- Mastercardとブロックチェーン
- クレジットカード業界2位の米Mastercard社が、ブロックチェーンネットワーク上で「匿名トランザクションを容易にするシステム」の特許申請を行っていたことが判明した。
- ブロックチェーンとは
- 非中央集権の分散型台帳技術、または分散型ネットワークのこと。基本的に改竄できず信頼性が高いため、仮想通貨のみならず煩雑な契約自動化によるコスト削減など、幅広い用途での活用が期待されている。
マスターカードとブロックチェーン
アメリカに本部を置くクレジットカード世界シェア第2位のMastercard社が、ブロックチェーンネットワーク上で、匿名トランザクションを容易にするシステムの特許申請を行っていたことが判明しました。
6月28日に米国特許商標庁により公開された、同社の特許申請書によると、このシステムは基本的に、各トランザクション毎にカード利用者とマスターカード社、または決済機関によって運営されている中央サーバー用に、そのトランザクション特有の情報に対するハッシュ値を生成、発行します。
ブロックチェーン上では、IDと秘密鍵なしに、その内容を見ることができないようにしたもので、管理と制御は中央サーバーが行います。
中央サーバー上には、一連の秘密データを含む利用者のプロフィール、識別情報等のデータベースが維持されることになります。
マスターカード社によると、カードが実際に使われているシチュエーションでは、通常のブロックチェーンの特性の一つである透明性という点が、この技術普及の妨げになっていることも多いと認識しているということです。
例えば個人の場合、「買い物の内容まで他人に知られたくない」、企業の場合、「取引量の現状を競合他社にリアルタイムで知られることは望まない」など、といった状況が考えられます。
特許申請書の内容
特許申請書には、次のように表現されています。
「トランザクション処理の中で、説明責任と信頼を確保するため、トランザクションの詳細は公開されつつも、匿名性を保ち、他者による個々のトランザクションやその量を追跡不可能にした上、トランザクションを行う当事者の秘密保持の必要性も満たすような、技術的解決策が必要とされている。」
トランザクションの匿名性に重点をおいて開発された仮想通貨には、Monero (XMR) とZcash (ZEC)がありますが、マスターカード社は、ブロックチェーン技術を積極的に導入し、自社でも独自の開発を行う一方、仮想通貨に対しては否定的な態度を崩しておらず、ブロックチェーン上で、法定通貨を使う方向での開発を行っています。
この特許申請内容では、ブロックチェーン上では、それぞれのトランザクションは概ね匿名性を保っているものの、個人情報へアクセスする権利は中央集権的な管理者に残されていることになります。この点において、プライバシー(匿名性)仮想通貨とは異なっています。
しかし、政府などの規制当局の観点からすると、追跡不可能となるプライバシー仮想通貨と違い、不正捜査などの必要に応じて、「匿名性」を覆すことができる点が、好意的に受け止められるかもしれません。
また、完全ではなくとも高いプライバシーが守られることは、一般消費者にとって普段カードを使用する上で、特に問題なく受け入れられる状況になることも予想されます。
マスターカード社は、同社のリサーチ開発部門であるMasterCard Labsを通して、積極的にブロックチェーン技術の実際のビジネスへの応用を開発、推進しているようです。
2016年には、スマートコントラクト言語を含む、独自のブロックチェーンAPIプラットフォームを公開、2017年には、ブロックチェーン技術を適用した決済システムを部分的に導入しています。
ブロックチェーン関連の特許申請を加速
今年に入って、マスターカード社は、相次いでブロックチェーン技術を用いた数多くの特許申請を行っています。
その中には、クーポン認証システムのような日常的なものから、ブロックチェーン上の情報を素早く検知するナビゲーションシステム、中核のクレジットカード業務にに直接結びつく、ユーザーの支払信用証明の譲渡、検索プロセス、さらには、ブロックチェーン上に身元証明データを保存し、検証するシステムなどが含まれ、同社のブロックチェーン技術に対する取り組みの真剣さをうかがい知ることができます。
仮想通貨市場には、直接影響を及ばさないようにも受け取れる、マスターカード社の動きですが、重要なのは、ブロックチェーンが人々が気付かないうちに日常の中に浸透して行くことによって、最終的には、仮想通貨の利用が一般にも受け入れられやすくなる状況に結びつくことなのかもしれません。