はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

イギリスの仮想通貨事情、規制面で抱える課題と関連ビジネス|Freewallet寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事では、イギリスの仮想通貨事情について、仮想通貨規制と規制に関する近年の進展、仮想通貨はイギリスで人気があるのか、どのような仮想通貨ビジネスが存在するのか、今後の展望も合わせて説明します。

1. イギリスの仮想通貨規制

イギリスはフィンテック分野をリードする国のひとつで、1600社のフィンテック企業が存在し、年間66億ポンド(2020年3月現在約8646億円)の収益を生み出しています。フィンテック企業の成長は著しく、サンフランシスコからフィンテックユニコーンの都市の座を奪うとも言われています。このようにイギリスはフィンテック大国である一方、仮想通貨に対してそこまで好意的ではありません。

幸いイギリスは仮想通貨を規制しているわけではないものの、ビットコインやイーサリアム、リップルといった電子通貨についての法律があるわけではありません。イギリスは仮想通貨について積極的な対策を講じておらず、ほとんどの場面で様子見を決め込んでいるのです。

2014年、イングランド銀行は、イギリスの金融システムで電子通貨の採用は限定的だとして、電子通貨を通貨に分類しないことを決定しました。2013年から2020年3月までイングランド銀行の総裁を務めたMark Carneyは、2018年に「仮想通貨の市場はイギリスの金融市場の安定に影響を与えたり、通貨システムを危険にさらしたりするほど大きいものには見えない」と語りました。この数年で電子通貨のユースケースは大幅に増加しましたが、イングランド銀行による仮想通貨の定義は当時のままです。

2. 仮想通貨規制に関する近年の進展

イギリスの仮想通貨分野での数少ない取り組みのひとつとして、Cryptoassets Taskforceの創設があります。Cryptoassets Taskforceはイングランド銀行、FCA(Financial Conduct Authority、金融行動監視機構)、大蔵省の上級代表者からなるワーキンググループです。Cryptoassets Taskforceは仮想通貨と関連技術の研究を進め、リスクと潜在的な利益を評価し、イギリスの規制の枠内で仮想通貨をどのように扱うか検討するとしていますが、これまでに重要な知見が発表されたことはありません。

もうひとつ、FCAが第4次規制サンンドボックスに29社(うち11社はブロックチェーンスタートアップ)の参加を許可したことは、イギリスの仮想通貨規制に関するひとつの進展と言えます。規制サンドボックスの参加企業は、イギリスの市場規制環境下でプロジェクトをテストできるようになるからです。

2019年、FCAは「Guidance on Cryptoassets」(仮想通貨資産に関するガイダンス)という資料を公開しました。この資料でFCAは、仮想通貨規制と関連事項について企業が考慮しなければならないさまざまな要素を説明しています。

FCAはいくつかの重要な事柄を定義し、扱いを明確にしました。たとえばトークンついては以下の通りです:

  • ビットコインやイーサリアムのような仮想通貨は交換トークンに分類され、規制されることはないが、アンチマネーロンダリング対策の対象になる。
  • セキュリティートークンは特定投資に分類され、FCAが管轄することになる。
  • ユーティリティートークンは、電子マネーと定義される場合に限ってFCAの規制の対象とならない。
  • ステーブルコインはFCAの管理下に置かれる電子マネーと定義される可能性がある。

最近の規制に関するものではありませんが、仮想通貨に対する課税についてもふれておきましょう。英国歳入関税庁がEUの中でもっとも早い2014年に明確なガイダンスを発表しています。概要は以下の通りです:

  • マイニング収入は付加価値税(VAT)の対象ではない。
  • 仮想通貨の保有および売却による損益は、その他商品または通貨から発生する損益として扱われることになる。
  • 投機ではなく個人的な理由で購入し、保管した電子通貨は課税されない。
  • サービス提供者や店舗は、イギリスなどでサービスや商品を仮想通貨で販売した場合、付加価値税を支払わなければならない。

これまでにイギリス政府が禁止したのは、デリバティブやビットコイン先物のような仮想通貨に関する投資商品のみです。これらの商品が禁止される主な理由は、個人投資家を仮想通貨市場の高いボラティリティから保護するためとされています。

イギリスでは、2020年中に仮想通貨投資に関する最終的な投資のルールが策定される予定です。

3. 仮想通貨はイギリスで人気があるのか?

