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中国政府が2020年に導入予定の「社会信用システム」が仮想通貨に与える影響は?

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社会信用システムと仮想通貨
インターネットや監視カメラデータを信用スコア化、低評価者に航空機などの利用制限を掛ける中国公安部。ブロックチェーンや仮想通貨が、政府の監視回避手段として普及を後押しするとの見方も。

中国の社会信用システム

中国政府が2014年に発表した「社会信用システム」計画は、全国的な評価システム構築計画で、2020年までに、基本構造を実装することを目指しています。

このシステムは、政府が国民の様々な個人情報をデータベース化して、社会的信用度のスコアを付け、その評価により各種制限を受けたり、あるいは特典を受けられたりするというものです。

政府がすでに持っている所得やキャリアに関する個人情報に加え、インターネット上の活動や、監視カメラなどによる日常の行動の監視から得られるデータをビッグデータ分析技術を使って、信用スコアに落とし込み、評価するという仕組みのようです。

中国国務院の発表した計画概要によると、この目的は、「社会内での誠実さと信頼性の水準の意識を向上させること」であり、対象は個人だけではなく、中国の全企業の活動向けの信用評価計画も含まれるため、食品偽装や不正行為などの問題解消につながると主張しています。 

監視社会のデメリット

しかし、欧米のメディアでは、このシステムをジョージ ・オーウェルの小説『1984年』に登場するビッグ・ブラザーになぞらえ、極端な「監視社会の到来」を危ぶむ論調が多く見受けられます。  

確かに最近では、顔認証テクノロジーをはじめとする、監視技術の発達や電子決済の大々的な普及により、個人情報は、消費活動から車の運転、横断歩道の渡り方まで、収集することが可能になってきているため、ある意味で監視され、管理される可能性は、物語の中だけの話ではなくなってきているのが事実でもあります。

例えば、北京では警察が顔認証メガネのテストを開始、車のナンバープレートと、車内の人間を数ミリ秒で認識できると報道されました。 また中国公安部は、全国民を3秒以内で認識することを目指していると言われています。

また中国では、その利便性だけではなく、現金に対する信頼性の低さなどから、電子決済の普及は目覚ましいものがありますが、そこから得られる決済情報は、企業がユーザーの信用度を格付けするのに利用し、その信用度に応じた待遇を行っていることが知られています。

決済で大きなシェアを占めるアリペイ(支付宝/Alipay)は、Eコマース大手アリババグループ傘下ですが、同じアリババグループの信用調査機関、「芝麻信用」は、独自の基準でユーザーを査定しており、その評価システムのデータは、多くの分野で利用されているようです。

「芝麻信用」は、中国初の画期的な格付けサービスで、社会的信用の保証システムとも機能しており、スコアが高ければ、低金利でローンを組めたり、レンタルサービスを利用する際の保証金が免除されたりとの特典があります。 中国政府も、この「芝麻信用」のデータをの信用システムの実験段階を始めるために使っていると報道されています。  

また、中国の信用システムの試験を開始するライセンスは、「芝麻信用」を運営するアントファイナンシャル、中国版LINEと言われるウィーチャット(We Chat)を運営する、テンセントが、その他6社とともに獲得しています。

社会信用システムが実生活にもたらす影響は

技術面では、すでに構築が進んでいる中国の「社会信用システム」が、実生活ではどのようなインパクトを持つのでしょうか。

ロイターによると、中国政府は今年5月1日から、社会信用の低い国民に対しては、高速道路や航空機の利用を最長1年間禁止にする処置を開始するとのことです。 実際に、ニュースウィークの報道によると、すでに一部ではパイロットプログラムとして稼働していたこのシステムにより、公務員の腐敗をソーシャルメディアで訴え、政府と衝突した報道記者が、航空券の購入を拒否されたということです。

このシステムの本格的導入が始まった際に、信用度が低いために、社会的インフラをはじめとする様々なサービスが利用できなくなる人々が出てくることも、考えられます。

「社会信用」のスコアの付け方が、不透明な部分も多いため、具体的な影響は予見できませんが、一般の金融や政治から「取り残された人々」や、政府の介入を嫌う人々の間では、中央集権的管理の対極にある、分散化されたブロックチェーン技術や仮想通貨に、コミュニケーションや支払い手段、また政府の監視から逃れる手段としての可能性を見出し、その普及の後押しとなるのではないかという見方もあります。

一方で、ブロックチェーン技術開発に力を入れている中国政府が、改変が困難なブロックチェーン特性を活用して、信用できるデータを記録し、「信用システム」構築に導入するのではないかとの見方もあります。

いずれの場合にしろ、ブロックチェーン技術や仮想通貨は、この社会信用システムと共存していくのではないでしょうか。  

大々的な社会実験とも受け止められる、中国の社会信用システム計画ですが、その影響がどのようなものになるのか興味はつきません。 政府関係者が、画期的なテクノロジーを中国社会全般の発展と人々の生活の向上のためにのみ、活用していくことを願ってやみません。

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