- ブロックチェーンの可能性
- 価格の乱高下を繰り返すビットコインですが、その価格が地に落ちたとしても、根本にあるブロックチェーン技術が大きな変革の可能性を秘めていることには変わりありません。
- 身分証明
- ブロックチェーンの一つの応用例として、ブロックチェーン技術を基盤とした身分証明が挙げられます。この技術によって、第三者機関を介さず自由に身分証明を提示できるようになるかもしれません。
- ブロックチェーンの可能性と落とし穴
- ブロックチェーンはインターネットの台頭期と重なる部分があり、多くの可能性と同時にたくさんの落とし穴も点在しています。
ビットコインを始め、ライトコイン、イーサリアム、リップルやその他の仮想通貨の価格はここ数ヶ月で乱高下を繰り返し、アジア諸国の政府が介入して記録的な下落が起きた1月中旬までに1000%以上もの上昇を記録しています。
「仮想通貨」への投資により短期的に富豪になれるという可能性が、著名なアーティストやハリウッド俳優を始め、ウォール街や一般投資家までを巻き込んだ幅広い人々を熱狂させています。
多くの専門家が現状の仮想通貨市場は典型的なバブルの最中にあると主張する一方、その根本には革新的な可能性を秘めた技術が存在しています。
その未知のブレイクスルーである「ブロックチェーン技術」は、人々のオンライン決済方式から、汚職への対応、政府と国民の関係まで全てを変えてしまうかもしれません。
もし明日にビットコイン価格が底まで堕落しても、ブロックチェーン技術は変わらず技術進展が進み、さまざまな切り口で世界を再構築していくことになるでしょう。
Scientific American 特集記事のシニア編集者であるJen Schwartz氏(以下、Schwartz氏)は、ブロックチェーンは技術であり、ビットコインはその技術の一つの応用例に過ぎないと語っています。
データのフレームワーク
端的に言うと、ブロックチェーンはデータの構成を担うフレームワークです。
そのルーツは未だ謎に包まれており、”Satoshi Nakamoto”(以下、Nakamoto氏)と称するブロックチェーンの開発者は中央集権でない通貨を発行するためにブロックチェーン技術を考案しました。
またNakamoto氏はブロックチェーン技術開発の過程で、記録改ざんが不可能かつ安全にデータを送る方法を編み出したのです。
お金の未来という特集を編集したSchwartz氏は、ブロックチェーン技術の可能性について以下のように言及しました。
ブロックチェーン技術はビットコイン以外にもデータの追跡や取引に使用することができます。
仲介企業が正当性を保証したり、情報を安全に保存したりするのではなく、数学や機械がその役割を担うという新しい発想です。
ブロックチェーン技術の連続性という概念を理解するには、ビットコインがどのように取引されているかが鍵になります。
ある人がビットコインで品物を購入する場合や、誰かにビットコインそのものを送金する場合、この取引の承認や保全は複数のコンピュータのネットワーク上で行われます。
複雑で数学的な問題をネットワーク上のコンピュータが競って解き、正しい解を導き出されたコンピュータによって、いくつかの取引がまとめられ過去の記録に紐づけられた”ブロック”が形成されます。
これがブロックチェーンの全容です。
すなわち、ブロックチェーンはその通貨を使用した全ての取引を追跡することができるデジタル台帳と言えるでしょう。
記録の保全
台帳はネットワークで結ばれる複数のコンピュータ上に存在していることから、分散型台帳ともよばれています。
例えば資金を銀行口座間で移動させたい場合、従来の金品のように金庫から金庫までを武装した車で資金を移動する訳ではありません。
代わりに、口座間の資金移動が誰からも閲覧できる台帳に記録され、衆人環視のもと管理が行われています。
ブロックチェーンは全ての取引が連続して接続されているため、従来のデジタル通貨でネックとなっていた二重支払い問題を解決します。
さらに、透明性を追求することで既存のデータベースという概念を塗り替える可能性も持ち合わせているのです。
2017年に世界経済フォーラムのブロックチェーン報告書では、そのポテンシャルについて以下のような記述がなされました。
ブロックチェーン技術は賄賂や汚職への対応も含め、透明性や保全性においてより幅広く力を発揮するでしょう。
