Coincheck IEO第2号「フィナンシェトークン(FNCT)」
Coincheck IEO第2号案件となる、フィナンシェトークン(FNCT)のIEOが23年2月21日に開始されました。開始初日からわずか1時間で調達目標金額である10億6600万円を突破していますが、FNCTの購入申し込みは3月7日まで受け付けています。
その後は、3月7日に行われる抽選結果に基づいて、当選者にFNCTが付与され、3月16日には、暗号資産(仮想通貨)交換業者Coincheckの「取引所」への上場、及び入出金が可能になる予定です。
今回、株式会社フィナンシェにインタビューさせて頂きました。本稿では、フィナンシェトークン(FNCT)のIEOについて解説します。
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IEOとは
IEO(Initial Exchange Offering)とは、デジタルトークンの発行を通じて行う資金調達手段の一種です。2018年頃まで主流だったICO(Initial Coin Offering)とは異なり、暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)による審査・サポートを通じてプロジェクトが選出されているため信頼性が高く、トークンのマーケティング・販売・上場まで幅広くバックアップされます。
FiNANCiE(フィナンシェ)とは
株式会社フィナンシェが運営しているFiNANCiEは、スポーツクラブやクリエイターが、サポーターと共に夢や目標を実現するためのトークン発行型クラウドファンディングとコミュニティを提供するプラットフォームです。
プロサッカー選手の本田圭佑氏や長友佑都氏は、FiNANCiEのポリシーに賛同し、アドバイザー及び投資家としてプロジェクト設立当初から携わってきました。
FiNANCiE上では、スポーツクラブやクリエイターは「オーナー」としてコミュニティトークン(CT)を発行します。CTを購入したファンは「サポーター」としてコミュニティの一員となり、オーナーから限定特典(オフ会参加・限定グッズなど)を受ける権利を得ます。
FiNANCiEの最大の特徴は、CTを中心とするトークンエコノミーが形成されることにあり、サポーターに対して継続的にメリットが提供される仕組みになっていることです。
これまでクリエイターやアーティスト、地域文化等を支援する方法としては、購入型クラウドファンディングが知られています。集めた資金で実現した商品やサービスを、リターンとして出資者に提供しています。
FiNANCiEは商品ではなくトークンを取り入れることで、初期から応援していたサポーターにとってメリットが生まれるように設計されています。
CTはFiNANCiE内の二次市場(流通市場)で売買できるため、コミュニティが活性化して拡大するほど、トークンの価値が変動し上昇する可能性があります。オーナーにとっても、CTの二次市場の取引手数料から成長資金を得られるスキームとなっています。
これらの特性によりFiNANCiEは、プロジェクトの熱心なファンだけでなく、成長プロセスへの参加自体を楽しむ人々や投資家層が組み合わさり、各コミュニティの経済圏をさらに拡大させるプラットフォームとして機能します。
主な実績
2019年3月にオープンβ版をリリースしたFiNANCiEでは、2021年1月に湘南ベルマーレが国内初のプロサッカークラブトークンを発行しました。これを皮切りに、スポーツに注力することで急成長を遂げています。
2022年12月時点で、サッカー、野球及びバスケットボール等のスポーツチームによるフィナンシェ内でのトークン発行事例は86件に上り、ユーザー規模は8万人を超えています。一次市場(発行市場)、二次市場(流通市場)の市場規模は合計25.2億円となっています。
その後FiNANCiEはエンタメ、地域創生分野へと拡大。仮想都市「神椿市」のメタバースを共創するWeb3コミュニティ「KAMITSUBAKI DAO」はFiNANCiE史上で最高額となる1億3,573万円を調達しました。
また、静岡県三島市で関係人口創出を目指す「三島ウイスキープロジェクト」は、サポーターを“交流市民”と位置づけ、限定のウイスキー購入権を配布しています。同プロジェクトは、内閣府の「関係人口」創出・拡大のためのモデル事業に採択されています。
現在、株式会社フィナンシェは、FiNANCiE事業に加えて、NFT企画・発行・販売事業を提供。CTを発行するオーナーの付加価値向上とコミュニティ活性化支援も行っています。
例えば、日本初のエンタメDAOとして「SUPER SAPIENSS」は世界市場で戦える映画制作に挑むプロジェクトです。SUPER SAPIENSSは22年12月にFiNANCiEにて独自のNFTを4,200個販売しました。
フィナンシェはまた、Coincheck IEOでFNCTの販売を実現させたノウハウを活かし、各プロジェクトの国内拡大や世界展開を視野に入れたIEO支援事業にも進出。FiNANCiEのロードマップとしては、2023年後半にも海外進出を計画しています。
フィナンシェトークン(FNCT)とは
フィナンシェトークン(以下「FNCT」)は、イーサリアムブロックチェーン上で発行される暗号資産(仮想通貨)です。FiNANCiEを利用して発行された各オーナー(個人、クラブ、プロジェクト)のコミュニティトークン(CT)の横串を通す役割を担い、シナジー効果を生むための機能が設けられています。
FNCTの機能(ユーティリティ)は主に以下6項目に大別されます。
- ステーキング(dPoS)/ガバナンス(投票):FNCTステーキング量に応じた投票権
- BuyBack&Burn:収益の一部を使って定期的に市場でFNCTを購入、バーンする
