2024年1月から、日本では新しいNISA制度が始まります。この新NISAは、現行のNISAと比較して、年間投資額と非課税保有限度額が大幅に拡大され、期間も恒久化されることが特徴です。
つみたて投資枠と成長投資枠に分かれていますが、米国株も投資できる成長投資枠では、年間240万円を運用期間無期限かつ最大1,200万円まで投資が可能となります。
本記事では、新しいNISA制度の詳細や、特に20代から30代の投資者が意識すべき点、実践的な運用例を詳しく解説します。
- 目次
1. 新NISAの概要
NISAは、株式や投資信託から得た利益が非課税になる制度のことです。
新NISAでは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つが導入され、それぞれ年間120万円、240万円までの投資が可能になりました。この変更により、非課税期間が恒久化され、資産形成がより容易になります。
新NISAのもう一つの大きな変更点は、投資枠を再利用できることです。生涯投資枠は、投資元本ベースで管理され、資産を売却しても買い付け時の金額分が翌年に投資枠として復活します。これにより、住宅購入や子どもの進学など、大きな支出が必要な時にも柔軟に資金を運用できます。
例えば、毎月3万円の積立投資を10万円に増額する計画も立てやすくなります。
(出典:金融庁 新しいNISAのポイント)
2. 20-30代が抑えておくべきNISA運用の指針
次は、20代がNISAで意識しておきたい運用方針について解説します。NISAは少額投資できるため、余剰資金が少ない若い世代でも活用しやすいほか、期間の恒久化と運用額の拡充によって、ライフステージの早期から運用を始める利点がより大きくなりました。
1800万円の生涯投資枠を急がずに賢く活用する
20代から30代は、投資信託を利用し、段階的に金融知識や経験を積むことが望ましいです。最初に生活資金を確保し、その後の余剰資金を積立投資に充てることが賢明な戦略と言えます。
新NISA制度では、年間最大360万円(月額30万円程度)まで非課税で投資できますが、20代の理想的な投資額は収入の約15%、月額3万円から4.5万円が目安です。自分が投資に回せる金額を冷静に算出し、計画的に投資を始めましょう。
年間36万円を投資する場合、50年間で合計1,800万円に達します。ライフステージや収入の変化に合わせて、投資金額を徐々に増やしていくことも検討するとよいでしょう。
つみたて投資が基本
まずは、「つみたて投資枠」に充てるのが基本です。特に若年層には、短期売買や投機的な取引を避け、長期間にわたる投資を継続することが重要であり、これは投資の効率を高める上で不可欠です
長期投資の大きな利点の一つは、複利効果です。複利とは、投資により得られた利益を元本に再投資し、さらなる利益を生み出すプロセスです。20代の投資家は、30代や40代よりも長い期間、複利効果を享受できるため、長期投資において特に有利と言えます。
成長投資枠の活かし方
投資できる銘柄 | |
---|---|
成長投資枠 | アクティブ投資信託・ETF・国内株式・海外株式など |
つみたて投資枠 | インデックス投資信託・ETFなど |
NISAの金融商品選択には、それぞれの投資枠に応じたアプローチが重要です。積立投資枠の場合、長期的な視点で分散投資を行うことが求められ、主に低コストのインデックス型投資信託やETFが適しています。これらの商品は、リスクを分散しつつ、安定したリターンを目指す投資家に最適です。
一般的な資産運用のアプローチとして、低コストで市場の平均的なリターンを目指すインデックス型投資信託を基盤とし、より高いリターンを狙うアクティブ型投資信託や個別株への投資を組み合わせる方法があります。このバランスの取れた戦略により、ポートフォリオ全体のパフォーマンスを向上させることが可能です。
さらに、成長投資枠を活用することで、資産成長の加速を目指すことができます。この枠では、様々な国内外の株式やETF、IPOなど、多彩な投資対象にアクセス可能です。また、銘柄の選定やタイミングの判断にも集中でき、一括購入や投資信託の積立、特定の国の株式への定期的な投資など、柔軟な運用が可能です。