イギリスはビットコインの取引が盛んで流動性のある市場とされ、CryptoCompareによると世界で11番目に活発な市場です。

ただ、他の国と同様に、仮想通貨について知っている人は多くありません。FCAの調査では、「仮想通貨」の正しい定義を知っていたのは調査対象の27%にすぎませんでした。そのほとんどは20歳から44歳までの男性で、仮想通貨についてオンラインニュースや従来のメディアで知ったといいます。

イギリスで仮想通貨を購入する人のほとんどはインターネットで取引所を利用し、自己資金で仮想通貨を購入します。お金を借りて仮想通貨を購入することはありません。FCAによると、仮想通貨の購入理由として最も多いのは、ギャンブルとして(31%)、投資ポートフォリオの一部として(30%)です。簡単にお金を手に入れるために仮想通貨を買うという人たちもいます。また、4%はまわりに取り残されることを恐れて仮想通貨を購入しました。友人や知人、同僚の「仮想通貨で儲けた」という話を聞いて、購入する人も少なくありません。逆に、購入をためらう理由として、仮想通貨のリスクの高さと、仮想通貨に対する知識の欠如があります。

イギリスで仮想通貨の世界に入ったばかりの人に人気のある仮想通貨はビットコイン、イーサリアム、ライトコインで、その歴史と過去利益を生んできたことから「ある種信頼できる仮想通貨」と考えられています。対英ポンドでの取引高からもっとも人気のある仮想通貨をみてみると、ビットコインの取引高がもっとも多く、イーサリアム、ライトコインの順に続きます。4番目はXRP、5番目はイーサリアムクラシックです。

ここで興味深い事実をひとつ紹介しましょう。仮想通貨にはまっている人の多くは普通の安定した仕事についておらず、フリーランスやパートタイムとして働くことを好みます。

4. イギリスの仮想通貨ビジネス

イギリスで仮想通貨に関するビジネスが広がりをみせているとは言えませんが、いくつか有名なものがあります。ここではその代表例を紹介します。

BC Bitcoin

https://www.bcbitcoin.co.uk/
BC Bitcoinは2017年創業のイギリスに拠点を置く仮想通貨のブローカーです。BC Bitcoinを利用すると、ビットコイン、イーサリアム、XRPなど100を超える電子通貨を購入・取引できます。預け入れと引き出しは英ポンド、ユーロ、米ドルでできます。BC Bitcoinは他の仮想通貨ブローカーと比べて、連絡をとりやすく、対応がよいと言われています。

CEX

https://cex.io/
CEX.IOはクラウドマイニングプロバイダ、そしてGhash.ioプールのオーナーとして知られるようになりました。2014年にGhash.ioプールはビットコインのマイニングパワーの42%を占めましたが、2015年にはビットコインの価格が低迷し、CEX.IOはクラウドマイニングサービスの停止を発表しました。2016年10月、Ghash.ioは閉鎖されました。現在CEX.IOは仮想通貨取引所としてサービスを続けていて、ビットコイン、イーサリアム、XRP、Stellar Lumensなどを取引できます。

CloudHashing

CloudHashingは世界でもっとも大きいビットコイン企業のひとつで、ロンドンに本社があります。元JPモルガンのソフトウェアエンジニアでHSBCの受託開発者でもあるEmmanuel Abiodunが2013年に創業しました。同社は2014年に8ヶ月間で35,000ビットコイン(2100万ドル相当)を採掘したとしましたが、2016年には廃業しました。

Coinfloor

https://coinfloor.co.uk/
Coinfloorはイギリスの仮想通貨ファンの間で人気のある取引所のひとつで、最初に英国歳入関税庁に外貨取引所として登録されました。取引所が支援する形でビットコインのP2PマーケットプレイスをローンチしたのもCoinfloorが最初です。また、手数料の計算に洗練されたアルゴリズムにエンジンを導入した最初の取引所としても知られています。

5.イギリスの仮想通貨業界の今後

イギリスの仮想通貨業界の今後の見通しは曖昧です。

個人投資家については安全といえそうですが、当局のアクションがないため、ビジネスは苦しむことが予想されます。法律を作る議員たちの態度はどっちつかずで、仮想通貨の規制環境の整備は遅々としています。業界関係者は、仮想通貨に特化した規制を作り、仮想通貨企業がどのようにサービスを運営するべきか明確に定めるべきだと主張しています。規制環境が整わない限り、イギリスは仮想通貨について他の国々に遅れをとるでしょう。

このような状況はすでに既存のイギリスの企業に影響を与えています。たとえば、仮想通貨取引所は、銀行口座を開設するのに苦労しています。CryptoUKによると、仮想通貨企業の73%がイギリス国内の銀行とのいざこざから国外で銀行口座を開設しました。これら取引所の半数以上はイギリスの銀行で口座の開設を拒否され、中には理由について何の説明もなかったケースもありました。

FCAが2019年7月にGuidance on Cryptoassetsを公開した時には、仮想通貨業界にポジティブなムードが漂いましたが、これは小さな一歩でしかありませんでした。イギリスの仮想通貨に関する環境は依然混乱していて、仮想通貨関連ビジネスにとっては頼りないものなのです。

イギリスの仮想通貨業界が成功するかどうかは、完全にイギリスの当局によります。当局は仮想通貨ビジネスに対して明確な条件を提示する必要があります。仮想通貨の需要は大きいので、これは単に時間の問題と見ることもできます。問題は「いつ議員たちが仮想通貨規制の整備に積極的に取り組み始めるか」です。

原文:https://cryptodaily.co.uk/2019/09/cryptocurrency-in-the-uk-blockchain-regulation-crypto-geography

