
トランプ関税が混乱を招く
米金融大手JPモルガンは、トランプ政権の関税政策がもたらす経済的混乱を理由に、2025年の米国および世界経済の景気後退確率を40%から60%に引き上げた。ロイターが5日に報じた。
JPモルガンは、「米国の破壊的な政策」が2025年の世界経済見通しにおける最大のリスクと認識されていると指摘。関税への報復、企業心理の悪化、サプライチェーンの混乱を通じて、その影響が拡大する可能性が高いとみている。
トランプ政権は2日、全ての国を対象に米国輸入品へ一律10%の関税を課す政策を発表。この措置は5日から発効し、さらに数十カ国に対しては「相互関税」として追加関税が9日から適用される予定だ。
JPモルガンの首席エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は、2025年の米国GDP(国内総生産)予測を従来の1.3%成長から大幅に下方修正し、0.3%縮小と予想。関税による経済活動の抑制、企業の投資減少、消費者支出の低下を要因に挙げた。
また、主席エコノミストのブルース・カスマン氏が率いるチームは、この関税引き上げが1968年以来最大の増税に相当すると指摘。政策が継続すれば、米国と世界経済が2025年に景気後退に陥る可能性が高いと強調した。
バークレイズ、バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチ、RBCキャピタル・マーケッツ、UBSグローバル・ウェルス・マネジメントなどの主要調査機関も、トランプ大統領の新たな関税措置が継続した場合、米国経済が年内に景気後退に陥るリスクが高まるとの見方を示している。
景気後退確率の上方修正
ゴールドマンサックスは、経済のファンダメンタルズが過去数年に比べて脆弱であるとして、米国景気後退の確率を20%から35%に引き上げた。同社は、コア・インフレ率(食料品とエネルギーを除く)が年末までに3.5%に達すると予測。これは米連邦準備制度(FRB)の目標2%を1.5ポイント上回る水準だ。
ゴールドマンサックスは、関税引き上げが消費者の購買力を低下させ、消費者危機を招く可能性が高いと警告している。
S&Pグローバルも、景気後退確率を25%から30〜35%に引き上げた。
HSBCのアナリストは、同行の景気後退確率指標に年末までの株式市場後退が40%織り込まれていると述べ、今後景気後退説が勢いを増すと予想している。
利下げへの期待
一方、JPモルガンは「景気後退は不可避ではない」とし、FRBの利下げが経済への打撃を緩和する可能性があると指摘。
フェローリ氏は、FRBが6月に政策金利の引き下げを開始し、2026年1月までの各会合で継続的に利下げを行うと予測。現在の4.25〜4.5%の金利が2.75〜3%まで下がると見込んでいる。
ゴールドマンサックスは、関税発表前の年末までの利下げ回数予想を2回から3回に修正。野村とRBCは、従来の「利下げなし」からそれぞれ1回と3回の利下げを予想する見方に変更した。
FRBの利下げについて、UBSは年内に75〜100ベーシスポイント、シティグループは5月から125ベーシスポイントの利下げを予想している。
関連記事:トランプ関税と中国の報復関税で金融市場が激震、ビットコイン相場にも波及