最終的には、配当や特典を重視するか、積極的なリターンを追求するか、安定した積立投資を行うかなど、自身の投資スタイルに合った選択を行うことが重要です。それぞれのスタイルに応じた商品を選ぶことで、効果的な資産運用を実現できます。
3. 米国株のメリット・デメリット、銘柄選び
米国株の利点:高収益性と株主への豊富な還元
国際的な株式投資の中で、米国株は特に注目されています。その理由は、米国の持続的な経済成長、イノベーションに強い企業の存在、また少量の株からでも投資が可能である点にあります。
テクノロジー、消費財、エネルギーなど様々な分野で世界をリードする企業群があり、これらは株価の上昇とともに、株主への利益還元も期待できます。特に、過去10年間で見ると、米国の株式市場は他国の市場と比較して高いリターンを達成しています。
米国には、Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft(GAFAM)などの大手企業が存在し、これらは世界経済において重要な役割を果たしてきました。これらの企業は、過去10年間にわたりS&P500指数の構成銘柄として重要な位置を占め、米国株の成長を牽引してきたのです。
そして、今後の10年においても、新たな成長企業を発掘することは投資の魅力の一つです。市場は常に変化しており、次世代の革新的な企業を見つけ出し、その成長の早い段階で投資することは、長期的な視点から見て非常に興味深いアプローチと言えるでしょう。
米国には株主還元を重視する企業が多く、自社株の買い戻しや配当によって投資家へのリターンを提供している場合があります。例えば、アップルは2012年から配当を開始し、翌年には自社株買いを実施して利益を株主に還元しています。分配金が高く自社株買いに積極的な企業への投資は、株主にとって有利な選択肢となる可能性があります。
日本から米国株の配当金を受け取る際は、米国で源泉税が課された後、日本でも課税されます。しかし、NISA口座を利用することで日本国内での課税を回避し、株主還元に焦点を当てた企業の魅力を最大限に引き出すことが可能です。
米国株のデメリット:短期的な元本割れのリスク
米国株に投資する際、短期的な元本割れのリスクは重要な考慮事項です。特に5年程度の短期間では、分散投資を行っても元本割れする可能性があります。NISA口座で損失が発生した場合、損益通算や損失繰り越しの適用ができない点にも注意が必要です。
為替リスクも重要な要素です。例えば、米国株に投資する際の為替レート変動は、損益に大きく影響を与えます。1ドル=150円で購入した10万ドルの株が、1ドル=160円になれば10万円の利益が出ますが、逆に1ドル=140円になれば10万円の損失が生じます。
さらに、米国独自の政治的・市場的な問題が株価に与える影響も考慮する必要があります。2022年には米国株式市場が年間で19.4%の下落を記録しました。
このように、金融政策と株価の間には強い関連性があり、これらの要因が株価に影響を及ぼす可能性があることを理解しておくことが重要です。
仮想通貨テーマで選ぶ米国株
「テーマ投資」とは、特定の製品やサービスに注目し、それを提供する企業に投資する戦略です。仮想通貨市場に精通する投資家は、自身の経験や知識を活かして、米国の仮想通貨関連銘柄を見極めることができます。
現在、仮想通貨市場には、多様なビジネスモデルを持つ企業が参入しています。これには、直接的な仮想通貨事業を行う企業や、デジタルアセットに関連する金融サービスを提供する企業が含まれます。これらの企業の株価は、仮想通貨市場の動向と密接に連動する傾向があります。
仮想通貨関連企業の株式への投資は、税制上のメリットと、仮想通貨市場への直接参入という二重の魅力を持っています。これらの要素は、投資家のポートフォリオ戦略において重要な役割を果たす可能性があります。
主な仮想通貨関連企業の米国上場株リスト
ティッカー・企業名 | 株価(23/12/20) | 時価総額 | 株価収益率 | 事業内容 |
---|---|---|---|---|
Coinbase Global(COIN) | $163.54 | $38.56B | -49.95 | 世界最大規模の仮想通貨取引所を運営。 |
Marathon Digital Holdings(MARA) | $22.77 | $4.89B | -7.4 | 北米有数の仮想通貨マイニング企業。 |
