禁止も提案した。リテール顧客の保有する仮想通貨を担保に入れたり貸し出してはいけないという内容だ。機関投資家などについては、「明確なリスク開示文書を提供し、顧客の同意を得るべき」としている。
利回りサービスやステーキング報酬は、顧客の仮想通貨を貸し出すことによって利益を生み出している場合が多い。このため、もし仮に提案が採用された場合、一部サービスに何らかの影響がおよぶ可能性もある。
今回の協議書は、消費者保護を考慮している。特に、仮想通貨のボラティリティ(価格変動)の大きさや、旧テラ価格の崩壊をきっかけとして今年5月以降に生じた、仮想通貨業界の債務不履行連鎖を念頭に置いたものだ。
ステーブルコイン規制
2つ目の協議書はステーブルコインに関わるものだった。
MASは、ステーブルコインについて2種類に分けた。まず、単一通貨にペッグされ、裏付け資産をもつステーブルコインがある。
その他に、通貨バスケット型、コモディティとペッグされたもの、アルゴリズム型など様々な種類のステーブルコインもあるが、こちらは「価値の安定性が低い」ため、引き続き仮想通貨プロバイダー規制の対象にすると説明した。
その上で、単一通貨にペッグされ、裏付け資産をもつステーブルコインについては、シンガポールでの発行水準を高めたいとしている。MASは次のように提案した。
準備資産は、シンガポールで資産保管サービスを提供する認可された銀行、商業銀行、金融会社、資本市場サービス認可業者(CMSL)に預けなければならない。
単一通貨ステーブルコイン発行者がシンガポールの銀行である場合は、準備資産を自社で保管することができる。
MASは、「ノンバンク(非銀行企業)および銀行のどちらもステーブルコインを発行することができる」と述べた。その際、ノンバンクは、資産プールに担保されたトークンとして発行し、銀行は、トークン化された銀行負債としてステーブルコインを発行することができるとしている。
2つの協議書は、いずれも12月21日まで意見を募集。最終的なガイドラインが決定された後に、6~9か月後から規制が施行される見込みだ。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、DAIやUSTといったアルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
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