寄稿者

Freewallet
ウェブ、android、iOS対応
Freewalletとは取引所内蔵の仮想通貨ウォレットで、ウェブ、Android、iOSで利用できます。ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、リップルをはじめ、30以上の仮想通貨をひとつのアプリで保存できます。
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08/18 月曜日
13:30
加藤財務大臣・金融担当大臣の「基調講演」が決定|WebX2025
加藤財務大臣・金融担当大臣が登壇決定 国内最大手のWeb3メディア「CoinPost」の運営会社、株式会社CoinPost(本社:東京千代田区、代表取締役CEO:各務貴仁)が企…
12:28
イーサリアム RWAトークン化のリスクとは?有識者が指摘する課題と対策
ニューヨーク大学教授が、仮想通貨イーサリアムにおける資産トークン化が普及する上での課題を指摘した。大規模採用前に解決すべき問題を提示している。
12:11
メタプラネット、137億円でビットコインを追加購入 
メタプラネットは137億円で仮想通貨ビットコイン 775BTCを追加購入し、累計18,888BTCを保有。通算取得額は2,840億円超に到達し、戦略的なBTC投資を継続している。
11:59
ビットコインETF好調も個人投資家は利益確定売り先行、ジャクソンホール会議控える中
仮想通貨市場ではビットコインETFやイーサリアムETFに過去最高水準の資金流入が続く中、BTC価格は調整中。ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長の利下げ示唆に期待が高まる一方、機関投資家の買いと個人の利益確定売りが交錯している。
09:56
タイ政府、外国人観光客に仮想通貨決済システム「TouristDigiPay」を提供開始
タイ政府が外国人観光客向けに仮想通貨をバーツに交換して決済できる新システムを導入する。マネロン対策などで安全性を確保しつつ、観光業活性化を目指す。
08/17 日曜日
19:37
金融庁、日本円建てステーブルコイン「JPYC」承認へ=日本経済新聞
金融庁が国内初の円建てステーブルコイン「JPYC」を承認へ。今秋にも発行開始予定で、3年間で1兆円分の発行を目標とする。JPYC代表の岡部氏は「ステーブルコインは巨大な国債消化装置」とコメントし、日本国債市場への影響を予測。国際送金やDeFi活用に期待が集まる
14:00
今週の主要材料まとめ、ビットコイン6年以内1000万ドル到達の可能性やリップル訴訟終了発表など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
12:00
ステーキング 主要取引所の仮想通貨別・年率報酬を徹底比較
【2025年7月最新】国内主要取引所のステーキング対応銘柄と年率を一覧比較。イーサリアムやソラナなど人気コインの高利率サービスを紹介し、各取引所のメリット・デメリットや税金のポイントも解説します。
11:30
ビットコイン1750万円台で方向感欠く、ジャクソンホール会議が転換点に|bitbankアナリスト寄稿
ビットコイン(BTC)対円相場が1750万円周辺で方向感を欠く展開。米CPI下振れで利下げ期待が高まるも、PPI上振れで大幅利下げ観測が後退。来週のジャクソンホール会議とパウエルFRB議長発言が相場の鍵を握る。テクニカルサポートも豊富な現在の市況を詳しく分析。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|メタプラネットの大幅増益に高い関心
今週は、メタプラネットの決算発表、バリュークリエーションのビットコイン全売却、スコット・ベッセント米財務長官のビットコイン準備金に関する投稿のニュースが最も関心を集めた。
11:00
『守りの金(ゴールド) vs 攻めのビットコイン』資産配分における役割の違いを解説
相場暴落時に注目の集まりやすい金(ゴールド)とビットコインの比較を初心者にもわかるよう解説、インフレ耐性や政府の影響回避といった類似性と、安定性や価格変動要因の違いを比較、投資戦略や資産配分のポイントも提示する。
08/16 土曜日
13:45
トランプ一族支援のアメリカンビットコイン、日本・香港企業買収を検討
ドナルドJrとエリック・トランプ氏が支援する米仮想通貨マイニング企業アメリカンビットコインが、日本と香港の上場企業買収を検討中。マイケル・セイラー氏の戦略に倣い企業財務でビットコイントレジャリー企業を目指す。
13:18
仮想通貨取引所ジェミナイがIPO届出書公開 リップル社からの信用枠も設定
米仮想通貨取引所ジェミナイがナスダックへの上場申請書類を公開した。2025年上半期は純損失が拡大も、リップル社から信用枠も確保している。
11:20
ニューヨーク州議員、仮想通貨取引に0.2%課税法案を提出
ニューヨーク州議会のフィル・ステック議員が仮想通貨取引に0.2%の物品税を課す法案を提出。ビットコインやNFT取引が対象で年間1億5,800万ドルの税収を見込む。
10:15
米司法省、ランサムウェア攻撃容疑者から約4億円の仮想通貨を押収
米司法省がランサムウェア攻撃容疑者から280万ドル超の仮想通貨を押収した。トランプ大統領のビットコイン・仮想通貨準備金政策により、政府が備蓄資産に加える可能性もある。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