MSTRMicrostrategy | $582.08 | $8.93B | 442.73 | 企業分析ソフトウェア・サービスを世界中に提供。17万BTC強を資産として組み入れた企業として知られる。 |
Riot Platforms(RIOT) | $16.79 | $3.44B | -9.94 | 北米有数の仮想通貨マイニング企業。 |
Block(SQ) | $77.30 | $47.48B | -165.44 | 旧Square。元TwitterのCEOジャック・ドーシー氏が率いるモバイル決済大手。仮想通貨領域へ事業範囲を拡大中。 |
出典:Tip Ranks
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●NISA口座開設におすすめは「SBI証券」
- 1.NISA顧客満足度1位
- 2.米国株式の銘柄数は5,400種類越え
米国ではビットコイン現物ETFの上場承認の可能性が高まっており、仮想通貨市場の今後の成長が強く期待されています。日本国内でのビットコイン現物ETFの提供開始はまだ先の話となる見込みですが、米国株市場への投資を通じて、仮想通貨市場の成長に連動する投資機会を探ることが可能です。
特に注目すべきは、コインベース・グローバル(COIN)やマイクロストラテジー(MSTR)のような企業です。これらの企業は、ビットコインや他の仮想通貨への投資を検討している投資家にとって、優れた代替投資先となり得ます。
仮想通貨関連株はビットコインと高い相関性を持っており、特にBTC/MSTR、BTC/COIN、BTC/RIOTの90日相関係数は近月でほぼ1に近い値を示しています。ただし、ビットコインに特化したマイクロストラテジーや、広範な仮想通貨市場の規制環境の影響を受けるコインベースなど、企業ごとに異なるビジネスモデルと市場環境があります。
仮想通貨関連株の割安・割高を見極める指標
企業固有のビジネスモデルを考慮に入れた上で、株価が割安であるか割高であるかを判断する際には、株価収益率(PER)が重要な指標として用いられます。PERは企業の利益に焦点を当て、株価を1株当たりの当期純利益(EPS)で割ることによって計算されます。同業種内の銘柄と比較することで、PERが高い場合は割高、低い場合は割安と見なされます。赤字の場合、PERはマイナスになります。
例えば、マイクロストラテジー(MSTR)の株価収益率は442.73と非常に高く、同社が保有する大量のビットコイン資産の価値変動がこの数値に影響している可能性があります。一方でCoinbase Global(COIN)の株価収益率は-49.95で、過去の損失がこれに影響しています。
ビットコインや他の仮想通貨の価値が上昇すれば、Coinbaseのような仮想通貨取引所の収益は向上する傾向にあります。これは、マイニング企業にも当てはまります。一部の機関レポートでは、これらの企業の株価が2024年に高騰する可能性を示唆しています。
税制上のメリットも
仮想通貨取引による利益には、「総合課税」という厳しい税制が適用され、税率は最大で「55%」に達することがあります。この厳しい課税環境にある仮想通貨投資家にとって、投資戦略の一部として関連会社の株式への投資が魅力的な選択肢となります。
仮想通貨に関連する企業株式を非課税口座である「NISA口座」を使用して取引することで、条件を満たす取引によって得た利益は課税対象外となり、その利益を全額受け取ることができます。また、仮想通貨投資家は、仮想通貨市場に関する深い知識や経験を持っており、この知識を活かし、競争力を発揮できます。
4. 新NISA成長枠で選ばれるETF
ETF(Exchange-Traded Fund)は、多くの投資家から集めた資金をプールし、資産運用の専門家が様々な金融商品に分散投資することで運用される商品です。その主な特徴は、低い管理費用と、市場動向に応じて自動で資産配分を調整できることです。これにより、投資家は容易に分散投資を行うことが可能になります。
新しいNISA制度には、多数のETFが対象になっています。その手軽さから、投資初心者にも管理がしやすく、多くの人に適しています。特にNISAの成長投資枠では、アクティブ型投資信託の利用も検討する価値があります。
