CoinPostで今最も読まれています

仮想通貨市場の起爆剤『ビットコインETF』はなぜ承認されないのか:今後の展望と最新状況

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

注目のビットコインETF
低迷の続く仮想通貨市場の中で、起爆剤とされる「ビットコインETF」の進展は数多くの市場関係者から中も注目されている。米国証券取引委員会(SEC)の最新動向や、申請されているETF商品に関する将来の展望をまとめた。
ETFとは
Exchange Traded Fund (上場投資信託)の略でインデックスファンドの一種。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等に連動する運用成果を目指し、東証などの金融商品取引所に上場している投資信託もこの一種。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

今年に入ってからの価格暴落と低迷が続く仮想通貨市場において、その状況を一変させる起爆剤になるのではとの期待から、注視されているビットコインETFの承認問題。

その承認可否の権限を握る米証券取引委員会 (SEC)の動向は、逐一、報道されているものの、申請中のETFは何件かあり、混乱しやすいため、ここで改めてその概要と展望をまとめてみた。

ビットコインETF承認が重要視されるのは、次の点を満たすことで、より好ましい投資手段としての需要が高まり、価格の上昇が見込まれることにある。

特に機関投資家の市場への参入が実現することで、巨額の新規資金流入が期待されている。

(1)規制された金融商品の一つとして、従来の証券取引市場での売買が可能になることで、流動性が高まる。

(2)ETFにはカストディ(保管管理)機能が含まれ、秘密鍵の破損、紛失または盗難による財務損失のリスクが大幅に削減される。( 保険等による保障)

しかし現状、ビットコインETFは未だに一つも承認されるまで至っていない。

ビットコインETFが未だ承認されない理由

最大の理由は少ない取引量

その理由として、最終決定済みのビットコインETFの例で見ると、SECは、市場操作のリスクに触れ、証券取引法第6条(b)(5)の要件、つまり、「詐欺行為や不正行為の防止」と「投資家と公共の利益の擁護」のための手段が講じられているかどうかが、証明されていないことにあるとしている。

そして、なぜ証明されていないかとの説明には、アメリカで規制下にあるどの仮想通貨取引所を取っても、取引高が不足していることを挙げ、それが価格操作のリスクに結び付くとしている。

つまり少額な取引量が承認を妨げている最大の要因と明言している。

どの程度の取引量があれば十分なのか、という明確な基準はないものの、規制されていない取引所において価格操作が困難であるかどうかが、一般的なガイドラインとして考えられている。

しかし、ビットコインの場合、その取引量の大半が、アメリカ国外、つまりSECの規制管轄外で行われていることもあり、ETF商品の提供者が、取引所との詐欺監視契約によって、価格操作を未然に防ぐことは困難であり、SECの承認要件を満たすことは難しいとも言える。

その一方、貴金属などの商品(コモディティ)や原油はビットコインと類似した問題がある資産クラスとして頻繁に比べられる。

これらの資産もビットコインと同様、アメリカ国外における市場が大きいが、ビットコインとの大きな違いとして市場の成熟度が挙げられる。

例えば、既に承認され取引されているビットコイン先物と、金先物の一日の取引高を比べると、ビットコインはその約0.3%にしか満たない。

出典:CME Research Group

出典:CME Research Group

否めない潜在的な不正の可能性

さらに、不十分な取引量とともに、SECは、ビットコイン先物市場であるCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)とCBOE(シカゴオプション取引所)の取引履歴が、潜在的な不正があるかどうか判断するには、まだ十分とは言えないことに言及している。

しかし裏を返せば、上述した先物市場が成熟すれば、CMEまたはCBOEベースのビットコイン ETF承認への可能性は高まるとも言えるだろう。

とはいうものの、金融派生商品は、その基盤となる現物市場の状況に大きく影響を受けるため、SECはデリバティブをベースにしたETFを承認する前に、デリバティブと現物の取引が、十分な取引量を持つ、規制に準拠した取引所において行われることを望んでいるように見受けられる。

