NFTの有価証券性
米証券取引委員会(SEC)は、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」などのNFT(非代替性トークン)コレクションを手掛けるYuga Labsを調査していることがわかった。情報筋の話としてブルームバーグが報じた。
Yuga Labsが手がけるNFTの販売が、株式の販売に似ており、証券法が適用されるかを調査している模様。一方で、まだ調査は始まったばかりで、現時点では告訴に発展するような段階ではないという。
NFTとは
「Non-Fungible Token」の略で、代替不可能で固有の価値を持つデジタルトークンのこと。アートやゲーム、各種証明書など幅広く技術が活用されている。NFTの中には「フラクショナルNFT」と呼ばれ、1つのNFTを分割して複数の人で少しずつ所有できるようにするものも開発されている。
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BAYCは、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のブロックチェーン上で発行されるNFTで、プロフィール画像向けにデザインされた1万点のサルの肖像。BAYCはメンバーカードの役割を果たし、所有者はメンバー限定の様々な特典を受けることができる。
また、SECはエイプコイン(APE)についても調査を行なっているという。エイプコインは、BAYCの所有者らにエアドロップ(無料配布)もされた仮想通貨。エコシステム内の支払いに利用されるほか、保有者にゲームなどへのアクセス権を付与したり、開発者にエコシステムへの参加を促すためのツールとして利用したり、ガバナンストークンとして活用したりされる。
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SECは、NFTやエイプコインの配布が、株式の発行に似ていると判断し、証券法が適用されるべきかを調査している模様。有価証券であれば事前にSECに登録し、所定の情報開示も行う必要があった。
Yuga Labsはブルームバーグに対し、以下のようにコメントしている。
政策立案者や規制当局がWeb3という新しい領域を調査するのは、よく知られていること。我々は、急成長するエコシステムの定義や未来のために、規制当局らと協力していきたい。
業界のリーダーとして、どんな調査にも協力する。
なお、エイプコインの初期発行分はYuga Labsにも配分されていたが、仮想通貨の運営を行なっているのは「ApeCoin DAO」である。
今回のブルームバーグの記事が公開されたのは、日本時間12日の午前1時25分。エイプコインの価格は、この時間を境に下落しており、本記事執筆時点で前日比9.6%安となった。
SECの動向
米国ではデジタル資産に対する規制機関の所管は明確になっていないが、有価証券に該当すると判断したものについては、SECは取り締まりを継続している。
今年3月には、SECがNFTプロジェクトの有価証券性を調査していることがわかっていた。この時SECは、複数のプロジェクトに召喚状を発令した模様。アートやコレクティブルをNFT化して販売する行為が、証券法に該当する可能性があるとして調査を開始したという。
Yuga Labsが調査を受けている場合、この時の動きが現在も継続しているとみられる。