FTX破綻に関する上院公聴会
大手暗号資産(仮想通貨)取引所FTXの破綻に関する公聴会が1日、米上院農業委員会で開催され、商品先物取引委員会(CFTC)のロスティン・ベーナム委員長が証言を行った。ベーナム氏はCFTCには規則を作成し、取引を監督する権限が必要だと強調。包括的な規制権限をCFTCに付与するよう、議会に求めた。
公聴会は「なぜ議会は行動を起こすべきなのか:FTXの破綻から学んだ教訓」を議題とし、仮想通貨業界の監督体制について議論した。
ベーナム氏は、現在CFTCが持つ規制権限は、デリバティブ市場に限定されており「現物デジタル商品市場を包括的に規制する直接的な法的権限」を持たないと指摘。一方、詐欺や操作に対する「限定的な」執行に関する権限は有しており、2014年以降、60件以上の取締りを行い、総額1,100億円超(8億2,000万ドル)の罰金を科した実績があると述べた。2022年度の82件の執行措置のうち、20%は仮想通貨関連の措置だったという。
しかし、CFTCが摘発した不正行為は氷山の一角に過ぎない可能性が高いとベーナム氏。CFTCが直接監督可能な包括的規制を策定することの重要性を訴え、8月に提出された「2022年デジタル商品消費者保護法」(略称DCCPA)への支持を改めて表明した。
DCCPAは農業委員会のメンバーとCFTC職員が協力して策定したもので、デリバティブ市場で培ったCFTCの「効果的な規制の枠組み」が反映されているとベーナム氏は説明した。
米商品先物取引委員会(CFTC)とは
商品取引所に上場する商品や金利、デリバティブ全般など、米国の先物取引市場を監督する政府機関。市場参加者を保護し、市場の健全性を確保するため、不正の防止・摘発を行う。
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規制が機能している
ベーナム委員長は、FTX破綻でも破産申請を免れた数少ない事業として、デリバティブ取引所LedgerXに言及。同社が指定契約市場(DCM)、スワップ執行機関(SEF)、デリバティブ清算機関としてCFTCに登録され、監督されている事実を指摘。LedgerXには、商品取引法に基づいて、顧客資産の分別管理とセキュリティの確保をはじめ、運営コストをカバーする資本の維持、正確な帳簿と記録の維持などが義務付けられているという。
ベーナム氏は、破綻したFTXが、分別管理やリスク管理の杜撰さから巨額の顧客資金を不正流出させた一方で、「CFTC規制下にあるLedgerXの顧客資産は、分離され、安全であるべき場所に留まっている」と述べ、規制が機能している証左だと強調した。
さらに、DCCPAが施行されていたならば、FTXにおけるいくつかの不正行為を禁止することができただろうと同氏は述べた。
SBF氏が推進した法案
ベーナム氏が言及したDCCPAは、FTXの元CEOであるサム・バンクマン=フリード(SBF)氏が連邦議員に対し支持を働きかけていた法案だ。
DCCPAでは、「デジタル商品」に対する 「独占的監督権 」をCFTCに 付与することを提案。またデジタル商品を扱うブローカーやディーラー、カストディアン、取引所に、CFTCへの登録を義務付ける。
ウォールストリートジャーナル紙は、FTXが同法案を支持していたことにより「法案に対する影響力に疑問符がつく」と指摘。FTXの目標は、証券取引委員会(SEC)よりも「友好的な規制当局と認識される」CFTCに規制権限を移すことだったと主張した。
公聴会では、CFTCの監督モデルがSECよりも「ソフト」だとの指摘に対し、ベーナム委員長は「明確に拒否する」と発言。この法案は「権力の掌握ではない」とし、SECが証券として適格なデジタル資産を監督する余地を残すと述べた。
ベーナム氏は、DCCPAは顧客資金と企業の自己資金の混合を禁止し、監査された企業財務情報開示の施行を求めるものだと説明。FTXの崩壊に結びついた不正行為が、他社で繰り返されないためにDCCPAについて、再検討することを提案した。