- 「仮想通貨取引所レポート」に見るNY当局のビットコインETFに対する消極姿勢を分析
- 先日のニューヨーク州検事総長事務局(OAG)の調査報告書は、ビットコインETFの認可に期待する投資家らの期待に水を差すものだった。報告書が挙げるのが「市場操作の懸念と仮想通貨取引所側の対策の有無」。実は、世界に点在する現金取引市場のリスク対策を仮想通貨取引所に求める構図が明らかになった。
- シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とは
- 米国シカゴにある商品先物と金融先物の取引所。元々は非営利の民間組織だったが、2008年8月に同取引所CME Group Inc.の傘下となった。金利/株価指数/為替/畜産物/不動産/天候デリバティブの先物取引とオプション取引に加え、2017年12月よりビットコイン先物取引を扱っている。
- シカゴ・オプション取引所(CBOE)とは
- CME同様にシカゴにあるデリバティブ(金融派生商品)の取引所。シカゴ商品取引所(CBOT)を母体とする。個別銘柄株オプション/株価指数オプション/金利オプションなど様々なオプション商品を取り扱う。2018年7月にSECに対しビットコインETFの申請書を提出、2018年9月時点で未承認だが有力視する声が強い。
Krakenのほか、CMEと提携する2取引所もやり玉に
「現状、市場操作に適切に対処出来ない仮想通貨取引所が複数存在する」と断じた今回のニューヨーク州検事総長事務局(OAG)によるドラフト報告書は、連邦当局がビットコインETF取引を近く認可するのではないかと考える投資家にとって、苦い内容となりました。
米国証券取引委員会(SEC)のジェイ・クレイトン議長によると、ビットコインは、連邦法に定める証券に該当しません。
にもかかわらず、報告書に「投資家に取引機会を提供する」としてリストアップされた取引所のファンドは、証券(=SECの範疇内で認可される商品)ということになるのでしょうか。
これまでに複数のビットコインETFの事業化申請者が、現物のBTCによってその配当が裏付けられるファンドを立ち上げようとしてきました。
一方、大半のアナリストは、ビットコインの将来を握るのは、すでに米商品先物取引委員会(CFTC)の規制下にある仮想通貨ETF商品で、かつSECから最初に認可を受けるものだと考えています。
すでに規制下にあるビットコイン先物取引所では
現在米国内では、ビットコイン取引の「先物」の姿を、すでに規制下にある2つの取引所、具体的にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とシカゴ・オプション取引所(CBOE)に見ることが出来ます。
このうちCBOEは、仮想通貨商品の取引を行う米国初のマーケットであり、CMEは初のマーケットではありませんが、その1日の取引量は相当の規模に上り、また、幅広い取引市場――現金取引市場を含む――から価格データを入手して基礎情報としています。
OAGの報告書が切り込むのはまさにここです。
5ヶ月に及ぶ調査結果を取りまとめ、先日発行された報告書は、OMGが対象13取引所の運営調査を行うにあたって「取引所としてとりわけ市場操作に十分な対処が出来るか」に着目したことを示しています。
ブルームバーグのMatthew Leising記者によれば、OAGが「問題あり」と判定した根拠が、CMEの先物契約に価格データを提供する3仮想通貨取引所のポリシーでした。
やり玉に挙げられた3取引所
まず第一がKrakenです。
パウエルCEOが市場操作に関し「仮想通貨トレーダーには問題にはならない」と公然と反論したことが、OAGの逆鱗に触れた格好になりました。
残りの2社、BitstampとitBitは、市場操作防止策を公式なポリシーとして定めていないとします。
仮想通貨業界を「本格的な監査機能が備わっていない」と批判
CBOEの価格データはGeminiが独占的に提供しています。GeminiはこれまでNasdaqと提携して、その市場調査ツールをプラットフォームに活用してきた経緯があります。
しかし、CBOEの先物契約に依拠したビットコインETFが、それゆえSECの承認を得なければならないとしたら、別の話でしょう。
Gemini自体に市場操作が起こり得ないとしても、世界中には様々な現金取引市場が存在し、そこで違法な取引が起こり市場価格に影響が及ぶ可能性があるからです。
報告書の主張
これに対しOAGの報告書は、
「仮想通貨業界には未だ、昔ながらの取引所さながら、疑わしい取引活動を検出し禁止するための本格的な監査機能が備わっていない。
仮想通貨取引所は、そうした活動を初手で察知しない限り、顧客を市場操作から守るための対策を打つことが出来ない。今回OAGが行った調査では、複数の取引所が、取引所やプラットフォームが2箇所以上になった場合、市場操作が疑われる活動が行われた場合の検出や対処が極めて困難と回答した。
もしそうだとしたら、どのような取引所であれ、不正活動を取り締まる活動の一貫として規制を伴わざるを得ない」
と主張します。
「クリプト・ママ」は
SECのコミッショナー、ヘスター・ピアース氏(「クリプト・ママ」)は、OAGがETFという商品の性質それ自体ではなく、ビットコインの現金市場に潜在する懸念をやり玉に挙げてビットコインETFの認可申請を却下してきたことに対し、絶えず批判的な姿勢を示してきました。
ピアース氏は、SECが本体の権限を超えようとする姿勢の表れであるとも述べています。
それでも、SECの最近の規制から考えると、ピアース氏のような意見は少数派です。
SECには、昔ながらの金融機関がリテール投資家にアプローチしやすいように仮想通貨商品を形作りたい意向が根強いと見られます。
参考記事: NY Crypto Exchange Report Bearish for Bitcoin ETF Plans