- Mt.Gox事件の背景について
- 4年前ハッキング被害で話題になったMt.Goxのあまり知られていない裏話や開発の経緯についてお聞きしました。
- 『反復プロセス』について
- 仮想通貨のRippleやStellarだけでなくeDonkey、Mt.Goxなど数々の画期的なプラットフォームを開発したMcCaleb氏から繰り返し続ける事の必要性を教えられました。
- Stellar(ステラ)とは
- Stellarは2014年Jed McCaleb氏と”stellar”(英語で『星のように素晴らしい』)な開発チームによって作られた仮想通貨です。送金や決済を可能にすることを目指しており、低コストかつ高速、カスタマイズ機能があり、分散型取引所を経営でき、セキュリティー機能も搭載されています。
お忙しい中、インタビューにご協力頂いたJed McCaleb氏とStellar Development Foundationの方々に御礼申し上げます。
Stellarとは
Stellarは2014年Jed McCaleb氏と”stellar”(英語で『星のように素晴らしい』)な開発チームによって作られた仮想通貨です。
Rippleと同様に国境を超えた送金や決済を可能にすることを目指していますが、リップルは銀行を、ステラは送金会社を主なターゲットとしています。
低コストかつ高速、カスタマイズ機能があり、分散型取引所を経営でき、セキュリティー機能も搭載されています。
Jed McCaleb(ジェッド・マケイラブ)氏
仮想通貨業界を代表する技術者・起業家。
UCLA中退後、2000年にeDonkeyを発足し、2011年には当時最大級のビットコイン取引所だったMt. Goxを売却。
その後Rippleを立ち上げた後、2014年からはStellar Development FoundationのCTOに就任。
次世代の送金・決済プラットフォームとしてステラの開発を進めている。
Mt.GoxとRipple
元々P2Pのファイル共有サイトのeDonkeyを立ち上げたりするなど分散化されたシステムや情報へのアクセスの民主化に興味があったMcCaleb氏。
そんな彼のくすみかけていた夢に再び可能性を与えたのがビットコインでした。
ビットコインの事を初めて知った時、決済の問題は解決できないと思っていたので画期的でした。
中央集権化されていない決済は新たな可能性を開きます。
初期から動きを見ていたMcCaleb氏はビットコインを取り巻く環境を観察し勉強する事を目的としてMt.Goxというビットコイン取引所サイトを立ち上げました。
あれほとまで大きくなるとは予想していませんでした。
ですがMt. Goxがビットコインに想像以上の影響を与えていたのにサイトを止める訳には行かなかったので継続する事を決めました。
その決断を下した直後ですね、後に不運な事に無能な経営者である事が最悪の形で発覚したマーク・カルプレス氏にサイトを売却してしまったのは…
その最悪の形というのは言わずと知れた2014年のMt.Gox事件です。
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Mt.Gox事件とは
- 2014年、当時約75%のビットコインが取引されていたビットコイン取引所 Mt. Goxがハッキングされ約110億円分のビットコインが紛失した事件を指す。事件当時のMt. Gox社のCEOだったマーク・カルプレス氏は業務上横領の疑いで逮捕され、Mt. Goxは経営破綻。
この事件はビットコインの価格にも大きな影響を与え、ビットコインに対するマイナスなイメージを多くの日本人の脳裏に刻み込みました。
今でもビットコインの歴史を語る上でMt. Goxのフレーズが出ないことは考えられないほどの社会現象でした。
McCaleb氏は、2011年にMt.Goxのサイトをフランス人のマーク・カルプレス氏に売却しました。
そのため事件当時は、McCaleb氏自身のMt. Goxとの関わりは、会社の少数株主である以外はなかった、との事でした。
その間McCaleb氏は、リップルネットワークの開発者のひとりとして貢献していました。
リップルは後にデジタル資産(仮想通貨)の分野において優れた送金・決済用のネットワークを構築することになります。
リップルは確実にMcCaleb氏のビジョンを引き継いでいます。
しかし、リップルの技術的部分で不足している点やリップル財団のガバナンス体制などに不満を感じたMcCaleb氏は、2014年にリップルを離れ、Stellar(ステラ)という新たな送金ネットワークとXLM(Lumenコイン)という仮想通貨プロジェクトを始めました。
Stellarの優れている点
新たな送金用のネットワークを構築する目的は同じですが、Rippleとステラは似てる様で違います。
リップルが大手銀行との提携を積極的に狙っていますが、ステラは送金会社との提携を優先しています。
おそらく大規模な計画(ブロックチェーン技術と仮想通貨の使用)が実現化するまでは銀行は動かないでしょう。
まず決済会社にステラを使用してもらい、既存の銀行システムを凌駕する送金ネットワークを体験してもらう狙いです。
また今月15日にはIBMと環境テックスタートアップVeridium Labと提携しステラネットワーク上でカーボンクレジット・トークンを発行する計画が発表されました。
これはステラのもう1つ優れている点である、通貨の発行がしやすいという事を証明しているといえるでしょう。
ステラはイーサリアムと違いプログラムを実行するためのガス(手数料)が必要ない上、取引手数料は非常に低くほぼ無視出来る数値です。
反復プロセスの重要性
eDonkeyは2006年に訴訟を避ける為に運営停止を余儀なくされ、Mt. Goxは前述の通りハッキングに会い倒産するなど、幾度となく試練に立ち向かいながらもMcCaleb氏は新技術の挑戦を続けています。
McCaleb氏は数回『iterative process(反復プロセス)』というフレーズを口にしていました。
ソフトウェアは反復的なプロセスなので最初の試みで完璧にできると思うのは愚かだと思います。
幾多のイノベーションのきっかけとなる火花であったとビットコインを賞賛する一方、今後さらに効率的な優れた通貨が出る可能性も否めないと言及しました。
また、McCaleb氏は、自身の取り組んでいるステラについて、現在ネットワーク効果(ユーザーが増えるに連れてネットワークの価値が高まりユーザーへの利便がさらに増す現象)を実現するまで、あと少しのところにきていると述べました。
ステラはユーザーに『利用してください』と営業をかけるレベルとネットワークの利点により自然とユーザーが集まるレベルの中間地点にいます。
しかしネットワークがそのレベルに到達するまでが大変なのです。
インターネットと同等レベルの送金プロトコルとなるべく構築されたステラ。
国境を越える送金・決済のネットワーク環境の整備と拡大を目指すMcCaleb氏の挑戦は続きます。
まとめ
筆者は以前リップルのCTOだったStefan Thomas氏にインタビューさせていただきましたが、興味深かったのは競合に関して似た様な発言をしていたということです。
Thomas氏もMcCaleb氏と同様に既存のSWIFTやAmerican Express、Western Unionなどの送金会社を競合(ライバル)としてではなく将来的なパートナー企業と捉えています。
それどころか、リップルはそのうち三社とすでに提携を結んでいます。
両社の視野はおそらくリップルとステラを立ち上げたMcCaleb氏の影響が少なからずあるのではないでしょうか。