仮想通貨市場からの需要の高まり
米大手半導体メーカーのNVIDIAは2月18日、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のマイニングに特化した新製品「仮想通貨マイニングプロセッサ(CMP)」のリリースを発表した。
NVIDIAの最高財務責任者Colette Kress氏は先月、JPモルガンが主催するテクノロジー関連投資会議で、仮想通貨市場からの需要が「重大な水準」に達した場合、CMPの製造を再開する可能性があると述べていた。
仮想通貨メディアThe Blockの報告によると、イーサリアムのマイナーは、先月1ヶ月で約8億ドル(845億円相当)の報酬を得たという。また、イーサリアムの価格は、過去最高値を更新して20万円の大台に乗っている。
関連:イーサリアム大台の20万円到達、高騰するコインチェック銘柄「IOST」の背景
仮想通貨マイニングプロセッサ
NVIDIAの発表によると、CMPはマイニングに最適化した性能と効率を追求した設計となっている。そのため、グラフィック処理は行わず、映像出力も備えていない。その結果、エアフローが改善され、1つのCPUでより多くのGPUを制御できるように設定されているという。
イーサリアムのハッシュレートに応じて、4種類の製品が用意されている。正規認定業者を通じて、第1四半期から第2四半期にかけて販売が開始される予定。
ゲーマーの需要に配慮
NVIDIAのGPUは汎用性があり、「気象シミュレーションや、遺伝子の配列決定、ディープラーニング、およびロボット工学」にまで使用されているという。マイニングも例外ではない。イーサリアムは、複数のグラフィックカードを搭載したマイニングリグを利用して、マイニングが可能なため、グラフィックカードは断続的な欠品が続いており、ゲーマーからは不満の声が上がっていた。
NvidiaのCMP発売は、元来ゲーム用に開発されたGPUの供給不足を緩和する狙いもあるようだ。最先端技術を導入したゲーミングプロセッサ「GeForce RTX 3060」の発売に伴い、Nvidiaは「ゲーマーが確実にGeForce GPUを入手できる」ようにするための対策を、CMPの発表と同時に明らかにした。
「RTX 3060のソフトウェアドライバは、イーサリアムのマイニングアルゴリズムの特定の属性を検出し、ハッシュレート(採掘速度)、つまり仮想通貨のマイニング効率を約50%制限するように設計されている。」
このような対応により、GeForce GPUはマイナーにとって魅力的な製品ではなくなると考えられる。
Nvidiaは、それぞれの顧客ニーズに合わせた製品を開発することで、GPUの供給問題を解決すると同時にマーケットシェアも維持できる。
コロナ禍による巣ごもり需要で、コンピュータゲーム市場も成長が続いており、米市場調査会社、NPDグループの推計によると、2020年のゲーム機器に対する消費者支出は62%増加したという。
また、仮想通貨業界の識者の多くが現在の強気相場は今後も続くと予測していることから、CMPの需要も継続するのではないだろうか。
なお、PoSのアルゴリズムを採用した次世代のイーサリアム2.0は昨年12月にローンチしたが、完全なネットワークの稼働までには約2年かかると推定されている。そのため、マイニングによって支えられたPoW基盤のETH1と並行してイーサリアムネットワークは維持される。
関連:イーサリアム2.0初のアップグレード案、ヴィタリック氏が詳細公開