DAO投票に異議
DeFi(分散型金融)大手Makerプロトコルを管理する分散型自律組織「MakerDAO」は、組織の分割やステーブルコイン「ダイ(DAI)」の価格設計など、プロジェクトの構造を大きく変更する方向へシフトしている。
MakerDAOの創設者Rune Christensen氏が打ち出したEndgame Planに向けた提案「Endgame Prelaunch MIP」が、10月24日に80%の賛成で可決した。
Most big voters are delegates (a cool system). They are paid in line with the amount of MKR they get delegated.
— Sébastien Derivaux (@SebVentures) October 25, 2022
So it is fair to say that when your biggest sponsor is 51%+ of your compensation, you listen.
Which, oddly enough, brings #centralization
2/n pic.twitter.com/lXDGQPtBzf
しかし、MKR保有者における得票率が15%弱と低かった。Christensen氏が賛成票の74%に影響力を及ぼしたとのデータが表出。提案の重要性に反して、投票プロセスの正当性に不備があるとの不満がDAO参加者間で噴出している格好だ。
反対者の主な指摘は、様々な施策を個別に評価・投票させるのではなく、一緒くたにしていること。米著名VCのa16zを初めとする反対投票者は、現状のガバナンス構造でも創業者が掲げる目的を達成できるとの意見を表明してきた。
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MakerDAOはプロジェクトのDAO化実現や、実世界の不動産の担保導入など、DeFi分野の中でも先進的な取り組みに挑戦してきたパイオニア的存在。しかし、MKR保有者の投票率の低さは以前から問題視されてきた。
Paradigm社のFlashbots戦略リーダーで研究協力者を務めるHasu氏(仮名)は、DAOガバナンスに20/40/80の定足数を設けるよう指摘。同氏は得票率4.3%を占める反対票を投じた。
核となるビジョン、戦略、経済性など、プロトコルのあらゆる部分を劇的に変えるような提案が、15%以下の投票率で可決されるのは正当性に欠けている。
ガバナンス投票に関する不確実性の中、暗号資産(仮想通貨)メイカー(MKR)は前週比16.2%下落しており、国内銘柄の1週間下落率でワーストとなった。同時期にイーサリアム(ETH) は14.5%上昇している。10月28日時点のMKRの時価総額は約1320億円で、仮想通貨市場で56位に付けている。
Endgame Planとは
Endgame Planは、Makerプロトコルの管理体制を単一DAOから「MetaDAO」と呼ばれる個別ユニットに分割するもの。Makerとして政府からの検閲耐性と個別プロジェクトの推進力を強化するねらいがある。
具体的には、RWA(現実世界資産)の統合や、合成ETH運用など、個別プロジェクトを管理するDAOが独自トークンを発行する。戦略には、USDCのようなブラックリストや差し押さえの可能性がある中央集権的な資産をDAI準備金から取り除く内容も含まれた。
Makerプロトコルは、ステーブルコイン「DAI(ダイ)」の発行・管理、レンディングプラットフォーム。MakerDAOはプロトコルの運用方針について、ガバナンストークン(MKR)の投票を通して管理するDAO(分散型自律組織)だ。
Makerが発行する「ダイ(DAI)」は仮想通貨担保型のステーブルコイン。米ドルの価値と連動しており、1DAI≒1ドルを維持するよう設計される。執筆時点でDAIの時価総額は63億ドル(約9,400億円)で、これはステーブルコインとして4位の規模だ。
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