さらに、サプライチェーンや中央銀行を含む政府の機能へも変化を与えるかも知れません。
ブロックチェーン技術は安全面にも優れており、例えシステムの一部分の改ざんでも、そのチェーン上の全ての部分に手を加えなければなりません。
とSchwartz氏は述べています。
ビットコインのブロックチェーンは非中央集権化されているため、政府機関を懐疑的に見ている人々にとって魅力的なのです。
取引を記録する台帳の情報は、銀行のサーバーやFacebookやGoogleのクラウドサーバーのように一つの場所に格納されるのではなく、複数のコンピュータネットワーク上に格納されています。
これは、大きな権力を持った一つの組織の独占的な取引コントロールを阻止することに繋がると支持者は言及しています。
さらに、この技術が様々なことに応用可能であることも同様に重要であると言えるのです。
身分証明
文化人類学者でLeaning Machineというブロックチェーン企業に務めているNatalie Smolenski氏は、この技術の有力な支持者の一人であり、ブロックチェーン技術はユーザーベースでデジタル社会を前進させる可能性を秘めたものとして捉えています。
このビジョンは、GoogleやFacebook、Amazonが三位一体で独占している現在のインターネットとは、対称的にあるものなのです。
さらに、この技術にはより狭義的かつ実用的な応用例も出てきています。
例えば、ブロックチェーンを基盤とした身分証明は、政府機関や教育機関といった第三者機関に頼ることなく、独自で身分を証明することが可能になるとSmolenski氏は言及しました。
さらに彼女は
現在の身分証明では、第三者のプラットフォーム提供者を頼ることしかできません。
例えばGoogleやFacebookでアカウントを開設した場合、彼らはそのデジタル身分証明の所有者となるのです。
彼らはその情報を変更、消去したり、プライベートな情報を閲覧することができます。
よって、ブロックチェーンによって管理された自身のデジタル身分証明を所有し、第三者機関に縛られずにデジタル身分証明を提示できる権利を獲得することは、非常に大きな意味を持ちます。
と語っています。
ブロックチェーンの記録を保全するという特性は、世界中に生産や運送を行う物流など、追跡が不可欠な分野では非常に有益となり得ます。
さらに”フェアトレード”や”シングルオリジン”と称された商品の真偽を問う際も活用できます。
イギリスのスタートアップであるProvenanceでは、ブロックチェーンを使用して原料の産地及び、辿ってきたルートを追跡することを試みております。
また、非営利団体のBitGiveは慈善的な取り組みにブロックチェーンを活用し、寄付金の使用用途を完全に追跡することを試みております。
この技術では、特定のチャリティープロジェクトで寄付金を募り、そのプロジェクトの結果をビットコインで追跡します。
しかし、未だブロックチェーン技術にたくさんの制約があるのも事実です。
ビットコインのブロックチェーンは非中央集権化されていますが、一方で中央集権化寄りのブロックチェーンを構築することも可能です。
これは、権威を参加者に還元したいというブロックチェーン技術の理念に反しますが、大手金融機関の中には取引を検証するためにブロックチェーンを中央集権寄りの方法で使用することを検討している機関もあります。
さらに、ブロックチェーン自体は安全である一方、それに接続された仮想通貨を保管しておく”ウォレット”のようなアプリケーションが安全であるかどうかはまた別問題なのです。
過去にも、ビットコインを始めとした多くの仮想通貨がハッカーに盗まれてしまう事件も起きています。
Schwartz氏は、ブロックチェーン技術をインターネットが台頭してきた時代と照らし合わせ、無限の可能性と共に多くの落とし穴が存在していると表現しています。
ブロックチェーン技術が全て良い技術であるというのは間違いです。
全てのブロックチェーン及び仮想通貨はただのコードに過ぎず、そのコードの作成者や、コードの修正、開発が継続的に続いているかなどを精査する必要があります。
と彼女は語りました。
How bitcoin could change the world — even if it crashes
Jan 22, 2018 by Irina Ivanova
参考記事はこちらから