
コアインフラの継続的な開発
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は4月30日、2025年のイーサリアム開発において自身が注力する分野について明らかにした。同氏が優先事項の第一の柱としているのは、イーサリアムのレイヤー1(L1)のコアインフラの強化と、エコシステム全体のセキュリティとプライバシーの強化だ。
ブテリン氏は、L1開発の長期的な改善の方向性として、シングルスロットファイナリティ、長期的な仮想マシン(VM)の進化、ステートレス化、セキュリティ/レジリエンス/分散化の強化を挙げている。
現在、イーサリアムでは、取引の最終確定(ファイナリティ)に12~19分かかるが、シングルスロットファイナリティ(SSF)は、これをわずか12秒に短縮することを目指す提案だ。これにより、トランザクションの不可逆性が大幅に高速化され、イーサリアムの利便性やユーザー体験の向上が期待される。特に分散型金融(DeFi)での複雑な取引処理の迅速化が見込まれている。
長期的な仮想マシン(VM)の進化に関しては、イーサリアムのスマートコントラクトのコード構造を標準化・最適化する提案「イーサリアム・オブジェクト・フォーマット(Ethereum Object Format)」の導入が提案されている。この提案は、フサカ以降のアップグレードで本格的に議論される予定だ。
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ステートレス化については、ストレージの負担が軽減され、軽量なノードの運営が容易になり、ネットワークの分散化とスケーラビリティの向上が進むことになる。現在はイーサリアムのステート(状態)データの大部分を保存する必要があるため、ノード運営には高いディスク容量要件を満たさなくてはならないという課題がある。
さらに、ブテリン氏は、イーサリアムのエコシステム全体(すべての層=フルスタック)のセキュリティを確保し、オープンソース化とプライバシーを強化することにも集中して取り組む予定だ。
イーサリアムがスタックの上位層(アプリ、ウォレットなど)も含め、高度に安全で、中央集権的な仲介者なしで、プライバシーに配慮した形で利用可能であることを保証する。
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分散型アクセラレーション
2025年の第二の柱としてブテリン氏は、「d/acc」(分散型アクセラレーション)という哲学的・技術的フレームワークに基づく活動にも注力していくとしている。
「d/acc」とは、技術の進歩を加速させつつ、分散化、自由、プライバシー、公共財を重視するアプローチで、ブテリン氏が昨年提唱したものだ。このアプローチは、単なる経済的利益や効率性だけでなく、社会的な回復力や倫理的価値を追求するものである。
2025年の具体的な焦点として、同氏は以下を挙げている。
- 通信ツール、情報、ソーシャル層、メカニズム設計(例:ガバナンス、公共財/オープンソース開発の資金調達)
- 暗号技術、OS、ハードウェア、物理インフラ、生物学的脅威からの防衛
一方、ブテリン氏自身があまり関与しない領域としては、短期的なスケーリング、P2Pおよびブロック構築などの研究分野、確立されたアプリ層(DeFiや決済・貯蓄など)、そしてイーサリアム財団の運営を挙げている。
財団の目標
ブテリン氏は宮口あや理事長とともに、イーサリアム財団のビジョンについてブログを投稿。経営陣とは異なる立場から、イーサリアムが目指すものについて詳述した。
財団は以下の二点を目標として掲げている。
- イーサリアムの価値観に沿った利用の拡大:
イーサリアムの中核的価値観を反映した方法で、直接的または間接的にイーサリアムを利用する人数を増やす。
例:金融アクセスの拡大、分散型ソーシャルメディア、分散型AI - イーサリアムの技術的・社会的インフラの回復力の最大化:
イーサリアムのエコシステムが、困難な状況下でも堅牢で分散化され、価値観に沿った状態を維持する。
例:エコシステムの自律性、価値観の維持、チームの多様性、ネットワークの堅牢性、分散化、積極的なリスク管理
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