- コミュニティトークンホールディング:FiNANCiEにおいて成長・活発なコミュニティにFNCTを配布、そのコミュニティが発行するCTの長期保有者に還元される
- コミュニティドネーション(寄付) :保有するFNCTを特定のコミュニティに寄付できる
- グレード特典(保有数に応じた特典):FNCT保有数に応じてグレード特典(FiNANCiEアプリにおける決済時の優遇)を受け取る
- CT購入(消費):初回販売のCT購入に使用可能
特に、コミュニティトークンホールディングは、CT保有者にメリットを還元する仕組みであり、FiNANCiEの特徴を活かした機能となっています。
FiNANCiEでは、各CTのユーザー、価格、ボリューム、投票状況に応じた「スコア」に基づいて、コミュニティランキングを管理しており、今後は定期的にランキング上位のコミュニティに対してFNCTを付与していきます。FNCTを受け取ったコミュニティオーナーは、CTのホールディング量に応じて各サポーターに分配する設計です。
Coincheck IEO 2号案件までの経緯
株式会社フィナンシェはFNCTのIEO構想について、2021年夏にCoincheck IEOを運営するコインチェック株式会社に打診したと言います。
当時は、2021年7月に国内初の事例がCoincheck IEOで実施されたばかり。2023年現在でさえ、FNCTのIEOは国内3例目(Coincheck IEOとしては2号案件)となっており、事例がない中での課題整理、ステークホルダーとの調整作業は困難を極めた模様です。
フィナンシェの代表取締役CEOの國光宏尚氏によると、BtoBtoC(B2B2C)であるFiNANCiEの事業形態を踏まえ、プロジェクトのサポーターへの説明責任を明確にするためにも国内での法令遵守はマストでした。
厳しい審査体制を擁すコインチェックとの協議の中で、「IPOではなくフィナンシェトークン(FNCT)で資金調達を行う理由」がより明確にされ、FNCTのユーティリティが強化されました。
また、FiNANCiEは、Web3の重要要素の一つ「DAO(分散型自律組織)」の概念を取り入れており、規制に適した形で運営していく方針です。
一方、コインチェック常務執行役員天羽健介氏は、Web3(分散型ウェブ)の構成要素を使って価値の民主化を推進するFiNANCiEのコンセプト、そしてブロックチェーン技術を活かしたトークンユーティリティに賛同して、IEO支援を決めたといいます。
両社は1年半に及ぶ協議を通して、利用者の保護、様々なガバナンス・コンプライアンス体制の構築対策を含む環境整備、時にはトークン設計に踏み込み、入念に調整を重ねてきました。
コインチェックは暗号資産交換業とNFT取引所(Coincheck NFT)を事業領域としていることから、今後は両社のシナジー効果を生む取り組みも期待されています。
インタビュー内容
以下、インタビュー内容です。
当初からIEO前提のトークンエコノミクスを設計していたのか
暗号資産を発行することはFiNANCiEの構想段階から考えてきました。トークンエコノミクスはIEOの審査過程で多少の変更はあったものの、国内取引所に上場することを前提としてではなく、FiNANCiEがビジョンに掲げる「10億人の挑戦を応援するクリエイターエコノミー」を実現するためにはどのような役割があったらいいのかという視点で設計しました。
ロードマップにある「国内エコシステム拡充」に向けて、どのようなマーケティングを考えているか
FiNANCiEは、スポーツ分野での活用が進み、現在はエンタメや地域創生の分野にカテゴリを広げています。
これらの分野にCT(FiNANCiE内で使えるコミュニティトークンです。暗号資産ではありません。)やNFT企画支援事業、IEO支援事業を掛け合わせ、FiNANCiEのエコシステムを拡大していきたいと考えています。
海外進出について、SECが規制強化する中、米証券法にどのように準拠していくか
現在米国の弁護士事務所とFNCTのユーティリティが米国においてどのように解釈されるか検討を重ねております。
FNCTの6つのユーティリティについてどのような経済循環をイメージしているか
ホワイトペーパーにも記載しているのですが、FNCTはFiNANCiEのプラットフォームトークンとして、スポーツチームやクリエイターのコミュニティを活性化するサポーターへの更なるメリットを提供することを目的に設計・開発されています。
FiNANCiEの価値を下支えし、コミュニティを活性化する人が増えるほどFNCTの価値が上がり、それをFNCT保有者に還元できるエコシステムを目指しています。
独自チェーン(FNBC)はどのようなメリットを見込んでいるか
FNCTがEthereumやPolygon等の外部プラットフォーム上で流通することは、当該プラットフォームのネットワークの広がりに乗じて、多くの経済圏・ユーザーにアプローチできるメリットがある一方で、当該プラットフォームの仕様に左右されたり、他サービスによる混雑の影響を受けたり、ガス代を払い続けなくてはならないデメリットがあります。
独自チェーンを開発することは、これらのデメリットを克服することを目的としています。そして、今後、日進月歩で進化・変容するチェーンに求められる機能も見極め、実装していくことでさらなるメリットを提供できるようにしていくことをイメージしています。
FNCTのユーティリティとして「コミュニティドネーション」を盛り込んだ経緯は
フィナンシェ自体が、「スポーツチームやクリエイター」と「サポーター」が共創して、コミュニティを発展させていくことを目指しているプラットフォームであることから、FNCTもその共創のツールとして活用を推進したいと考えています。そういった経緯でコミュニティドネーションというユーティリティを盛り込みました。