緊急事態宣言への準備が加速
安倍晋三首相は緊急事態宣言へ向けて、大きく舵を切ったようだ。 本日中にも、諮問委員会に諮り、宣言を出す方針を表明、早ければ明日7日にも宣言する見通しだ。
緊急事態宣言では都道府県を単位とする区域や実施期間が示されるが、今回対象地域として候補にあがっているのは、首都圏及び大阪府や兵庫県などとのことだ。
世界各地で新型コロナウィルスの感染拡大による影響が深刻化する中、日本政府の対応が注目を集めていた。 同宣言は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づくもの。ただし、同措置法の下では、世界に先駆けて都市封鎖を行った武漢市をはじめ、諸外国で行われているような強制力をもつ都市封鎖(ロックダウン)は行えない。
公共交通機関の停止や道路封鎖はもとより、外出禁止を強制することもできない。あくまで、外出自粛の「要請」にとどまるが、国が緊急事態宣言を発することで、対象地域となった自治体の知事権限が強化されることになる。
緊急事態宣言後は、都道府県知事が、外出自粛要請に加え、学校を始め人が多く集まる商業施設の使用制限や停止を要請・指示できる。 さらに、感染者の急増による医療施設の増設が必要となった場合、所有者の同意がなくとも知事が土地や建物を使用することが可能になる。医薬品や食料品に関しても、知事は事業者に対し売却を要請、応じない場合は収容することもできるようになるなど、その権限が大幅に拡大される。
コロナウイルスに関する企業調査
世界規模で新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、経済的打撃へ対する不安も高まっている。
国内最大手の信用調査会社、帝国データバンクのコロナウイルス感染症に関する企業調査によると、回答を寄せた企業の8割以上がが自社の業績に「マイナスの影響がある」と見込んでいるという。
1万1330社が回答した今回の調査は、2月に続いて2回目。コロナウイルスの悪影響を実感している企業は前回よりも16.9ポイント増え、この1ヶ月で影響がさらに深刻になっていることを示す結果となった。
マイナスの影響があると答えた企業のうち、半数近い46.5%は既に影響を受けていると回答している。一方、「影響はない」(9.0%)や「プラスの影響がある」(2.1%)と見込む企業もあった。
最も影響を実感しているのは
「既にマイナスの影響がある」と回答したのは、「娯楽サービス」が84.2%でトップ。次いで「旅館・ホテル」(83.9%)、「飲食店」(83.6%)という結果となった。 また「広告関連」(81.7%)も上位に入っている。
業界別にマイナスの影響を見込む企業を見ると、最も高かったのは84.5%の「運輸・倉庫」業。
インバウンドの観光客の激減や企業の出張取り止めなどの影響で、新幹線の乗車率は前年比5割を切り、さらに東京都知事の外出自粛要請により東京駅や新宿駅、上野駅などターミナル駅の利用者数も8割前後、減少しているという。
2位と3位となったのは「小売」(84.2%)と「卸売」業界(83.8%)で、業種別にみると「家具類小売」(100.0%)、「飲食店」(98.2%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(97.0%)と高い数字となった。 また、既に影響を受けていると回答した、「旅館・ホテル」(96.8%、サービス業)の先行きの見通しも深刻なものとなっている。
上記の業界は、感染拡大への危機意識が高まるにつれ、外出を伴う個人消費の抑制により、大きな打撃を受けている顕著な例だと言えるだろう。 東京商工リサーチによると、2月以降の新型コロナ関連倒産では、最多となる8件が旅館や飲食業、旅行業などのサービス業だった。
プラスの影響を見込む企業は
一方、スーパーマーケットなどの「各種商品小売」は、20.4%、「飲食料品小売」が11.0%、「医薬品・日用雑貨品小売」が8.7%と、「プラスの影響」を見込んでいることがわかった。 これらの業種は、外出自粛などによる消費者の「巣ごもり需要」の増加とも関連しているが、近く発令されると言われている政府の緊急事態宣言を受けても、生活必需品として需要が減少すること考えられない。
しかし、経済全般で見るとプラスの影響は非常に限定的だ。感染拡大による需要の落ち込みは、幅広い業種で実感されており、企業経営が急激に悪化していることは明らかだ。
政府による緊急事態宣言は、国民や企業に対し、外出自粛や企業活動の一時停止など生活に大きな影響を与えるものだが、同時に、停滞する経済活動への補償も盛り込んだものでなくてはならないだろう。
政府は4日、緊急経済対策として「危機対応融資」枠を5兆円に拡大し、企業の経営支援を行うと報道されている。
出典:帝国データバンク
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