「制裁は権限超越行為」と判断
米国テキサス州西部地区の地方裁判所は21日、米財務省の外国資産管理局(OFAC)が暗号資産(仮想通貨)ミキシングサービス「Tornado Cash(トルネードキャッシュ)」へ科した制裁は違法だという判決をくだした。
財務省はこの件で、昨年11月にも第5巡回控訴裁判所で敗北していたところだ。二回連続で、裁判所はトルネードキャッシュへの制裁は不適切で、財務省の権限を逸脱していると判断したことになる。このニュースを受け、トルネードキャッシュのTORNは高騰し、前日比2倍高となっている。
今回、テキサス州西部地区地裁は、トルネードキャッシュの変更不可能なスマートコントラクトは、国際緊急経済権限法(IEEPA)の下で「財産」に分類できないと判断した。
このスマートコントラクトは自律的で変更不可能であり、特定の者が所有することはできないため「財産」とはみなされないとした格好だ。オープンソースのブロックチェーン・プロトコルを規制する政府の能力を制限する方針を示したことになる。
IEEPAは1977年に制定された米国連邦法で、大統領に特定の金融取引を規制および禁止する権限を与えるものだ。OFACには、これに基づいて国家安全保障に対する脅威とみられる外国勢力に対し制裁措置を行う権限が付与されている。
この訴訟は、トルネードキャッシュのユーザー6人が原告となり、米財務省とOFAC、イエレン財務長官らを提訴したものだ。原告は、トルネードキャッシュは「技術」であり、それを制裁するのは権限超越行為だと主張していた。
2023年には、地裁が原告の訴えを退けたが、その後2024年11月、控訴裁判所がこの判決を覆している。今回の地裁判断も控訴裁判所と同様の見解を示した。今後、この訴訟は差し戻され、さらなる審理が行われる見込みである。
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ブテリン氏は創設者らの救済呼びかけ
この訴訟では米大手取引所コインベースが原告側を支援している。同取引所のポール・グレウォル最高法務責任者は、今回の判決を受けて「政府が控訴することはもうないだろう」と予測。「勝利はほぼ確実」と意見している。
また、イーサリアム(ETH)共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏も原告を支持しており、「誰も置き去りにしてはならない。次はローマン・ストーム氏とアレクセイ・ペルツェフ氏を助ける番」だと発言した。
No man left behind.@rstormsf and @alex_pertsev next.
— vitalik.eth (@VitalikButerin) January 22, 2025
Tornado Cash itself won an important case today:https://t.co/ceF9IKlllC https://t.co/zg69SmZY8K
ローマン・ストーム氏はトルネードキャッシュの共同創設者で、無許可の送金ビジネスの運営、マネーロンダリングの共謀、制裁回避などの罪で、最大45年の懲役を科される可能性に直面している。ストーム氏は、次のようにXに投稿した。
私は、完全に非管理型の方法でプライベートな仮想通貨取引を可能にするオープンソースコードを書いたことで起訴されている。この起訴は、プライバシーの犯罪化を示すものだ。
私に対する告訴は、ソフトウェア開発自体を犯罪化する恐れがある。
アレクセイ・ペルツェフ氏も、トルネードキャッシュの共同創設者の一人だ。2022年にオランダでマネロン幇助の容疑で逮捕され5年4カ月の実刑判決を受けている。
なお、トランプ米大統領は22日、ダークウェブ「シルクロード」の創設者ロス・ウルブリヒト氏に対して恩赦を発令したところだ。
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