ここで問題になるのは、これまでのところ、米国内の現物の仮想通貨取引所(Gemini、Coinbase / Coinbase Pro、itBit、およびKrakenを含む)は、SEC規則に準拠しているとみなされておらず、たとえ、 完全に準拠したとしても、これらの取引所のいずれも、世界のビットコイン取引量の上位5位に入っていないため、ビットコイン市場全体としては、依然として規制されていない取引所からの影響を受けやすいといえる。

そのため、SECがビットコインETF価格の基準として、これらの取引所を承認する前に、連邦政府が取引所を監督する必要性があるかもしれない。 

その一助として、SECは、いくつかの取引所に、「代替取引システム(ATS)」下での申請を行うよう提案したと伝えられている。

そして、規制下にある取引所の取引が十分な量に達した際には、SECの懸念の多くは払拭されるだろう。

徹底されていないKYCとAML

また、いわゆる「クジラ」とも呼ばれる大口投資家や、仮想通貨市場で大きな役割を果たしてきた店頭取引(OTC)市場の存在も、ビットコイン価格操作リスクの要因としてSECにより、懸念されている模様だ。

特にOTC取引の場合、匿名で取引を行うことが可能であるが、最近の発表では、OTC市場取引を行なっているShapeShift社が、KYC(顧客確認)とAML(資金洗浄対策)を行っていく方針を発表している。

アメリカの銀行秘密法の下で、取引所が金融サービス事業としての義務として、取引を行うためには、個人情報の公開が必須となっている為、まさに、Shapeshift社の発表から見られるコンプライアンスへの努力が、SEC承認への布石とも言える。

ビットコインETF:今後の展望

現時点で、最も有力視されているのが、VanEckとSolidX が申請しているETFである。

(承認可否判断は延期されている)

最低投資額を25BTC(本稿執筆時点で約1700万円相当)と設定し、機関投資家を対象としており、価格設定には、OTC複合インデックスを使用しているため、個人投資家への直接のリスクを及ぼすことはなく、また信用度の低い取引所の価格影響の問題も回避している。

このETFが承認されるのは時間の問題だ、というのが多くの業界専門家の認識である。

しかしVanEckとSolidXのETF商品は機関投資家向けで、個人投資家向けのビットコインETFが承認されるまでは、さらに長い期間がかかると予想できる。

そのような中でも、落ち込むのは早い。10月22日に開始が予想されている、機関投資家向けの現物とデリバティブ取引プラットフォーム、SeedCXやニューヨーク証券取引所の親会社であるICE(インターコンチネンタル取引所)が設立を表明しているBakktなど、仮想通貨の投資環境は整いつつあると言える。

まずは、機関投資家の参入を招くことで、取引量や流動性の問題も徐々に改善していき、そうすればSECの懸念事項としている取引量も向上し、いずれはビットコインETFもSECに承認される日が来るのではないか。