特に注目すべきは、2023年9月に日本で解禁されたアクティブETFです。「アクティブ型投資信託」とは、資産クラス、国、地域、業種、銘柄といった要素を積極的に選択し、市場の平均パフォーマンスを上回る成果を目指す投資信託のことです。
成長が見込まれる産業や企業への投資は、市場の動向を洞察し、適切な選択を行う必要があるため、難易度が高いです。アクティブ型投資信託は、専門知識を持つファンドマネージャーによる洞察に基づいた投資選択を提供します。
SBI証券で取り扱われている投資信託の中から、特に注目に値するものを紹介しましょう。ここでは、月間販売金額の人気ランキングトップ20の中から、NISA成長投資枠に該当するファンドをピックアップしています。
順位 | ファンド名 | ファンドカテゴリー | 勝率 | ファンド レーティング |
直近時点の 3年間リターン |
---|---|---|---|---|---|
1 | NISA成長投資枠野村 世界業種別投資シリーズ (世界半導体株投資) |
国際株式・グローバル・含む日本(F) | 97% | ☆☆☆☆☆ | 34% |
2 | NISA成長投資枠米国製造業株式ファンド | 国際株式・北米(F) | 92% | ☆☆☆☆ | 21% |
3 | NISA成長投資枠米国インフラ関連株式ファンド <為替ヘッジなし> |
国際株式・北米(F) | 64% | ☆☆☆☆ | 22% |
4 | NISA成長投資枠グローバル自動運転関連株式ファンド (為替ヘッジなし) |
国際株式・グローバル・含む日本(F) | 67% | ☆☆☆☆ | 15% |
5 | NISA成長投資枠iTrustエコイノベーション | 国際株式・グローバル・含む日本(F) | 67% | ☆☆☆ | 13% |
(参考) | S&P500 | – | – | – | 23% |
5. 長期・積立・分散投資の重要性
ここまで、新NISAの活用方法として、アグレッシブな「攻める投資」についてご紹介しました。とはいえ、投資初心者の間は、投資のリスクを最小化できる長期・積立・分散投資が基本となる事を覚えておきましょう。まず、それぞれのメリットをまとめました。
投資名 | 長期投資 | 積立投資 | 分散投資 |
---|---|---|---|
メリット | ・リスクを抑えられる ・複利効果を活かせる ・売買コストを抑えられる ・頻繁に値動きを見る必要がない |
・ドルコスト平均法が活かせる※1 ・少額から始められる ・購入タイミングに悩まない |
・不況時にもリスクを抑えられる ・大きな値下がりになりにくい |
長期・積立・分散投資とは、例えるなら「15年以上にわたって、毎月1万円を20〜50銘柄に投資する」といった運用方針です。
- 長期投資:数年〜数十年同じ銘柄を保有すること
- 分散投資:複数の銘柄に投資すること
- 積立投資:決まったタイミングで同じ金額を投資すること
長期の積立投資でドルコスト平均法を活用することにより、短期の価格変動リスクを抑えつつ、さらに資産の分散性を高めることで相場に左右されにくくなります。分散投資を行う際は、ただ闇雲に資産を分散させるのではなく「価格の連動性」を念頭に置いて銘柄を選定してください。
ポートフォリオの商品における値動きの連動性が低ければ、ハイリターンは狙いにくいものの、高い分散効果により全体的な下落のリスクを抑えることができます。一方で値動きの連動性が高い場合、短期間に急落するリスクはありますが、相場が味方すれば大きなリターンを狙えるのです。
連動性を確認しつつ、ご自身のリスク許容度に合わせてバランスよく分散投資しましょう。
7. NISAの特徴を理解して「攻め」の投資戦略を
新しいNISAは、従来に比べて大幅な拡充や恒久化が行われたため、さまざまな戦略を取りやすく、特に若い世代にとってはアグレッシブな投資を行うためにも適した制度になりました。
仮想通貨投資家にとっても、NISAの改善で株式投資や投資信託、ETFなども分散投資の1つとして候補に挙がるでしょう。非課税での投資に魅力を感じたのなら、新NISAの口座開設を検討してみてはいかがでしょうか。
関連:新NISA特集|つみたて投資のメリットや非課税投資枠拡大の魅力、初心者向けの銘柄選びを解説
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