エイプコイン(APE)とは
エイプコイン(APE)は、人気NFTシリーズ「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」に関連する暗号資産として、2022年3月にApeCoin DAOからリリースされた。
BAYCは「NFT元年」とも称される2021年に注目を集めたプロジェクトで、「退屈した猿(Bored Ape)」をモチーフにしたユニークなデザインが特徴的。NFT市場の拡大にも大きく貢献している。
エイプコインはERC-20規格のガバナンストークンであり、ApeCoin DAOを通じてホルダーが意思決定に参加できる仕組みが整っている。
また、Yuga Labsが展開するメタバース「Otherside」では通貨としての役割も担っており、TIME誌や音楽作品の購入など、多彩なユースケースで活用が進んでいる。
BAYCオーナーには特典としてApeCoinのエアドロップも行われた。
さらに2024年10月、エイプチェーン(ApeChain)のメインネットが稼働。ゲームアプリケーションやNFTプロジェクト向けに最適化されたLayer 3ブロックチェーンで、スケーラビリティと低レイテンシーの実現にArbitrum Orbitテクノロジーを採用。
LayerZeroとの連携により、イーサリアム(ETH)やアービトラム(ARB)とのシームレスな運用も可能となっている。
価格
- 現在価格(2024年10月24日時点):1.124ドル(約171円)
- 年初来高値(2024年3月):2.7ドル(約410円)
- 年初来騰落率(YTD):-16%
- 過去最高値(2022年3月):40.86ドル(約6210円)
価格動向
ApeCoin(APE)は2022年の発売初日に急騰し、DAO投票イベントや提携発表の影響で一時的に価格上昇を見せた。4月末にはOpenSeaでのAPE受け入れ発表により25ドル近くまで上昇したが、5月以降は下降トレンドに入り、2022年末にはFTX崩壊の影響で3.64ドルにまで下落した。
2024年10月、ApeChainのローンチにより再び注目を集め、短期間で130%の価格上昇を記録した。現在は1.75ドル前後で取引され、この上昇が「FOMO(乗り遅れ不安)」を引き起こし、多くの投資家の関心を集めている。
[caption id="attachment_568946" align="alignnone" width="640"] 出典:Tradingview[/caption]時価総額|関連銘柄
エイプコイン(APE)の時価総額は2024年10月時点で約7億4800万ドル、「GameFi(ゲーム)」セクターの中ではトップ5に位置する。同セクターで1位のBNBの時価総額は約21億6700万ドル。以降は、FLOKI(FLOKI):約12億7800万ドルが追従する。
主な出来事
- 2024年10月:ApeChainメインネット立ち上げ、クロスチェーンブリッジ発表 エイプコイン急騰
- 2024年4月:BAYCで知られるYuga Labs、事業再編でチームメンバー削減
- 2023年12月:米投資会社タイガー・グローバル、BAYCやOpenSea投資の評価額を大幅下方修正
- 2023年4月:Gucci、Yuga LabsとのコラボNFT「KodaPendant」を発表
- 2022年11月:エイプコイン(APE)、待望のステーキング機能リリースへ
- 2022年11月:ApeCoin DAO独自のNFT電子市場ローンチ BAYC関連
- 2022年10月:米SEC、BAYC制作のYuga Labsを調査か エイプコイン下落
- 2022年8月:グッチ、APEコイン決済に対応
- 2022年5月:イーロン・マスク氏、ツイッタープロフィールをNFTに変更 ApeCoin(APE)が乱高下
- 2022年5月:BAYCのメタバース「Otherside」、NFT売上400億円以上を記録
- 2022年4月:米コインベース、BAYCテーマの映画を制作
- 2022年3月:米TIME誌、ApeCoin支払いに対応
- 2022年3月:BAYC、「ApeCoin」を配布へ コインベースやFTXに上場予定
- 2021年12月:「Bored Ape」がNFTゲーム化へ、Animocaと提携
- 2021年11月:adidas Originalsがメタバースに本腰、Bored Apeとコラボ
