
「仮想通貨投資家は対象外」と表明
アラブ首長国連邦(UAE)政府が運営する国営の通信社エミレーツ・ニュースエージェンシー(WAM)は7日、暗号資産(仮想通貨)トンコイン(TON)のステーキングプログラムにより、UAEのゴールデンビザを取得できるとの情報を否定した。
UAEの連邦身分・市民権・税関・港湾保安庁(ICP)、証券商品局(SCA)、仮想通貨規制局(VARA)の共同声明によると、ゴールデンビザは特定の枠組みに基づいて発行されているが、仮想通貨投資家は対象とされていないとしている。
ICPは、ゴールデンビザの資格は「不動産投資家、起業家、優れた才能を持つ人、科学者・専門家、優秀な学生・卒業生、人道支援のパイオニア、最前線で働く人」に限定されていると説明した。
また、VARAもTONが発表したプログラムは、当局の認可も規制も受けていないと指摘している。
当局は、ビザ取得要件に関する正確な情報は政府の公式ウェブサイトを参照し、慎重に行動するよう呼びかけた。また、オンラインで流通している公式な確認が取れていない広告やオファーには関わらないよう警告した。
ステーキングとは
特定の仮想通貨を保有することで、その通貨のブロックチェーンネットワークを管理することに貢献し、対価として報酬を得る仕組み。厳密には、仮想通貨を保有するだけでなく、ネットワーク上に預け入れておく必要がある。銀行口座に法定通貨を貯金し、一定期間後に利子を受け取る仕組みに類似しているといえる。なお、ステーキングは、PoS(Proof of Stake)のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨で行うことができる。
ビザプログラムの発表後、トンコインの価格は一時的に約2.7ドルから10%以上急騰して3ドルに達したが、記事執筆時点では、約2.8ドルで取引されている。
トンコインは、メッセージングサービスTelegram(テレグラム)発の仮想通貨であり、タップ・トゥ・アーン(タップして稼ぐ)ゲーム分野の拡大などを背景に成長してきた。
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当初の発表
Open Network(TON)は5日、10万ドル(約1,450万円)相当のトンコインを3年間ステーキングし、さらに3万5,000ドル(約510万円)の手数料を支払った者に、UAEで10年間有効なゴールデンビザを提供すると発表していた。
ビザオフィスへの書類提出から7週間以内にゴールデンビザを取得できるとしており、UAEに拠点を置くパートナー企業がビザの発行と居住資格の確認を行うと説明している。
また、従来必要だった不動産購入や収入の基準を満たす必要はなく、候補者は厳格な選考プロセスを経て選ばれると述べていた。申請者の配偶者や子、両親などの家族も追加費用なしで同じ10年間のビザを取得できるとしていた。
また、10万ドルのトンコインは完全に申請者の所有物となり、3年後にロックを解除可能、3年間で推定3~4%の年利を獲得できるとも宣伝していたところだ。
エミレーツ・ニュースエージェンシーがこうしたプログラムを否定したが、この件についてTONは現時点で説明を行っていない。そのためプログラムの有効性については不明である。
UAEは仮想通貨に積極的な国として知られており、昨年10月には仮想通貨の譲渡および変換について、課税を免除すると発表した。
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