
ビットコイン購入に向けた株式発行
米ストラテジー社(旧マイクロストラテジー)は21日、新たに優先株500万株の新規株式公開(IPO)を実施する計画を発表した。「変動金利シリーズA永久ストレッチ優先株式(STRC)」は、STRK、STRF、STRDに続く、同社のビットコイン購入戦略を支える4番目の優先株となる。
ストラテジー社は、STRC1株あたり額面100ドル(約14,600円)で500万株を発行し、総額5億ドル(732億円)の資金調達を目指す。変動金利による累積配当が毎月現金で支払われ、未払の配当金には毎月利息が発生する。当初の年利は9%に設定されているが、ストラテジー社は市場金利に連動した一定の制限内で配当率を調整する権利を有する。
STRCは満期なしの永久優先株だが、特定の条件下では自社株の買い戻しが可能なオプションが設定されている。(永久優先株=満期のない優先株で、配当が優先的に支払われる株式。)
同社はこのIPOで調達した資金を「ビットコインの取得および運転資金を含む一般的な事業目的」に使用するとしている。
ストラテジー社がこれまでに発行した優先株とその概要は以下の通り:
- ストライク(STRK)四半期ごと年利8%の固定非累積配当、普通株へ転換可能
- ストライフ(STRF)四半期ごと年利10%の固定累積配当、普通株への転換不可
- ストライド(STRD)四半期ごと年利10%の固定非累積配当、普通株への転換不可
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ビットコインの保有状況
21日の優先株「STRC」のIPO発表に先立ち、ストラテジー社は同日朝、1BTCあたり11万8,940ドル(約1,742万円)、総額7億3,980万ドル(約1,083億円)で、6,220BTCを追加購入したと発表。同社が保有するビットコイン総量は60万7,770BTCに達した。これはビットコイン総供給量の約2.8%にあたる。
マイケル・セイラー会長は、同社がビットコインの購入に充てた費用の総額は約436億1,000万ドル(約6兆3,863億円)で、平均購入価格は7万1,756ドル(約1,050万円)と発表。同社保有するビットコインは帳簿上、総額約281億ドル(約4.1兆円)の含み益となっている。
同社は14日にも、4,225BTCの購入を発表したばかりで、2週連続でビットコインを買い増した。米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、クラスA普通株(MSTR)、永久ストライク優先株(STRK)、永久ストライフ優先株(STRF)、永久ストライド優先株(STRD)の売却益を今回の買収資金に充てた。
同社は、さらなるビットコイン投資拡大のため、2027年までに株式発行と転換社債発行で総額840億ドル(約12兆円)の資金調達を目指す「42/42」計画を掲げている。
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業界の反応
ストラテジー社によるSTRC優先株式発行について、業界では賛否両論の反応が見られる。
ビットコイン関連の著者で、金融イノベーションについて発信しているアダム・リビングストン氏は、STRCを従来の株式でも債券でもない「新たな金融生命体」と表現している。STRCは「法定通貨を高速でビットコインに変換するための仕組み」であり、「利回りを通じて法定通貨を引きつけ、ビットコインへのドルコスト平均投資を可能にする」と評価した。
一方、STRCの構造はピラミッド型システムに酷似しており、高配当を維持するために継続的な新規資本流入に依存していると指摘する声もある。
暗号資産(仮想通貨)アナリストのジャーム・クリプト氏は、「STRCが構築しているのは、特に弱気相場では、普通株主が負担しなければならない膨大な将来の負債だ。」と批判し、たとえMSTRの普通株を譲られたとしても、保有しないと述べた。
ビットコインの長年にわたる批判者として知られるピーター・シフ氏は、STRCは「史上最大の金融のカードの家(不安定な建物)」を築いていると揶揄し、「最終的に崩壊した際には、大惨事が待ち受けている」と警告した。
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