- 2021年9月:人気NFT「Bored Ape」、サザビーズの競売で26億円で落札
エコシステム支援組織
ApeCoin DAO:ApeCoin DAOは、エイプコインのガバナンスを担う組織である。グローバルな分散型コミュニティの構築には、中央管理を排したガバナンス体制が不可欠であり、これがエイプコインの成功につながると考えられているため、ApeCoin DAOが設立された。
エイプコイン保有者であれば、誰でもApeCoin DAOのメンバーになることが可能。ApeCoin DAOはエイプコインの運営において意思決定を担い、プロジェクトの資金をどのように配分するか、どのようなパートナーシップを締結していくかなど、様々な判断を行う。
APE Foundation:エイプコインを管理する法人組織。監督者ではなく、ApeCoin DAOの基盤という位置付けである。
時間の経過とともに組織の分散化が進むようになっており、ApeCoin DAOの意思決定を管理したり、日々の運営や経理などの責任を担ったりもしている。APE Foundationは、誰でも参加できる公平なエコシステムを構築し、発展させることを目的としている。
Board:エイプコインには「Board」と呼ばれる役員会があり、APE Foundationの運営者を監督する役割を担う。最初のメンバーの任期は6カ月で、その後は1年ごとにApeCoin DAOの投票によって選出される。
トークンアロケーション
ApeCoin (APE) のトークノミクスは、1億枚の供給上限が設定されている。割り当ては以下の通りである。
[caption id="attachment_568951" align="alignnone" width="640"] 出典:ApeCoin[/caption]1. エコシステムファンドとDAOトレジャリー:62%の割り当て。エコシステム全体の成長を支援するDAOトレジャリーとして管理され、BAYCやMAYCのNFT保有者にエアドロップとして配布される。
2. 将来のプロジェクト支援:14%の割り当て。エコシステム内の新規プロジェクトのインセンティブや拡張に活用される。
3. Yuga Labsと設立者への配分:16%の割り当て。Yuga Labsとその設立者に対しての配分が含まれ、6.25%はJane Goodall財団などの慈善団体に寄付される。
4. DAO貢献者:8%の割り当て。プロトコルの初期貢献者へ配分される。
ロックされたトークンは、2022年3月17日の発売日から48か月間にわたり、所定のロック解除スケジュールに従って段階的に解除されている。
APEはERC-20トークンであり、DAOガバナンス、エコシステム内での支払い、イベントやゲームへのアクセス権として機能する。
また、外部プロジェクトでのユーティリティトークンとしても利用され、Animoca Brandsの「Benji Bananas」などでプレイ・トゥ・アーン型の報酬を得る手段としても活用されている。
Total Value Locked(TVL)
Total Value Locked(TVL)は、DeFi(分散型金融)プラットフォームやプロトコルの価値を評価するための重要な指標の一つ。2024年10月時点、エイプチェーンのTVLは、1146万ドル。プロトコル別のTVLトップ3は以下の通り。
- Camelot(9600万ドル):Arbitrumエコシステムにおけるネイティブ分散型取引所(DEX)であるCamelotは、ApeChainを含む複数のArbitrum Orbitチェーンをサポートすることでその範囲を拡大している。CamelotはApeChainに対して流動性や取引インフラを提供し、ApeChainが目指すゲームやNFTエコシステムの強化に貢献している。
- Saru(5万7000ドル):Saruは、ApeChain上で運用されるネイティブのDEXで、Sushi Labsがその開発を手がけている。このプラットフォームでは、トークンのスワップや流動性提供が可能で、ApeCoinエコシステムの成長を支える重要な役割を果たしている。Ssruは、ApeChain内でのトランザクションを促進し、ユーザーに多様な取引機会を提供する基盤となっている。
- ZenoLend(5700ドル):ZenoLendは、暗号資産を安全かつ効率的に貸し借りできる分散型のレンディングプロトコル。ユーザーは暗号資産を担保に供給することで利息を得たり、借りたりすることが可能。透明な流動性を提供し、効率性とセキュリティを重視した設計により、ユーザーが分散型金融(DeFi)に簡単に参加できる環境を整えている。
