不平等な投資アクセス
米暗号資産(仮想通貨)・株式投資プラットフォーム「ロビンフッド」のウラジミール・テネフCEOは28日、米国の非上場企業への初期投資が適格投資家に限定されている現状を批判し、投資機会の不平等を指摘。仮想通貨技術が「最も包括的な投資革命」をもたらす解決策だと主張した。
テネフ氏は、「投資革命がやってくる:米国はまだ準備が整っていない」と題した米ワシントンポスト紙の論説記事で、評価額1,570億ドル(約24.4兆円)のOpenAIや3,500億ドル(54.4兆円)のSpaceXなどの「世界で最もエキサイティングな企業」は非上場企業であり、これらの企業への投資は「裕福な支援者の小さなサークル」にのみが参加できると指摘。「このようなインサイダーの多くは初期投資の1,000倍以上の利益を手にしているが、一般投資家は参加できない」という公平性に欠ける現状を説明した。
適格投資家とは、純資産100万ドル(1.5億円)以上もしくは年収20万ドル(3,100万円)と定義されており、米国世帯の約80%がプライベート市場から締め出されている。
さらに、米国では年々、新規株式公開(IPO)のハードルが高くなり、企業が株式公開を避ける傾向が強まっていることも問題を悪化させているという。1996年と比較すると米国の上場企業数は約半分に減少しており、一般投資家がアクセス可能な投資機会はさらに狭まっている。
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トークン化が鍵を握る
このような現状を打破する解決策として、テネフ氏はブロックチェーン技術を活用した資産の「トークン化」を推奨している。
トークン化により、現実世界の資産(RWA)を分割して取引することが可能になる。スマホさえあれば、誰でも24時間365日、任意の量でトークン化された資産を取引可能になるため、株式市場に大きな技術的進歩をもたらす。そして、ここから「投資革命」が始まると同氏は主張する。
非上場企業の株式をトークン化することで、個人投資家は、1,000億ドル(15兆円)以上の評価額で上場の可能性がある有望な大手企業に、ライフサイクルの早い段階で投資できるようになるとテネフ氏は語る。
また、同氏は企業側のメリットととして以下を挙げた。
従業員の権利確定や株式保有要件など、非上場企業に対する保護を犠牲にすることなく、グローバルな仮想通貨小売市場を活用し、追加の資本を調達できるようになる。
規制上の障害
しかし、米国ではトークン化の普及を阻む規制上の課題が多く、セキュリティトークン(トークン化された証券)を国内の仮想通貨プラットフォームで取引するための規制が整備されていない。
一方、欧州連合、香港、シンガポール、アブダビなどでは、セキュリティトークンの提供や取引所に関する包括的な規制の枠組みを既に導入しており、米国がこの市場で遅れを取るリスクが高まっている。
しかし、テネフ氏はトランプ大統領の新たな仮想通貨への対応に希望を抱いているようだ。
ドナルド・トランプ大統領が最近発表したデジタル資産作業部会や、SECのマーク・ウエダ委員長代理の下に新設された仮想通貨タスクフォースは、新たな規制の枠組みへの希望を与えてくれる。
必要な3つの改革と投資家保護
テネフ氏は、米国がこの投資革命に乗り遅れないために、以下の3つの改革が必要だと指摘する。
- 適格投資家規則の見直し
富に基づく認定要件は時代遅れ:投資とリスクに関する知識、もしくは自己申告制とすべき - セキュリティトークン登録制度の整備
米国投資家向けに企業によるトークン発行を可能にする制度
=IPOに代わる新たな資金調達手段の提供 - ブローカーディーラーと取引所のガイドライン策定
米国を拠点とするブローカー・ディーラーと取引所(集中型及び分散型)が、トークンを合法的かつ安全に上場できるようにするための明確なガイドラインが必要
スタートアップ企業への投資はリスクが高く、投資が失敗に終わる可能性も多い。一方、成功した場合は大きなリターンを得られる醍醐味があるとテネフ氏は言う。
SECによる仮想通貨技術への適用が遅い理由の一つは、詐欺的なトークンや事業、悪質な行為者からの投資家保護を優先する姿勢にあると考えられるが、情報開示の強化や適切なガードレールを設けることで、これらのリスク管理は可能だと同氏は主張する。
今世紀には、超包括的でカスタマイズ可能な投資の新時代がふさわしい。 世界ではトークン化が進行しており、米国が取り残されることがあってはならない。
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