
アルトコイン市場の活況とリスク
オンチェーン分析企業Glassnodeは12日、最新の暗号資産(仮想通貨)市場レポートで、ビットコイン(BTC)とイーサリアム( ETH)が現在、歴史的に重要な抵抗線に近づいていると指摘した。
イーサリアム価格は上昇が加速し、2021年12月以来の高値となっている。執筆時現在、史上最高値(4,828ドル)まであと3.1%に迫る勢いを見せている。Glassnodeは、イーサリアムは歴史的にアルトコイン全体のパフォーマンスを示す指標として機能してきたが、最近の上昇はリスクカーブのさらに先にある投機的な動きを刺激していると分析している。
主要アルトコイン(イーサリアム、XRP、ソラナ、ドージコイン)の、直近1週間の価格変動率は以下の通りで、7月から8月にかけて好調なパフォーマンスを見せた。
- イーサリアム:+25.5%
- XRP:+16.2%
- ソラナ:+13.6%
- ドージコイン:+25.5%
このようなアルトコインの幅広い上昇の動きは、投資家による投機的な動きが活発化していることを示すとレポートは指摘。ビットコインのドミナンス(時価総額に占める割合)が過去2ヶ月で65%から59%に低下していることも、投資資金がアルトコイン市場に流入していることを裏付けている。
アルトコイン市場の活況により、主要アルトコイン全体における未決済建玉は急増し、市場最高額の470億ドル(約6.9兆円)に達した。このような状況はレバレッジの上昇を浮き彫りにしており、「急激で反射的な価格変動の可能性が高まっている」とGlassnodeは注意を喚起している。
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ビットコインは史上最高値を更新
ビットコインは7月に11万2,000ドルまで下落したが、その後回復し、14日に史上最高値を更新した。
ビットコインの上昇はオンチェーンの強力なファンダメンタルズに支えられていると、Glassnodeは指摘する。
- 流通供給量の95%が含み益: 利益が出ている流通供給量の割合が、調整局面でも堅調に推移。大多数(95%)の投資家が未実現利益の保有を継続。
- 短期保有者の冷静な対応: 7月の下落時でも、新規参入者の実現損失は限定的で、ポジションを維持している。
- 市場の投げ売り圧力は最小限: 保有期間による利益状態を示す指標の分析では、ほとんどの投資家が価格下落時にも利益を維持
これらの指標は、ビットコイン市場が底堅く、投資家の信頼が強固であることを示している。
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注目すべき価格水準
Glassnodeは、イーサリアムとビットコインの次なる価格目標の基準について、具体的な数値を示した。
イーサリアムの次の重要な抵抗線は、アクティブ実現価格(最近取引された資産に限定した平均購入価格)の+1標準偏差である4,700ドル(約68万8,500円)。この水準は、売り圧力が高まり始めることが多いとレポートは解説した。歴史的には、2024年3月の上昇局面では天井となり、2020年から2021年の強気サイクルでは複数回レジスタンスとして機能した。
イーサリアムの今後の展開として、「この水準を明確に上抜ければ、より投機的な局面の始まりを示す可能性があるが、同時に、センチメントが反転した場合には急激な反落のリスクも高まる」とレポートはまとめている。
ビットコインの場合、短期保有者の平均取得価格(+1σ)の12万7,000ドル(約1,860万円)が重要な抵抗線となる。この価格を明確に上抜けた場合、次のターゲットである14万4,000ドル(+2σ:約2,112万円)が視野に入るが、強い売り圧力も予想される。
ボラティリティ予想
レポートでは、オプション市場の価格変動の動向にも言及した。インプライドボラティリティ(IV:市場が予想する価格変動率)は数年ぶりの低水準にあり、トレーダーが近い将来の大きな価格変動を予想していないことを意味すると解説した。
このような状況が続く可能性もあるが、過去の傾向では、こうした静かな相場の後に急激な変動が来ることが多いと指摘。「リスクの再評価」により、混乱を伴う価格急変動が見られたこともあると注意を喚起している。
また、6ヶ月と1ヶ月のIVの比率から、オプショントレーダーが短期よりも長期的な不確実性を大幅に織り込んでいると分析。今後6ヶ月くらいの間に、ボラティリティが大幅に高まることが示唆されている。