ラウル・パルの見解は
ビットコインなど仮想通貨市場が調整局面を色濃くする中、Real Vision創設者でグローバルマクロ投資家のラウル・パル氏は、10月10日に発生した仮想通貨市場の歴史的暴落について、その“後遺症”が現在の市場変動の要因になっているとの見解を示した。
When I distill down October 10th, I get to this…
— Raoul Pal (@RaoulGMI) December 18, 2025
Binance broke ( the worlds largest exchange). The API's shut down for market makers. Everyone got liquidated. Most market makers were not able to backstop liquidity. It spread across exchanges.
Those exchanges that have their…
同氏は「市場操作ではなく、技術的問題への対応の余波だ」と強調している。
世界最大手取引所で技術障害、連鎖的なロスカットへ
10月10日、トランプ大統領による中国への100%関税という予想外の突然の発表は、仮想通貨市場に歴史的な混乱をもたらした。この関税発表は中国のレアアース輸出制限への報復措置として位置づけられ、今年4月の暴落につながった米中貿易摩擦(トランプ関税ショック)の再燃を強く懸念させるものだったからだ。
発表直後からリスクオフの動きが瞬く間に加速し、ビットコインは急落。市場全体にパニック売りが広がった。
しかし、真の混乱はその数時間後に訪れた。専門家によれば、世界最大の仮想通貨取引所バイナンスで、APIとマッチングエンジンに深刻な障害が発生。マーケットメーカーが流動性を提供できなくなり、一部トレーダーは売買注文を実行できず、ポジションを閉じることも不可能な状態に陥った。
APIとは、取引所のシステムと外部プログラムを接続する仕組みのこと。マーケットメーカーや機関投資家はこれを使って自動売買を行っており、APIが停止すると市場の流動性が急激に失われる。バイナンス以外の取引所でも取引量の急増による遅延や一時的なアクセス障害が発生したが、バイナンスほど深刻かつ広範な影響は見られなかった。
通常であれば、市場の急変動時にはマーケットメーカーが買い注文や売り注文を出して価格を安定させるが、システム障害によりこの機能が完全に停止してしまった。
マーケットメーカーとは、常に買い注文と売り注文の両方を市場に提示し続けることで、市場および取引の流動性を提供する業者のこと。彼らがいることで投資家はいつでもスムーブに売買できるが、マーケットメーカーが機能しなくなると取引が成立しにくくなり、価格変動が激しくなるリスクが高まる。
さらに事態を悪化させたのが、ステーブルコインと担保資産のデペグ(価格固定からの乖離)現象だ。例えばUSDe(イールド型ステーブルコイン)は本来1ドルに固定されているはずが、約0.65ドルまで暴落。担保価値の急落がレバレッジ取引の追加担保要求を引き起こし、先物市場におけるレバレッジ取引のロスカット(強制清算)の連鎖反応を巻き込みながら加速したものと見られる。
マーケットメーカーが流動性を提供できなくなり、トレーダーはポジションを閉じることができない状態に陥った。この混乱は他の取引所にも波及し、市場全体で約2.6兆円相当の強制決済が発生した。
パル氏はこの事態をリーマンショック後の株式市場フラッシュクラッシュに例え、「一部の取引所や自社マーケットメーカーを持つ業者が、価格暴落を食い止めるため、巨額のポジションを吸収せざるを得なかった」と分析。誰かが市場を支える役割を担わなければ、さらなる暴落が起きていた可能性があると指摘している。
数百億ドルのポジション解消が現在の市場圧迫要因に
パル氏によれば、暴落時に緊急的に引き受けられた数百億ドル規模のポジションは、現在も段階的に解消されている最中だという。株式市場のプログラム取引と同様、一度に処理すると市場への影響が大きすぎるため、毎日少しずつ清算することで影響を分散させているとの見方を示した。
特に年末は監査や流動性制約があり、リスク削減を急ぐ必要があることから、12月中の解消圧力が強まっている。パル氏は「現在の市場流動性は低く、この解消作業が価格に大きな影響を与えている」と説明。一部で囁かれる市場操作説については、「操作があったとすれば、マーケットメーカーが機能しなかった時に価格を支えた行為こそがそれに当たる」と反論している。
これらの影響に伴い、大暴落以降の仮想通貨相場は、マーケットメーカー離れの影響で流動性が枯渇し始めており、急激な価格変動が起きやすい状況にあるとの見方が有力だ。
また、年末年始に向けたポジション調整のほか、税金確定のための利益確定売りも下落圧力に拍車をかけているとみられる。市場関係者の間では、流動性の低下により急激な上下動を繰り返す“シンプソンズチャート”と呼ばれる不安定な値動きが頻発していると指摘されている。
市場の信頼性めぐり議論、規制当局も調査開始
バイナンスは、障害の原因を「市場のボラティリティと技術的不具合」と認め、被害者への補償として約390億円を支払った。また10月14日からオラクル(価格情報源)の改善を発表している。
一方、一部のアナリストやトレーダーからは、バイナンスが意図的に流動性を引き抜いたとの疑惑も浮上している。特にバイナンスの担保システムの脆弱性が事前に知られていたにもかかわらず放置されていた点や、大口投資家が事件直前に巨額のショートポジションを構築していた点が問題視されている。
米規制当局も調査を開始しており、業界全体で透明性向上を求める声が高まっている。パル氏は「この混乱もやがて過ぎ去る」と楽観的な見方を示しているが、いずれにせよセンチメント(市場心理)を大きく毀損しており、チャートのトレンドも崩れてることから、市場の回復には時間を要するとの見方が支配的だ。
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