残るは「新技術」領域の準拠
トルコのメフメット・シムシェキ財務大臣は10月31日、「新技術」領域のコンプライアンス準拠によって、金融活動作業部会(FATF)の「グレーリスト」指定国から解除される可能性を示唆。早急に暗号資産(仮想通貨)関連法案を議会に提出する予定だと述べた。
ロイター通信の報道によると、シムシェキ氏は、マネーロンダリング(資金洗浄)対策を審査するFATFの40の勧告のうち、一つを除く全てに準拠していることが、同機関の報告書から明らかになったと発表。「技術的なコンプライアンスの範囲内で残っている唯一の問題は、仮想通貨に関連する作業である」と述べた。
我々は、仮想通貨に関する法案をできるだけ早く議会に提出する予定だ。その後、他の政治的配慮がなければ、トルコがグレーリストに留まる理由はなくなる
グレーリストとは、FATFが資金洗浄・テロ資金供与対策において非協力的な国・地域を特定する「強化モニタリング対象国・地域」のリストの通称。FATFは2021年に、トルコをグレーリストに格下げした。
「行動要請対象の高リスク国・地域」はブラックリストと呼ばれ、2023年10月時点で、北朝鮮とイラン、ミャンマーが指定されている。
なお、シムシェキ氏は、法案の詳細については明らかにしなかった。
FATFとは
「Financial Action Task Force」の略で、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)を監督する国際組織のこと。提示するルールや勧告自体に法的拘束力はないが、加盟国に対して審査を実施し、AMLやCFTにおける非協力国リストを公開するため、大きな影響力を持っている。
▶️仮想通貨用語集
FATFの報告書
FATFは今年7月、「マネーロンダリングとテロ資金供与への対策強化におけるトルコの進展」と題した報告書を公開。「トルコはAML/CFT体制の改善に向けて前向きな措置を講じている」として、6つの勧告の評価を変更した。
報告書によると、現在のトルコの状況は、部分的準拠と評価された勧告(勧告15:新技術)を1件残すのみで、非準拠と評価された勧告は無くなった。これがシムシェキ氏が「唯一のコンプライアンスの課題」として言及した部分だ。
部分的準拠と評価された要因として、仮想通貨サービスプロバイダー(VASP)に関する要件が指摘された。
FATFは報告書で、トルコでは、VASPに対する認可制度がなく、登録要件等も設定されていないことを問題視している。また、VASPには「一般的な予防措置以上のAML/CFT措置を講じる必要がない」ため、同国内で、リスクの高いVASPを効果的に特定することが困難だと指摘した。
仮想通貨規制整備の機運
トルコでは、2024年大統領年次計画の一環として、仮想通貨規制を完成させることを目標にしている。
10月25日に官報で発表された計画によると、仮想通貨の定義を明確にすることで法的地位を確立し、仮想通貨を課税の対象とする。
また、仮想通貨取引所にも新たな規制が導入される。具体的な規制の詳細は明らかにされていないが、仮想通貨取引所を政府の監視下に置き、規制に準拠した方法で運営させることが目的のようだ。
シムシェキ財務大臣の仮想通貨法案提出の意思表示は、このような政府の計画に呼応している。
大手取引所KuCoinのレポートによると、インフレが深刻なトルコでは、成人の半分以上が仮想通貨投資に参加しており、仮想通貨への関心が非常に高い国の一つとなっている。
また、トルコリラの価値暴落でリラ建てビットコインは過去最高値(1,005,557 TRY)を更新している。