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仮想通貨犯罪の被害補償基金、欧州で実現せず

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

EUが被害者補償基金の設立に反対

欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が、暗号資産(仮想通貨)犯罪の被害者に対する補償基金の創設を却下したことがわかった。

「暗号通貨詐欺補償基金の創設を求める嘆願書」は、今年初めに、被害者グループの弁護士 Jonathan Levy氏により、欧州議会の請願委員会に提出された。嘆願書では、EU圏内の仮想通貨取引に対し、1ユーロあたり0.0001セントという微細な取引手数料を徴収し、基金設立(※)の資金とする提案がなされた。

※将来的な仮想通貨犯罪に対応するための基金を設けて、被害者への補償に充てる取り組み

しかし、欧州委員会からの回答では、9月24日に発表された、EU全域に及ぶ包括的な仮想通貨規制案の内容に言及するとともに、詐欺等の犯罪行為は刑法の範疇であり、それぞれの国の法執行機関や「既存のルート」を通じて追求されるべきだとした。

さらに、特定の補償制度は国レベルで存在すること、「暴力的で意図的な犯罪」には他のEU規則が存在することなどを挙げ、管轄の各国当局の判断に任せるべきだとの理由で、嘆願を却下した。

弁護士の反論

欧州委員会は、EUは「金融犯罪被害者のための補償基金を設立する力量に欠けている」と主張しているが、Levy氏は、欧州委員会が示した嘆願却下の理由は「空虚」なものであるとして、その判断に反論する書簡を送った。

内容は以下の通り:

  • 欧州委員会は、世界でも有数の規模と能力を持った官僚機構であり、毎年何十億ユーロもの助成金や貸付金を管理しているのにもかかわらず、自己補充型の単純な補償基金を管理することができないと主張
  • ブロックチェーン・イノベーション賞や投資に1億ユーロ以上を拠出していることから、暗号資産を監視する能力はあると考えられる
  • EUは、ほとんどの仮想通貨関連犯罪(詐欺的ICOや取引所のハッキングなど)はEU外で発生していると根拠もなく主張するが、これは憶測に過ぎない

OneCoin 詐欺との関連

嘆願書を提出した被害者グループは、これまで、それぞれ国内での法的手続きや、刑事告訴、クレジットカードや銀行振り込みの取り消し、ブロックチェーンの追跡など、あらゆる方法で損失の回収を試みたが、仮想通貨取引が複数の管轄区域にまたがる性質を持っているため、成功していないという。

そのため、Levy氏は、断片化されたEUの執行体制に問題があると主張しており、被害者グループは、欧州議会に対し、EUの全管轄区域に及ぶ被害者救済スキームの導入を求めている。

今月初めには、ブルガリアで立ち上げられた大規模な出口詐欺プロジェクト、「OneCoin」の被害者らも、嘆願書の検討を求めている被害者グループに加わったと報じられた。

Levy氏は、欧州委員会が委任したccTLD .EU(国別コードのトップレベルドメイン)が、依然として、40億ユーロ超を詐取したOneCoin詐欺のホストとなっていると指摘。これまで欧州委員会に何度も警告を発しているにもかかわらず、同社は「One-Coin.eu」などのドメインを使用して活動を継続しているため、間接的であれ、欧州委員会が、この仮想通貨犯罪のホストになっていると訴えた。

Levy氏は、さらに一歩踏み込んで、仮想通貨メディア「Forkast」に次のような意見を述べている。

「欧州委員会は、明らかに仮想通貨の被害者基金を管理する能力がある。しかし、なぜそれを望まないのかが問題だ」

「私は、EUの各加盟国を代表する委員会のメンバーに関係しているという答えを提案しよう。 一部のEU加盟国は、仮想通貨犯罪者の起訴において、ほとんど犯罪的に緩くなっている。特にバルト三国、マルタ、ブルガリアなどだ。」

技術的には問題がない

一方、10月20日には、欧州議会請願委員会に技術面からの専門家意見書が提出されている。

専門家は、提案された取引手数料の徴収は、技術的には、比較的簡単に実装できると主張。また、現在保険の対象外となっている暗号資産に対し、提案されている被害者補償基金は、詐欺等の被害者のために非常に必要とされる救済を提供するとした。そして、嘆願書の提案は「実行かつ監査可能」であると結論づけている。

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