ビットコインの半減期迫る
3回目となるビットコインの半減期が11日後に迫る中、30日には一時100万円の大台に乗せるなど、ビットコイン価格は急激な回復をみせている。また、この価格急騰に先立ち、ビットコインネットワークのハッシュレートは、難易度マイナス調整が実行された3月26日を底値に急反発し、現在でも110TH/s超で推移している。
ビットコイン等、仮想通貨のマイニング速度を表すハッシュレートは、参加するマイナーの数にも左右されるため、ハッシュレートの高さが、セキュリティの強化とともに通貨への信頼性を示す指標の一つとも考えられ、一般的には価格との相関も指摘されている。(全期間を通して0.6〜0.7の正の相関係数が示されている)
今回の半減期は、パンデミックとなった新型コロナウィルスの世界経済へ深刻な影響もあり、これまでの半減期と単純には比較できない要素も多いが、市場のセンチメントは前向きなようだ。
ハッシュレートへの影響
仮想通貨のポートフォリオ管理アプリを提供するBlockfolio社は、4月27日、半減期後のハッシュレートに関する意見調査を実施し、8000人のユーザーから回答を得た。その結果、37%が半減期の1ヶ月後、ハッシュレートが上昇すると回答し、29%は低下、17%は変わらないとの考えを示した。つまり、ユーザーの過半数が、半減期のハッシュレートへの影響を問題視していないことが明らかになった。
半減期で最も大きな影響を受けるのが、ハッシュレートを支えるマイナーだ。今回の半減期では、マイナーへのブロック報酬が12.5BTCから6.25BTCとなるため、マイナーの採算性が危惧されているが、昨今のハッシュレートの回復は、マイニング業界で経営体制の整備が進んでいることの現れだと見る向きもある。
大手マイニングプールPoolinの幹部であるAlejandro De La Torre氏は、新たなマイナーの参入や最新マイニングマシーンの導入が、ハッシュレート上昇の一つの要因だとみている。同氏は、半減期後、ハッシュレートは短期的には低下する可能性が高いが、2016年の半減期には存在しなかった、マイニング事業に特化した資金提供サービスや便利な運営システムや管理ツールが開発されているため、特に大規模なマイニング事業者には有利な環境になっているという。
マイニング機器では、製造大手のビットメインも最新機器S17+とT17+を販売、電力消費効率を高めることで競争力を高めようとするマイナーの需要に応えている。 ちなみに同社の「Antminer S19」の初回販売では、発売開始当日に完売したという。
ただし、このような効率化による競争の激化は、個人や小規模なマイナーにとっては、不利になり撤退を余儀なくされる可能性もある。
ビットコインの価格上昇に楽観的
また、クラウドマイニングを運営する大手企業Genesis Miningが3月に行った意識調査でも、回答者の半数以上が、半減期後にビットコイン価格が上昇すると楽観的な予測をしている。
・半減期から1〜3ヶ月の場合 価格上昇:50.2%、下落:31.8%、大きな変化なし:13.7%
・半減期から4~6ヶ月の場合 価格上昇:51.1%、下落:28.8%、大きな変化なし:14.2%
なお、この調査の対象となったビットコイン所有者750人の57%が実際にマイニングを行なっているか、行なった経験がある、もしくはクラウドマイニング契約を結んでいるという、マイニングに関連のあるグループ。そのため、一般の調査よりはマイナーのセンチメントが反映されていると推測できる。
同社のマイニング部門責任者のPhilip Salter氏は、半減期後に価格が上昇する場合は、ハッシュレートは安定し、価格が上昇しない場合は、ハッシュレートが30%低下するだろうと予想している。しかし、「撤退を余儀なくされるマイナーが使用しているマイニング機器は旧型のBitmainS9であり、最新機器は同じ電力消費量で3倍のハッシュレートを達成することができる」ため、その影響は限定的であり、ハッシュレートは比較的早く回復すると述べている。