CoinPostの関連記事

「ビットコインETF」が重要視される3つの理由|専門家は現状をどの様に見ている?
ビットコインETF上場によって、機関投資家が市場に参入するための環境整備が整う。金ETF上場後には金価格が大幅に上昇したという歴史も。また、投資家保護にも有効。一方、ビットコインETFの上場申請が認可されないと考える専門家も存在する。
Trefis、2018年末までのビットコイン価格を95万円台と予測「価格上昇の鍵の1つはSECによるETF認可」
市場動向予測ソフトウェアのTrefisがビットコインの2018年末までの価格を8,500ドル(約95.2万円)前後と予測。同社は予測要因にビットコインの取引総量と総アクティブユーザー数を重視、また報道によって動かされる人々の心理を加味する。今後の注目要因としてSECによるETC認可の成り行きを挙げた。
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
11:30
BTC上値トライに失敗、目先は下げ渋る展開見込む|bitbankアナリスト寄稿
国内大手取引所bitbankのアナリストが、一時400万円台に乗せるも上値トライに失敗し、ほぼ横ばいで推移している今週のビットコインチャートを図解。今後の展望を読み解く。ビットコイン・オンチェーンデータも掲載。
11:00
週刊まとめ|ETH初期投資家の相次ぐ資産移動に注目集まる
今週は、イーサリアム初期投資家の相次ぐ資産移動について書いた記事が最も多く読まれた。このほか、日本政府が、仮想通貨企業が資金調達を行う際の規制を緩和することなど、一週間分の情報をお届けする。
09/23 土曜日
18:00
米コインベースが過去に欧州FTX買収を検討
米仮想通貨取引所コインベースは破綻したFTXの欧州法人を買収することを検討していた。デリバティブ商品に力を入れていることが背景とみられる。
17:10
グーグルクラウド、BigQueryにアバランチなど11のブロックチェーンを追加
Google Cloudは、ビッグクエリ公開データセットにアバランチ(AVAX)など11の仮想通貨ブロックチェーンを追加したと発表した。
07:40
イーサリアム「Dencun」、2024年に実施か
仮想通貨イーサリアムの開発者は21日に会議を開催。次期アップグレードDencunについて、実施が来年初めになる可能性が示された。テストの開始が遅れる可能性があるという。
09/22 金曜日
16:29
大手VCパラダイム「仮想通貨は新たな惑星のようなもの」 投機需要も欠かせないと見る理由
仮想通貨関連技術に特化した米大手ベンチャーキャピタルParadigmは、「火星のカジノ」と題した論説で、仮想通貨を新しい惑星に例え、投機的な投資も「移住の起動プロセスの一部」として欠かせないものだと主張した。
16:15
セガ三国志大戦IP活用のBCG「Battle of Three Kingdoms」、動画初公開
  三国志大戦のIP活用BCGのチュートリアル動画公開 セガの人気ゲーム『三国志大戦』のIPを活用し、double jump.tokyo株式会社が開発を手がける新作ブロックチェ…
14:00
米FRB「資産のトークン化」に警鐘
米FRBは、トークン化が金融安定性に及ぼす影響について詳細に調査した論文を公開した。トークン化がデジタル資産のエコシステムと伝統的な金融システムとの相互接続を促進し、伝統的な金融システムに新たなリスクをもたらす可能性があると指摘している。
13:40
「Proof of Play」、a16zなどから約50億円調達
ブロックチェーンゲーム企業「Proof of Play」はシードラウンドで約49億円を調達した。プレイヤーが世界構築に参加できるWeb3ゲームを開発していく。
12:17
ビットコイン続落、FOMC後の金融引き締め長期化懸念で日米株安進む
暗号資産(仮想通貨)相場でビットコインが続落した。FOMCにおけるFRBの2024年の金融政策見通し悪化を受け、株安が進んでいる。
12:00
10年ぶりの日銀総裁交代、植田新総裁の金融政策は
2023年4月8日に黒田前総裁が退任し、翌9日より植田新総裁が就任し新体制へ。黒田前総裁は10年間でどのような政策をとり、経済・市場環境にどのような影響を与えたのか、また植田新総裁の現時点で発表されている政策による今後の影響も解説します。
11:45
韓国釜山市がWeb3産業育成に本腰 取引所も設立へ
韓国の釜山市はブロックチェーン育成関連の計画を発表。独自メインネットやデジタル資産取引所、100億円規模の育成ファンドを立ち上げるとしている。
11:00
チューリンガムの親会社クシム、Zaif親会社と経営統合へ
Web3企業チューリンガムの親会社クシムは、カイカエクスチェンジホールディングスと経営統合することを取締役会で決議したと発表した。仮想通貨取引所Zaifの運営企業も連結対象となる予定。
08:45
バイナンス、ETHのガス代を1日で計1億円相当支払い
仮想通貨取引所バイナンスは21日に、イーサリアムのガス代を1日で合計1.2億円相当も支払ったことがわかった。バイナンスの担当者が経緯を説明している。
08:10
恐怖指数上昇 米国株続落、日銀マイナス0.1%金利維持|22日金融短観
本日米NYダウは続落。ナスダックとS&P500は6月以来の安値となった。昨日のFOMC会合では市場の予測通りに金利据え置きが発表されたが、年内1回の追加利上げの可能性が示唆された余波を受けた形だ。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
重要指標
一覧
新着指標
一覧