出資している主なVC
- 資金調達総額:約4.5億ドル
- 大規模な投資ラウンド:(2022年3月、エクイティラウンド)
- リードインベスター:a16z
- フォロー投資家:Animoca Brands、The Sandbox、FTX、MoonPayなど
また、Yuga LabsがローンチしたNFTであるBored Ape Yacht Club(BAYC)は、マドンナ、ジャスティン・ビーバー、エミネム、パリスヒルトンなどのセレブリティも所有。BAYCのフロアプライスは22年4月29日、OpenSeaで過去最高値152 ETH(約6,000万円)に達した。
2024年には、ApeCoin VenturesがAnimoca Venturesと提携し、1:1の出資マッチングで1,000万ドルのベンチャーファンドを設立。この資金は、Web3スタートアップやApeCoinエコシステムを拡大するプロジェクトへの投資に使われている。
エイプコインの将来性
ロードマップ
エイプコインとエイプチェーンの2024年ロードマップ「Blueprint」は、次の3つの柱を中心に構成される。
1. エコシステム拡大と技術的進化
2024年9月に立ち上げられたポータル「Spotlight」により、ユーザーが新しいdApps(分散型アプリ)を容易に発見・利用できる。Halliday、Decent、Privyとの提携によりフィアットオンランプやアカウント抽象化機能が提供され、Web3初心者でもスムーズに参加できる環境が整備されている。これにより、エイプコインの利便性と価値が向上する。
2. 開発者向けツールと競争促進
Reboot ProtocolやNative Yieldなどのツールにより、賭けやゲーミフィケーション要素が導入され、ユーザーが楽しみながらDeFi体験を得られる環境が整備されている。
3. 配信と採用拡大の戦略「Gasoline」
BAPEなどの世界的ブランドとの提携を通じ、メタバース「Otherside」の仮想空間でのNFT売買が可能となる。エイプチェーンはWeb3消費体験の新たなフロンティアとしての役割を果たす予定である。
期待される今後の動向
エコシステムの拡大と技術進化
エイプチェーンはアービトラムのLayer3上に構築され、LayerZeroやStargate Financeの技術により、ETHやUSDCなどのトークンをシームレスに運用可能なクロスチェーン流動性を実現。自動ステーキングや利回り機能で、資産管理がより便利になっている。
メタバース「Otherside」の発展
2024年8月、Yuga Labsがエイプチェーン上でOthersideメタバースの開発キットを公開。開発者とユーザーが独自の体験を構築できる環境が整い、エイプチェーンのユースケースがメタバース内で広がっている。
「The Workshop」によるプロダクト開発の加速
Yuga Labsの「The Workshop」は8〜12週間のサイクルで新しいプロダクトを迅速に展開。エイプチェーンエコシステムの多様性を高め、競争力を維持している。
投資リスク、懸念材料
エイプコインはNFT市場やメタバースの成長に依存しているため、これらの市場が低迷した場合、価値が下落するリスクが指摘されている。
特に、Yuga Labsが展開するメタバース「Otherside」は、初期リリース時に高額なガス代やトラフィック問題に直面した経緯があり、これに対しユーザーから透明性と責任ある対応が求められた。これを受けて2024年2月、共同創設者のGreg Solano氏がCEOに復帰し、透明性を重視したコミュニケーションと迅速な対応の強化に着手している。
また、エイプチェーンは価格の急速な変動が過熱感を生む可能性があり、市場の安定性を保つための継続的な取り組みが求められている。今後の成長に向けて、こうしたリスクへの対策が鍵となるだろう。
APEへの投資に(PR)
ユースケース
BAYCと提携してP2Eゲームを開発するWeb3.0大手のアニモカブランズは22年3月17日、ブロックチェーンゲーム「Benji Bananas」内で、エイプコインを利用したNFTの購入に対応したことを発表。
また、米老舗ニュースマガジンの「TIME」は3月20日、ユーザーのデジタル版購読で、ApeCoinによる支払いへの対応を開始することを発表している。