- BTCの急落にクジラの影
- 先日の仮想通貨市場暴落の影に、黎明期からのBTC巨額保有者による大量売却の噂が立ち、SNS上で様々な推測が飛び交っている。クジラの背景に見られる、Mt.Goxやシルクロードの影響とは。
- シルクロードとは
- かつて不正販売闇市を経営していたいわゆる闇サイトの一つ。運営者のロス・ウルブリヒトは2013年秋に逮捕され、その後サイトは閉鎖された。運営当時、取引にはビットコインが使用されていた。
先週、わずか2日間でビットコイン価格は約15%急落しましたが、ネット上では、その周辺に、ある「クジラ」(=大量保有者)の存在が取り沙汰されています。
話題の主役は、2011年に遡るウォレットの保有者です。
この謎の人物は、最大で「111,114BTC」を保有しているとされ、時価総額は最大20億ドル(約2,239億円)に達します。
この大量保有者が、2018年6月末につけたBTCの年初来安値を受けて、保有するコインを精算しようとしていた――そんな噂が、2週間ほど前から米国の大手掲示板RedditやTwitterなどで、過熱気味に流れています。
そしてその「クジラ」の正体には、2014年に破綻した仮想通貨取引所「Mt.Gox」や、さらに時を遡ること2011年に逮捕された闇取引サイト「シルクロード」の創設者「海賊ロバート」の名が挙がっています。
クジラのアドレス
「クジラ」追跡で重要となるのが、ビットコイン・アドレスです。
そのアドレス1933phfhK3ZgFQNLGSDXvqCn32k2buXY8aは――もちろん他のアドレスも――取引を記録するブロックチェーンの分散化されている性質上、誰もが取引履歴を遡ることができます。
ブロックチェーン解析サービスを提供するChainalysisによると、このアドレスに目立った動きがあったのが8月23日から30日の間。
50回に及ぶ取引で、50,500ビットコインの移動がありました。
ブルームバーグの試算では、クジラが動き始める直前、8月22日の終値ベースでこのウォレットには3,200万ドル(約35.8億円)が眠っていたことになります。
「ネット探偵」達の見解は
Redditでは、一体誰が何を目的にしてこの「クジラ」を動かしたのかについて議論が白熱しています。
Chainalysisの上席アナリスト、Kim Grauer氏の観測によると、これまでに出ている主な仮説は以下の通りです。
Chainalysisでは、マネー・ロンダリングの検出支援を目的としたソフトウェアを使って、ビットコイン・アドレスの関係を特定しました。
その結果、今回注目されている一連の取引の約80%が、ある特定のアドレスを相手方としていることが判明しました。
そのアドレスこそが、前出の1933phfhK3ZgFQNLGSDXvqCn32k2buXY8aです。
「浮上と潜水」のサイクル
このアドレスには、目を引く動きがありました。
ビットコイン・コミュニティには、初期からのBTC保有者のウォレットを見守る慣習があります。
代表的な例は、暗号通貨の発案者で未だ匿名のレジェンド的存在、「サトシ・ナカモト」のウォレットであり、今回のウォレットも、それなりの歴史を持つものです。
「海賊ロバート」やMt. Goxと紐づける見方も
Reddit、Twitterやその他の場で見られるネット探偵の中には、このウォレットを、悪名高きシルクロード(SilkRoad)の創始者「海賊ロバート」と結びつける者もいます。
彼もまた、ビットコインの初期保有者の1人でした。
他に名の挙げられている大物が、2014年春に破綻した取引所「Mt.Gox」です。
先週1週間はビットコインの価値が急落しほか、大手取引所ShapeShiftが利用者の個人情報を集める決定を下したことや、ゴールドマン・サックスのビットコイン取引デスク開設中止報道を巡って、オンライン・コミュニティは過熱気味の様相を呈していました。
Chainalysisの解析では、これらの動きと、「クジラ」のビットコイン大量放出が、厳密には同時期の出来事と呼べないことは明らかです。
探偵の独自推理や思惑が飛び交うことはオンライン・コミュニティでは日常茶飯事ですが、クジラの動向には興味が未だ尽きていないと言えるでしょう。
参考記事:Mystery of the $2 Billion Bitcoin Whale That Fueled a Selloff